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新しい二地域居住を実践する3つのケース

高齢化、介護問題もなんのその!? “親世帯と楽しむ週末田舎暮らし”という新しいカタチ(2/4ページ)

馬場未織馬場未織

2017/06/15

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わたしの両親はディープな都会派なので…

わたしの場合は、現在、夫と自分の両親が4人健在で、これからの人生設計には高齢の親たちとどう寄り添っていくかという大きな課題が内在されています。

もし自分の親が、自然のある暮らしを好む人たちだったら、彼らを巻き込みながらの二地域居住を考えていたかもしません。ともに畑をする時間をつくったり、入れ替わりで家を使うプランを立てたり。

ところが、わが家の場合は、残念ながら両親ともディープな都会派で、「最後に住むところは銀座の鳩居堂あたりがいい」と冗談を飛ばすような人たちであるため、お客として、たまに南房総の家に呼ぶくらいのことしかしてきませんでした。

ただ、ひとつ思い出すのは、以前、父が南房総を訪れたときに、デッキに座り込んで遠くをずっと眺めていた姿です。何を考えていたかわかりませんが、興味をほかにうつすこともなく、低い山の連なるのどかな景色をゆっくりと堪能しているようでした。

都会派かもしれないけれど、もっと前に、もっと積極的にわたしが働きかけていたら、田舎のある人生をすこしインサートできたのかなと、振り返ってしまいます。

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親世帯、子世帯が関わりながら二地域居住をしているケース

さて、わたしの友人で、実際に親世帯、子世帯が関わりを持ちながら二地域居住をしている人たちがいます。動機も暮らし方もそれぞれですが、深さと広がりを併せ持つ彼らのライフスタイルに心を動かされます。

ここで、3人の例をご紹介します。

親が二地域居住を始め、自分の生活にも田舎暮らしが流入してきた女性Mさん
両親が「平日は横浜、週末は富津」という二地域居住を始め、Mさんは、その野良仕事を手伝う形で自身も田舎に通うようになっています。

彼女の母親は3人娘を育て上げた後、自宅マンションのベランダを埋め尽くしていたプランターでは満足せず、「地植えで野菜が育てたい!」という農作熱に突き動かされ、両親そろって3年前から二地域居住を始ました。

予算や土地の条件に合う物件を見つけるのに膨大な時間がかかりましたが、結果的には、子や孫も車が停められる広々とした敷地に、デッキのある古民家が建つ物件を見つけることができた次第。ここを『おかん帝国』と呼び、折りに触れて親族で集う状態は、まさに3世代二地域居住といった風情です。

Mさんはエクステリア・ガーデンデザイナー。その職能がだいぶ拡大解釈されて、“電柵を張りたい”“メッシュ筋フェンスをつけたい”“ネズミが出る穴をふさぎたい”“波板屋根を張り替えたい”など、母親から要請されることもしばしば。

いくら親孝行したいといってもあまりに大変だ! とぶつかることや、慣れない作業にヘトヘトになることもあったそうです。

ところが、彼女のDIYスキルは時を重ねるごとにメキメキと上達し、同時に心の余裕も生まれるようになってきました。彼女がしばしばSNSで投稿する記事には、田舎の季節の風情、畑や野山の恵み、保存食づくりやひと手間かけた山菜料理、両親や姉家族との時間など、おかん帝国での豊かなできごとがつづられます。

また、家屋改修の参考になれば…と南房総DIYワークショップに参加したことがきっかけで仲間との交流が生まれ、「みんなも頑張っているよね、わたしもがんばろう」と、より前向きな心持ちになったとのこと。仕事でも、クライアントにそれまで以上にふくらみを持った提案をしたいと考えるようになるなど心境の変化も生まれてきました。

「いつまで両親がこの暮らし方を続けられるか、体力や運転能力は大丈夫か、と将来への心配はあります。交通、買い物、医療など生活環境の不安さえなければ、移住したほうが健康的な老後が送れるはずなんですけれどね。わたしも、もっと滞在時間を長くしても仕事ができるような形態を模索しようかな、と」。

当初は親の無茶振りに腰が引けていたMさんですが、いつの間にか、積極的に田舎暮らしに関わる未来を考え始めています。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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