あるババ物件をめぐる本当にあった怖い話(2/2ページ)
尾嶋健信
2016/02/24
売りに出されていたのは、あのババ物件だった!
その後、Kさんの消息はまったく耳にしませんでした。そしてつい先日、まったく別方面の知り合いのEさんから、「中古マンションを買いたいんだけど」と相談を持ちかけられたのです。
聞けば、杉並区にある築12年の3階建てデザイナースマンションで、販売価格は1億4000万円だとか。諸費用込みで、およそ1億5500万円。詳しく話を聞いて、アッ!と思いました。そう、それは2年前に地方公務員Kさんが購入したマンションだったのです!
私が想像するに、Kさんは結局、賃貸経営に失敗したのでしょう。もともと、1室でも空室が出れば赤字に転落する、危うい物件でした。2室も空室の状態が何カ月も続いたり、水漏れなどで修理工事の費用がかさめば、たちまち経営危機が訪れます。
毎月のローン返済に窮したとしても、オーバーローンで物件を買っているKさんは、ほかの金融機関への借り換えもできません。マンション経営が破綻した場合、Kさんはマンションを手放すしか方法がないのです。それも、不動産屋からおそろしく買い叩かれた金額で。Kさんに残るのは、いまより少しだけ少額の借金だけ…。
こうして、どこかの不動産屋に買い叩かれた中古マンション=ババ物件は、不動産会社のあくどい利益分が上乗せされ、1億4000万円で売りに出されることに。表面利回りはさらに下がって、6.85パーセントに。この利回りでは、賃貸経営がよほどわかっている人でないと利益は出せません。
私は、相談を持ちかけてきたEさんに、「そのマンションは絶対に買ってはいけません。買ったら、ババを引くことになりますよ!」と強く忠告しました。Kさんの例をあげながら。幸い、Eさんは私の忠告に従ってマンション購入を中止。聞けば、2016年1月31日現在、まだ買い手はついていないようです。
さて、次にこのババを引くのは、いったいどこのどんな人なのでしょうか…。
この記事を書いた人
満室経営株式会社 代表取締役
1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。