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「週末、田舎に行く時間なんてない!」という人へ

週末田舎暮らしを楽しむ時間をつくる仕事のルール・暮らしのルール

馬場未織馬場未織

2017/10/12

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まず検討すべきふたつのこと


(c) JohnnY - Fotolia

二地域居住という暮らし方が、実際に実現できるかという現実的な話のなかで、よく出てくるのはお金のことです。

「二地域居住を始めるための初期コストを調達できるか」とか、「予算と見合う物件に巡り合えるか」、「ふたつの家での出費の凸凹をどう調節していくか」といった話です。

二地域居住のコストについては、以前、この連載でも触れましたが、二地域居住を始めようと考えたときには、それらは間違いなく、きちんと検討すべきことです。

ただ、検討すべき大事なことが、もうひとつあります。

それは、「時間のつくり方」です。

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“暮らしづくり”は、“時間づくり”

“暮らしづくり”は、“時間づくり”と言い換えることができると思います。

いくら潤沢にお金があったとしても、田舎に通う時間ができなければどうにもなりません。「いまの仕事をしている限り無理だ」「時間がない」と思う人もたくさんいるのではないでしょうか。

働き方改革もプレミアムフライデーも、「時間がない」という状況を変える号令というには、あまりにも希薄なものです。

また、よく体を壊したときに病院で「少し仕事を減らしましょう」などと言われますが、あの言葉にちょっと腹の立つときがありませんか? 笑。

だって、それはわかっていても、思うようには減らせなくて困っているのですから。

日々の意識を少し変えてみる

それでも、ある目的をもって「時間がつくりたい」と強く思ったとき、日々の意識を少し変えることで、時間を生み出せることもあります。たとえて言うならそれは、ブタの貯金箱に1日300円ずつ貯金するようなものです。ごそっとまとめて生み出せなくても、塵も積もれば山となる。

たとえば、「週末田舎暮らしがしたい」と本気で考えることがあった場合、平日の時間の使い方を見直してみてはどうでしょうか。

以下にあげるのは、わたしが仕事と暮らしのなかで、時間をつくるために実際に意識しているルールです。

スケジュール管理のプロ!といったことではまったくないのですが、少なくともこの10年は週末に南房総に行く時間を確保することを意識してきました。また、3人の子どもを育てながら仕事をするという立場上、常に時間に余裕を持って臨まないと信用を失う局面があるため、時間づくりは常に意識してきました。もし、ご参考になれば幸いです。

<仕事のルール1>仕事は常に同時進行

わたしの場合は執筆の仕事が多いので、いくつかの原稿を掛け持ちで進めていることがほとんどです。その場合、ひとつを片づけてからひとつにかかる、という方法をとっていません。すべてに着手しておき、並行して進めていきます。

同時に違うことを進めていると、相対的な視点で振り返るので完成度が高くなる→手戻りが少ない、ということと、切り替えがあることでテンポよく仕事ができて早く進むのです。

ちなみに、子どもたちの夏休みの宿題の進め方についてもこのように指導をしています。着手しているものの続きをするのと、一から始めるのとでは、起動力がまったく違いますから、追い詰められないうちに起動しておくのです。

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<仕事のルール2>深夜をあてにしない

以前は、深夜まで仕事をしていることがしばしばありました。子どもが寝た後は自分に許された自由時間。そこで終わりきらない仕事にゆっくり向き合うのです。

ただ、その循環はあまりよくないと、40歳を過ぎて気づきました。「夜があるから」と後ろの時間に甘えると、日中のテンポが失われますし、睡眠不足で翌日のパフォーマンスが確実に下がる。徹夜なんかした日には、通常のレベルに戻るまで3日くらいかかります。これも歳のせい? 笑。

わが家では、23時ルールをつくりました。23時を過ぎたら、子どもは寝て(もしくは寝室へ)、親はプライベートタイムとして、それ以降、仕事は基本的にはしないというルールです。

子どもへ示しがつかないと困るので、一生懸命守るようにしていたところ、仕事時間は短縮されましたが、こなす仕事の量は減らない、というミラクルが起きました。睡眠時間を確保したこともあり、仕事中にぼやっとすることが減ったのです。ランチ後の睡魔以外は、です。

「休むぞ!」を守るのは、「仕事するぞ!」よりも、時としてむずかしい場合があります。休んで何がしたいのかが明確なときにこそ、できることなのかもしれません。

<仕事のルール3>ミーティングはバーチャルを駆使する

「とりあえず打ち合せ」という状態を、極力減らしています。

実は、人と会って打合せをするのは嫌いではありません。相手と細やかな意思疎通が図れたり、文書のやりとりでは詰め切れないことがぱっぱと決められたり、何よりその時間を通じてお互いの士気が高まるという効果もあります。

一方で、打合せに「出向く」には膨大な時間を要します。たとえ都内でも、1時間のミーティングに往復合わせて3時間使うことになったり。そのせいで他の仕事が圧迫されるのは避けなければなりません。

そんなわけで、SkypeやAppear.inを使ってバーチャルミーティングですませられるものはすませるようにしています。わたしの場合は遠方にいる人たちとの打合せもよくありますから、必然的に日常化しました。むしろ、このほうが頻繁に打合せができるんですね。

もう誰もが使っているツールですから「いまさら」と思うかもしれません。ですが、実際にはまだまだ、「会って話す打ち合せ」のほうが圧倒的に多いんですよね。それが誠意の証、という文脈もあるんだと思います。ただ、できれば、普通に選べる選択肢としてバーチャル会議があってほしいです(ちなみに、役所とのやりとりでは、なかなかこれが導入できません)。

そして、相手とリアルで会って話す貴重な時間は、なるべく事務的な話ではなく、互いの温度を感じながら建設的で前向きな大きな話がしたい。そんな風に、打合せの質を使い分けています。

<暮らしのルール1>家事こそマルチタスクの能力を磨くチャンス


(c) buri327 - Fotolia

限られた時間でさまざまなことを集中してこなす家事は、なかなか高度な技が必要な仕事だと思っています。

忙しい時間帯の主婦は、みなそうでしょうけれど、それこそ夕方から夜にかけては千手観音状態ですよね。料理しながら、洗濯物をたたみながら、子どもの宿題を見ながら、隙を見てメールの返信も。それらは全部を言語化することはできないくらい精密にびっちり詰め込まれていて、まるでテトリスのようだなと思います。

フライパンが温まる間にバスタオルを5枚たたむ、料理を煮込む間にワイシャツにアイロンをかける、やかんに水を入れている10秒の間にもコップをしまったり冷蔵庫からものを出したり…。スキマ時間を駆使してこなしていきます。

実は、子どもたちが見るわたしというのは、仕事する姿ではなく全身を駆使した家事おばさんの姿ばかり。「ママってすごいよね…」と言われても微妙な気持ちになりますね。そして、そんな他人事のように褒めるんじゃなくて手伝ってほしいよと、目下指導中です。

これだけ読むと大変そうに見えますが、家事をスポーツやゲームのようにこなして、上達をひそかに喜ぶ、というのは悪くありません。漫然とやっているとくたびれるばかりの家事も、頭を使うとそこそこ効率的にできるようになります(あとは、疲れきったときに代わりになってくれる家族を育てておくことですかね。笑)

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<暮らしのルール2>一日一善掃除

掃除って、果てしないですよね…。ベーシックな片付けや床掃除だけでも大変なのに、気になればいくらでもきれいにするところがあるのですから。

「週末は念入りに掃除を!」という人もいるかと思いますが、週末田舎暮らしをしているとそれもなかなか立ち行かないものです。

そこでわたしは、「一日一善」ということで、毎日一カ所だけ、普通の掃除範囲以外のものを綺麗にすることにしています。それも、「今日は洗面所の鏡」「今日は鍋をひとつ磨く」「今日は冷蔵庫の一番下の棚を拭く」といったように、「ささやかな一カ所でいい」と決めて続けています。あれれ? みなさんは毎日やっていることかも? 笑。

ためるとやっかいなことを、分散して片付けていく。実はこれ、義母のアイディアです。たまにいいことを言うんですよね!

<暮らしのルール3>むやみに悩まないようにする

「これは一体どういう意味だ…」「こういう伝え方をしちゃったけれど、誤解されてないかな…」と、日々の人間関係の細かい悩みは尽きませんよね。

それで仕事に手がつかなくなったり、長いことぼんやりしてしまったり。しかたのない話ですが、客観的に判断できないものや対処のしようがないことについては、意識的に悩みすぎないように努めます。

ちなみにわたしはそんなとき、野良仕事をしているときに出会う虫たちを思います。

みんな一生懸命生きて、死んでいく。自分もそう。つつがなく命が続いていることが大事で、あとはどうにかなるはず、と。

悩みのなかに没入してしまう自分を引きずり上げるのは大変ですが、「自分は、相手にとっては意外と小さい存在だったりするかも」などと自分を相対視すると、ふっと気が楽になったりします。

悩むのは人間の特権です。その上で、日常の細かい悩みとのつきあい方を学んでいくことも、大事だなあと思います。

スキマの時間をまとまった時間に

いかがでしょうか。

ずいぶんみっしりした、精度の高い暮らしだなあ、と、想像するだけで疲れてしまいそうですね。笑。

もちろんこれらを100%実現しているわけでは、まったくありません。すみません! しかも、そうしてできた時間の一部は、ソファに埋もれてぐうぐう寝る時間にもなっちゃったりしています。

ただ、1日24時間で1年365日は変わらないので、緩急をつけて暮らしながら、スキマの時間をまとまった時間に変えられるよう、なるべく心掛けています。

社会のなかで仕事をしていると、自分の都合だけで時間をどうこうできない局面もたくさんあるかと思います。ですが、「週末は田舎で暮らすなんて無理じゃないか」とぼんやり思っている理由を丁寧にほぐし、それを解決する方向で暮らしを変える試みを日々に散らしておくことで、存外無理な話でもなくなったりするものです。

また、たとえ週末田舎暮らしが叶わなくても、こうした習慣はあって悪いものではありません。自然と変わることはなくても、変えることはできるのだと、体が覚えていくのはいいものだなと思っています。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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