投資用として買ったが支払いがキツいーー「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
田中 裕治
2020/02/18
「ローン残」物件の処分、2つの方法
「ローンが残っている家を売りたいけれど、売れますか?」
こうした相談はよくあるものです。「新しい家への住み替え」「投資用として買ったが、思った収益が得られない」、あるいは「ローンの支払いがきつい」などなど、その理由もさまざまです。こうしたローンが残っている物件では、売却してもローンが残ってしまう場合は、基本的に残りのローンを全額返済しなくては銀行などの金融機関が抵当権を外してくれないため、売却することが難しいこともあります。
しかし、売る方法はあります。
その1つは売却代金に差額分の現金をプラスして返済にあてる「一般売却」。2つ目は抵当を付けている債権者と話し合い、ローン残高があるままで売却して、債権者と合意した範囲で分割し、抵当権をはずしてもらう返済する「任意売却」というものです。
ただし、一般売却ではローン返済に足りない部分は、自分で資金を用意する必要があるため、まとまった資金を用意しなくてはならないケースもあります。
一方、任意売却は「リストラされた」「病気で長期入院する」など経済的な理由によって住宅ローンの返済が難しくなった人の救済措置的な面もあり、だれもができるというものではありません。
実際には、住宅ローンの返済が滞って滞納を続くと、通常は「競売」に掛けられることにもなりかねません。こうしたケースでは競売後に自己破産する「住宅ローン破産」になるケースが多いことも特徴です。この自己破産を防ぐのが任意売却です。
こうした自己破産を防ぐ手だてが、住宅ローンを借りている金融機関と交渉を行い返済条件の変更してもらう「リスケ(リスケジュール)」です。返済期間の延長といったリスケができれば、月々の返済金額が少なくなり、無理なく返済が可能になることもあります。交渉次第では返済額を半分近く減らせることも可能です。
資金ショートを起こす前に、金融機関と交渉を
どんな物件でも売却できないものはありませんが、売却にあたっては時間がかかることがあります。ローンなどがある場合、多くのケースではギリギリまで頑張って、限界になって売却を考える方がほとんどで、不本意な金額、条件での売却。あるいは売却できずに競売ということも多々あります。
実際には、住宅ローンの滞納が続き、金融機関から届く書類が督促状から催告書に変わったら、要注意。競売が避けられないということもあります。こうなっては売却しようにも時間が限られるため低い金額での売却を余儀なくされることもあります。そこでまずはローン返済が厳しくなると思ったら、金融機関との間でリスケの相談をいち早く行うことが重要です。
【実例紹介】 空室でローン返済もままならない投資用マンションの売却(東京都渋谷区)
投資物件として購入したワンルームマンション。購入時より賃料が下がり、やっと入居した賃借人も3カ月で退去し、ローン返済などで毎月収支がマイナス。返済が一部滞っており、売却しても借入れが残ってしまう任意売却案件
投資用マンションを2部屋所有。1室は空室で入居者が決まらず自分の預貯金を取り崩してローンを返済しているため、この物件をすぐに処分したいというご依頼でした。
対応策としては賃貸募集の状況を確認。それと並行して売却活動を行いました。
まず募集している管理会社をみたところあまりやる気がない状態だったため、当社で賃貸募集を協力。売却については当社の取引会社の関係に購入先がないかをあたりました。
結果的には投資用物件が渋谷区という人気エリアだったため、当社の取引関係に2部屋まとめて売却することができました。売却価格、売却条件が好条件だったため短期間で担保抹消及び決済、引き渡しとなりました。
この案件のポイントは、「投資用マンションを所有する危険性」をよく理解するということです。この案件では物件が人気エリアにあったため好条件での売却ができましたが、立地条件次第では、ローンが残るという危険性もありました。
こうした投資用マンションは、購入時の資金計画が甘く、空室リスク、賃料の下落などあまり理解しないまま購入される方が多いのが現実です。購入の際は、物件のあるエリア、資金計画をしっかりと確認することが重要です。また、賃貸募集を行う会社選びもとても重要です。管理を委託する会社によっては、空室だった物件も、すんなりと見つかる場合もあります。いずれにしても、投資用不動産購入の際には営業マンの言葉を鵜呑みにせず、細心の注意を払うことが必要です。
「売れない不動産はない〜負動産を富動産に変える〜」田中裕治氏のコラム一覧
第1回 どうしても売れない不動産をどう売るか
第2回 「苦しい物件」を早く処分するために必要なこと
第3回 狭小住宅や築古物件、売却しようとしたらトラブル発覚 注意したいポイント
第4回 車が入らない、市街化調整区域…マッチングで売れない不動産を売る
第5回 売却しやすい農地、売却しにくい農地――農地の相続・売却は早め早めの対応で
第6回 共有名義の自分の持分だけの売却――いったいいくらで売れるのか?
第7回 「事故物件」は売れるのか? 事故物件を売るために必要な取り組みと事前対策ポイントとは
第8回 共有名義の「農地」の売却――売るための準備と超えるべきハードル
第9回 別荘の売却――コロナ後の「新しい生活様式」で人気が高まる別荘の見切りの付け方
第10回 使えない、建て替えできない……市街化調整区域の「分家住宅」の対処法
第11回 底地と借地の売却で重要なのはタイミング
第12回 農地転用で市街化調整区域の農地の売買を可能にする
この記事を書いた人
一般社団法人全国空き家流通促進機構代表理事、株式会社リライト代表取締役
1978年神奈川県生まれ。大学卒業後大手不不動産会社に勤務したのち、買取再販売メインとする不動産会社に転職。その後、34歳で不動産会社を設立。創業以来、赤字の依頼でも地方まで出かけ、近隣住民や役所などと交渉。売れない困った不動産売却のノウハウを身につけてきた。著書に『売りたいのに売れない! 困った不動産を高く売る裏ワザ』『本当はいらない不動産をうま~く処理する!とっておき11の方法』などがある。