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空間と心のディペンデンシー

広い家は良い家か?(2/2ページ)

遠山 高史遠山 高史

2019/04/17

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「広い=空間が余っている」ということは、すなわち逃げ場があるという事である。私的な空間を作りやすく、それゆえに、孤立できてしまい、家族の関係性が希薄になるという危険性を秘めている。確かに、自分以外の人間と同じ空間で生活するのは、面倒も多いし、気も遣う。

しかし、もともと、人間は群れで生きる動物である。互いに刺激しあい、密接な関係性を構築することこそ、人間の幸せの根源のように思う。

家族は、関係性の基本の単位だと思えば、狭い部屋で身を寄せ合いながら、食卓を囲み、テレビを観るのは重要なことである。どんな立派な邸宅であっても、ろくな会話もなく、帰宅してすぐに個室にこもれるような状態は、一見快適に見えるかもしれないが、「自然」ではない。したがって、精神にプラスに働くはずもない。

精神医学云々の前に、どちらが群れる動物としての自然な在り方かと言い換えてもいい。モデルルームをそのまま写し取ったような広々としたダイニングが、畳敷きの狭い六畳間よりも、家族にとってよいかどうかは、疑わしい。

後日、知人の話を娘にしてやろうと思ったが、「広い家」は掃除が大変面倒だということに気が付いたそうで、すっかりやる気を失っていた。当分資金の協力はせずに済みそうである。

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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