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これを知らないと、失敗・破綻が忍び寄る? 賃貸不動産投資『基本のキ』(2/3ページ)

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2.腹に据えるべし——賃貸事業から生まれる収益の仕組み

キャピタルゲインとインカムゲイン

賃貸事業から生まれる収益には、大きく分けて2つある。ひとつはキャピタルゲインだ。保有している物件を売る際に(その物件での賃貸事業を終える際)物件価格が購入時よりも高くなっていて、利益が生じた場合の手残りを指す。

もうひとつはインカムゲインだ。賃貸事業そのものによって得られるお金のことだ。つまりは、家賃収入から経費等を除いた結果としての収益のことをいう。

このうち、バブル時代のような不動産の右肩上がりの価格上昇といった環境下にはない現在、キャピタルゲインは当然ねらいにくい。そのため、王道ともいえるインカムゲインを確実に追求するのが、いまの賃貸事業のセオリーだ。

利回りとキャッシュフロー

賃貸事業のインカムゲインを支える根本となるのが「キャッシュフロー」だ。破綻したオーナーには、この概念が頭にしっかりと収まっていなかった人が多い。 

とはいえ、キャッシュフローを理解するのはさほど難しいことではない。賃貸事業においては、家賃収入から諸経費、ローンの返済額と利息、税金を差し引いたうえで、最後に残った現金のことを指すと理解すればいい。非常に簡単だ。

一方で、賃貸収益物件情報を見ると、そこには必ず「利回り」という項目がある。これは通常「表面利回り」のことを言っていて、実はかなり大雑把な数字になっている。計算式を記せばこうなる。

(その物件の満室での年間想定家賃収入÷物件価格)×100

見てのとおり、経費も何もかも全部すっ飛ばした数字だ。なので、賃貸事業における本当の利回りといえば、それは、上記のキャッシュフローに当たる数字を「物件価格+購入時諸経費」で割った数字となるだろう。

ただし、表面利回りは、相場感とのバランスを測るなど物件を大づかみで俯瞰するための入り口データとしては便利なものだ。そのため、それなりに重宝されてはいる。

キャッシュフローから、リスクヘッジも資産形成も生まれる

キャッシュフローに話を戻そう。キャッシュフローこそ、賃貸事業のすべての成果を生み出すカギだ

例えば、毎年のキャッシュフローがゼロに近い賃貸事業は、融資の返済と利息を支払うまでで精一杯の状態に陥っている。最悪、破綻さえしなければ物件のみは手元に残るが、要は、長いローンの危ない橋を渡って高い買い物をしただけという、空しい結果待ちだ。

さらに、キャッシュフローの累計がマイナス続きともなれば、それはより深い病状を示すサインとなる。オーナーの本業収入や貯金が蝕まれているのだ。手を出さない方がよかった類のプロジェクトといえるだろう。

逆に、キャッシュフローが着実に積み上がっていくような経営が行われれば、それは3つの面での恩恵を生む。ひとつはリスクヘッジだ。 

市場の急な変化にともなう空室の増加、それに付随しての家賃の下落、あるいは、物件で起こりうるさまざまな事件・事故、加えて災害のほか、予定されていた修繕・非予定の修繕など、ありとあらゆることへの対応がキャッシュフローの蓄積が健全な経営であれば容易になる。

さらには、攻めの有利だ。賃貸事業は、物件を増やしていわゆるポートフォリオを組むことでより安定する性質を持つが、キャッシュフローは当然そのための原資となる。なおかつ、十分なキャッシュフローとそれを生み出している経営への外部からの信頼は、次なる融資をスムースに実現させるために必須のものだ。

3つ目は、資産形成だ。さきほども触れたが、キャッシュフローが着実に積み上がり続けている賃貸事業にあっては、当然、融資の返済も余裕のうちに進んでいる。その間、オーナーにとっては物件の純資産化(自己資産化)も、同じく余裕のうちに進んでいることになる。

もっともいまの時代、賃貸物件のような土地付き建物の資産価値は通算で目減りしやすい。土地価格は上がりにくく、一方建物は劣化するからだ。 

しかし、そうした減少分もまた、キャッシュフローが現金資産化したり、次なる投資によって新たに現物資産化(=物件に変わる)したりすることで、埋め合わせられるかたちとなる。すなわち繰り返すが、キャッシュフローこそは、賃貸事業の成果のすべてを生み出すカギだ。

キャッシュフローを緻密にシミュレーションせよ

以上から、賃貸事業においては、キャッシュフローを最大化することこそがもっとも重要なミッションであることがよく分かるだろう。逆にいえば、キャッシュフローを悪化させないための事業の設計・構築と、日々の努力が非常に大切なものとなる。

ポイントを挙げよう。まずは事業の設計・構築面だ。 

1.自己資金比率をなるべく高める(=融資の際の頭金を増やす)
2.なるべく低い金利で、なるべく長期の融資を受ける
 ——以上によりローン出費を抑える

3.空室の生じにくい物件を選ぶ
4.経費の生じにくい物件を選ぶ
 ——以上により、家賃収入の逸失と事業損失を抑える

次に「日々の努力」にあたる部分だ。

1.空室をなるべく生じさせず、生じても長引かせないための工夫、努力をする
2.金利の変動など金融情報をしっかりとキャッチし、借り換え等、必要な行動をとる

以上、理屈はきわめて単純だ。出るお金は抑え、入るお金は最大化させる。そのための環境をきちんと作り出しておく、作り出していくということになる。

とはいえ、こうしたポイントをバランスよく押さえていくのは実は結構むずかしい。例えば、事業の設計・構築面の1、2からすると、新築よりも購入価格が抑えられる中古物件は、ローンの総額が下がるため基本的にはおススメということなる。

だが、一方で中古は3、4の部分で不利だ。当然ながら新築よりも集客面が弱いほか、物件を買ってほどなく給水ポンプなどの基幹設備が壊れ、多額の交換費用が生じたといった不幸な話も、少数ながら聞かれるところだ。

つまり、そうした点を鑑みれば、オーナーに寄り添い、親身になってしっかりと物件を吟味してくれるパートナー(管理会社を含む不動産会社)を探すことは、特に初心者にとっては大変重要だ。

また、「日々の努力」にあたる部分については、これこそまさに前述したオーナー自身の関与、経営能力が試される部分となるわけだ。

なお、キャッシュフローは、企業の決算報告と同様、事業の結果を示すものであって、事前に確定した数字を知ることが出来るものではない。しかしながら、仮の数字を組んでのシミュレーションについては、いまのネット時代、それがかなり細かく行えるツールも公開されている。

よって、これから賃貸事業に乗り出したいと思う人は、こうしたものを大いに利用して少しでも感覚を養っておくのがよい。賃貸物件に投資し、経営するという、未経験者には漠然としたイメージしか湧かない世界の現場で生じるマネーの動きが、幾分か実感として見えてくるはずだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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