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私立大学新入生の支払う家賃を仕送りから引くと、残りは1万円台に…35年前はどうだったか(2/2ページ)

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なぜ新入生は安い物件を選ばないのか?

ところで、この東京私大教連が毎年発表している数字には、よくオーナーから「不思議だ」との声も挙がる。

「いまだって家賃3万円台、4万円台の物件はいくらでもある。私の物件だってそうだ。なぜ学生さんは生活が苦しくなるのにそっちを選んでくれないのか」

同じ疑問は、10年代の半ば頃まで、筆者も、オーナーのみならず仲介会社や管理会社のスタッフからもよく耳にしたものだ。

しかし、この「謎」は、その後不動産ポータルサイトの編集部などによる調査や研究によって、だんだんと解き明かされてきた。

答えは、「家賃の安い物件にありがちな『環境』に対して、自分が育ってきた過去に同じ経験がない世代は耐えられない」と、いうものだ。

例えば、低家賃の物件でよく出会う、バス・トイレが一緒の「3点ユニット」や、「室外洗濯機置き場」は、見事にこれにあたる。

90年代後半前後以降の、快適性が急速に高まったマンションや一戸建てで育った世代からすると、これらは主に清潔感の面からとても耐えられない。

ゆったりとくつろげるはずのバスタブの目の前に便座。服を清潔に洗う道具であるはずの洗濯機の上に土やホコリ。「おぞましい」といってよいほどの拒絶感をもたれることもあるという。

そう聞くと、筆者も感覚をすぐに理解できた。なるほど腑に落ちるし、おそらく正解だろう。が、上記、仲介会社のスタッフの1人(昭和40年代生まれ。汲み取り式のトイレを知っている)は、筆者に対しこんな風に言っていたものだ。

「初めて一人暮らししたときの自分の部屋で、3点ユニットを見たときは、便利そうで、清潔で、ホテルみたいでお洒落だと私は感動したんですけどね」

賃貸経営は、若い入居者と年齢を重ねたオーナーとのジェネレーションギャップが表面化しやすい業態だと昔からいわれている。顧客レベルでの「あたりまえ」に、オーナーがなかなか気づけないことも多い。

時代とともに変わる人々や社会の感性に、ぜひ日頃から鋭敏でありたいものだ。

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