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家猫寿命16年 ――「猫と長く暮らす家」に必要なもの、不要なもの(2/2ページ)

山本 葉子山本 葉子

2020/08/22

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猫のライフステージを考えることがポイント

しかし、猫にもライフステージがあり、遊び方も変化します。子猫時代・成猫時代・老猫時代と変化するライフステージにあわせて、室内を工夫できればよいですが、これはなかなか大変なことです。

では、どうしたらよいか。それは最初からシニア猫が使うのに適した仕様にしておけば、一生涯を通じて猫が楽しめる室内としてはいいのではと思っています。

高齢になってくると猫の行動が変わり、やりたいことができなくなっている猫の姿に気がつくようになります。例えば、健康な若いときの猫は、朝、起きると大きく伸びをして、いつもの場所に行って、爪とぎをします。これはヤル気の表れでです。

1日に何回も爪とぎ自体はするのですが、体調不良になると、いつの間にかこれをやめてしまいます。原因としては、前足の関節炎などの症状が関わっている場合もあります。

また、猫は身体中をなめてグルーミングをしますが、これもをしなくなったり適当に済ませたりするようになるのもシニアの特徴です。これは体力の衰えよりも、脊椎に痛みが出たりしていることがあり、体をうまく回せなくなります。また、飛び上がったり飛び降りたりの回数も減ってきます。

こうしたシニア猫の変化は、股関節や膝関節などの痛みが原因の場合が多いのですが、猫族は総じて「耐えてやり過ごそうとする」動物なので、飼い主さんが気がつく頃には実ははかなり病状が進行していることがあります。手や足や腰が痛いと、人もいろいろな行動が制限されたり、これまでできていたことができなくなったり億劫になったりしますが、猫も同じです。

飛び上がったり飛び降りたりする階段状のキャットステップを使うことが難しくなったシニア猫には、天井近くまであるようなものではなく、ダイニングテーブルくらいの高さのもののほうが移動しやすく、2頭以上飼育する際でも、それぞれの猫が自分のテリトリーを守りやすくなるためのトラブル回避になります。

天井近くまでしつらえたキャットステップやキャットウォークが若年向きのフィールドアスレチックとすれば、人の腰あたりまでの高さで、スロープを使いながら緩やかに上下する遊び場は子ども用公園の設備です。ですが、子ども用仕様であっても、成猫や子猫たちも充分に運動ができますし、万一の事故も少なくなります。

そして、どの世代の猫たちにも好評なのが「スパイクの効く柔らかい床材」でしょう。爪をかけやすく、歩くときに肉球への負担も少ない素材がおすすめです。つるつるのタイル素材ではなく、木やクッション性のあるものを選んであげてください。

高すぎる場所に遊び場を作らない、歩く運動の延長の設備、クッション性のある素材……このことだけを気をつけるだけで、猫と人との距離がグッと近くなり、そんなお部屋になります。

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この記事を書いた人

NPO法人東京キャットガーディアン 代表

東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。

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