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規制し、強化もすべきか? 外国人による日本の不動産購入について考える

朝倉 継道朝倉 継道

2025/12/17

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外国人による日本の不動産の購入。それが各地で実際に進む中、人々からは危惧する声も聞かれる。外国人の国内不動産への投資、すなわち土地や建物の取得はリスクなのか? いくつかの視点から整理してみたい。

自民党総裁選でも論点に

先日の自由民主党総裁選でも論点のひとつとなっていた。外国人による日本の不動産の購入、取得だ。規制をかけるべきか、かけるならどうすべきか?

筆者の考えを言おう。その土地なり建物なりが、わが国のため真に規制をかけるべき、規制を強化すべき土地であるのならば、外国人であろうと日本人であろうと切り分けることに意味はない。どちらにも適宜規制をかけるべきだ。

たとえば、ここに日本の安全保障上重要な土地があるとする。あるいは、水源を含む森や大切な農地、さらにはエネルギーの確保や国土保全など広い意味での国家保安上重要な場所があるとする。であれば、そこに公(おおやけ)ならざる者がやって来て、所有権や地上権といった強力な私権を打ち立ててしまうのは容認できない。それがどこの誰かを問わずストレスだ。

「外国人に土地や建物を買わせるな」「市場から排除せよ」もいいだろう。意見は自由だ。しかしながら筆者はこう思う。不純な意図のない外国人よりも、ハニートラップや洗脳にかかった日本人が防衛上の要地を取得してしまう方が、よほど不安で始末に負えない。

整備すべきは公的権限の的確化、迅速化

今年の初めから夏にかけ、外国人と不動産の絡んだ悩ましい事件が東京の板橋区で起きている。「家賃2.5倍マンション」などと報道され、国会でも採り上げられた。この件では、賃料を明確な根拠なく突然「爆上げ」することで既存の住人を追い出し、当該賃貸物件を使って民泊を営もうとしていたオーナーが、結局のところ計画を断念した。住人たちの連帯と発信による賜物だ。なお、民泊は無届けのまま一部住戸において既に始められていた。

そのうえで、このマンションのオーナーは中国系企業だった。また、実質的なオーナーとされる人物は中国国内にいる投資家だったらしい。そのため、この事件は象徴的な一例となっている。外国人による日本の不動産取得をリスクと考えるべき、身近な論拠のひとつに挙げられている。

だが、冷静に考えてみよう。この事件で画策された家賃の値上げは、オーナーが誰であるかを問わず、そもそもわが国の法律上通用しない内容のものだ(借地借家法)。無届けの民泊営業も、もちろん違法なため、誰であろうが拘禁刑や罰金の対象となる(旅館業法)。すなわち、ここで考えるべきは、外国人と日本人の間に仕切りを設け、双方を区別することではない。行為の主体が誰であろうと、そこに違法性または違法を示す証拠があるのならば、行政・警察・司法・税制といった権限が、的確に、素早くそこに及ぶことこそが重要だ。そうした部分の整備がゆるいことで、一部外国人によるいわば「禍」が生じるとすれば、われわれが改めるべきはその「ゆるさ」にほかならない。外国人、日本人という外的要件に目を奪われ、衝くべき本質を見失うべきではない。

日本人が家を買えなくなる?

外国人が投資のため日本の不動産を高く買う。すると、不動産の価格が上がり、日本人が家を買えなくなる。そういった懸念も昨今よく指摘されるが、これは既に世界のあちらこちらで生じていることだ。

だが、筆者はここでもその対策として、外国人と日本人を隔てる仕切りを単純に設けて済ますのはよくないと思っている。なぜなら、こうした外部性によって生じる市場の問題というのは、外国人ばかりがこれを生み出すものではないからだ。わが国もまた、富裕層の数では指折りの資産家大国であることを忘れてはならない。彼らの巨額な資金が投資を超えて、投機の野に放たれ、資産バブルや、国民相互における絶望的な格差を生む弊害を避けるためには、施策は万人一律に適用されるものでなければならないということだ。

その意味で、たとえば外国人が不動産を購入するにあたり、重い印紙税を課すといったやり方を筆者は好まない。一律ではないからだ。しかしながら、一方で、利活用せぬまま非居住の物件をキャピタルゲイン目当てに保有するといった行為には、相応のペナルティを課していい。いわゆる「空き家税」的発想がそれにあたるが、ただし、その際は課税対象を国籍で区別してはならない。あくまで万人一律だ。

不動産は売る側に都合のよい貿易財

筆者が外国人による日本の不動産の購入につき、ことさらちゃぶ台をひっくり返すように「規制するなら外国人、日本人問わず」を前置きすることについて、これには理由がある。それは、外国人による日本の不動産の購入が、われわれのよいビジネスとなるからだ。論理的にはこれは輸出に当たる。その機会を失うのはもったいないからだ。

繰り返すが、外国人や外国企業がお金を出して日本のモノを買えば、そのモノは貿易財となる。これは不動産であっても同じで、要はモノの輸出だ。そのうえで、不動産という貿易財は輸出する側にとって都合のよいことに、相手の国に持ち去られることがない。名義はたとえ外国の個人や組織に移ろうとも、その所在は頑として日本国内に留まり続ける。

そのため、さらに有利なことには、国内に残り続けるこの貿易財  不動産にあっては、日本にある以上、日本の法令規則が厳然と及ぶ。これを無視しては買い手は勝手な利用も処分もままならない。違反すれば、その者は日本の法律によって裁かれる。その土地や建物に籠って罪を犯しても、治外法権など当然適用されない。すなわち、内外に公平な限度をもって外国人に不動産を買ってもらうというのは、実はなかなか手堅く、おいしい商売なのだということだ。(なので反面、公的権限が的確にそこに届くことが重要なのだ)

ちなみに、外国人が日本の土地を買うことについて、「領土を取られるのと同じ」といった意見もたまに見られる。個別の感傷として解らなくもないが、ここはぜひ落ち着きたい。租界や占領地が生まれるわけではないのだ。また、中国におけるいわゆる動員二法(※)への懸念については、これは不動産というステージを超えて対応すべき総合的なものだ。その点、筆者は在留外国人が間もなく400万人を超えそうなわが国にあって、いわゆるスパイ防止法は、法的インフラとして、好悪を抜きにもはや必要不可欠なものであると思っている。
(※国防動員法と国家情報法。有事、平時においての在外国民の国家への協力義務等を規定)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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