相談できる仲間がいれば失敗を恐れる必要はない 購入しやすく、売却しやすい「空き家投資」のノウハウと考え方
ウチコミ!タイムズ編集部
2024/10/31
撮影/吉田 達史(Photo Current 66)
賃貸経営はしていても、不動産投資の新たな一歩を踏み出すことに躊躇しているオーナーも少なくないのではないだろうか。しかし、身近に相談できる相手がいれば、これまでとは違う動きもできるようになるはずだ。その相談相手のひとつになり得るのが、全国にある大家の会だ。吉岡良太さんは、大家や大家の会のつながりをもっと深めたいと「一般社団法人 全国大家の会」を仲間とともに立ち上げ、代表理事を務めている。吉岡さん自身の不動産事業、そして全国大家の会の活動状況やその思いを聞いた。(取材・文/財部 寛子)
安定を感じた不動産投資
──吉岡さんが初めて不動産を購入した2020年に全国大家の会を発足しています。どのような思いがあったのでしょうか。
もともと名古屋にある東海大家の会に参加し、私を含め数人で不動産投資について一緒に勉強をしていました。一から不動産投資を学んでいくうちに、「自分たちと同じような境遇の人たちはたくさんいるはず。全国にある大家の会とつながりを持つことができれば、もっとさまざまな出会いや学びを得ることができるのではないか」と考え始めたんです。それが、全国大家の会を立ち上げるきっかけになりました。
──具体的にどのような活動をしていますか。
全国にある約70の大家の会をホームページで紹介し、各大家の会の活動状況やセミナー情報を発信しています。各地で定期的な勉強会を開催し、現役の大家さんに実践的なアドバイスやノウハウを提供していただいています。不動産投資は複雑です。初心者が独学で情報を収集することは難しく非効率的だと考えています。より多くの人に大家の会を知ってもらい、初心者の方でも効率的に不動産投資の知識を獲得できる場になるよう活動しています。また、現時点で約50社の企業様が全国大家の会の活動に協賛してくださっています。
『全国大家の会』のポータルサイト。全国約70ある大家の会の情報を閲覧できる
──吉岡さんが不動産投資を始めたきっかけについて教えてください。
子どもが生まれ、育児休暇を取得したことがきっかけです。会社員時代は日々の仕事に追われ、自分が「何をしたいのか?」「どんな人生を送りたいのか?」ということを考える間もなく時が経過していました。「娘の誕生を機に家族と過ごす時間を大切にしたい。自分のしたいことは何なのか?」と、人生(時間の使い方)を考えるきっかけとなりました。それがやがて「自分でお金を稼ぎたい!」と思うようになり、インターネットを利用した物販を副業として始めました。その副業で貯めた資金が元手となり、初めて不動産を購入しました。
──なぜ、不動産投資を選択したのですか。
一時期、物販で資金繰りが厳しくなった経験があったこと、また出店費用や手数料、規定などでECサイトに事業を握られているような感覚があったことなどから、物販に対して少しリスクを感じるようになりました。その一方で、不動産投資に対しては、物件が増えて家賃収入が得られ、資産が積み上がっていくような安定感を覚えました。何より、初めて戸建てを貸したご家族が喜ぶ様子をみてやりがいを感じました。
地道に実績を積み融資につなげる
──最初に購入したのはどのような物件でしたか。
不動産情報サイトに掲載されていた岐阜県大垣市にある築古の空き家を購入しました。間取りは3DK、駐車場がない小さめの物件で、280万円で販売されていました。しかし、なかなか買い手がつかなかったようで、100万円で購入することができました。
──その物件はどのようにリフォームしたのですか。
雨漏りや室内の大きな損傷もなかったため、家具・家電といった残置物を撤去しきれいに清掃することで入居が決まりました。それほど初期費用がかからず、不動産投資としてはいいスタートを切ることができました。
──その後も物件を何軒か購入されていますが、金融機関からの融資は受けられましたか。
最初の6~7軒は現金で購入しています。物件購入前に地元の金融機関に相談に行きましたが、自己資金も実績も多くなかったため、簡単ではありませんでした。地道に不動産購入から入居付けの実績を積み上げ、キャッシュフローや自己PR資料を作って、再び金融機関にアタックしていきました。6~7軒不動産を保有した頃に手元資金に余裕ができ、ある信用金庫から「1000万円以下の土地値の物件」という条件で融資してもらえることになりました。そこで、オーナーチェンジで利回り15%、500万円の土地値物件を見つけて、フルローンでの融資が実現しました。いまでも、1年に1回くらいは決算書を持って金融機関に訪問させていただき、融資の開拓をするように心掛けています。
初めて空き家への融資を受けることに成功した愛知県の所有物件
──会社員で属性が高い場合は、不動産担保ローンを活用して不動産投資を始める人もいます。その点についてはどう思いますか。
不動産担保ローンを活用できるなら、融資の額も大きく、不動産投資スピードも速くなると思います。ただし、借入額が大きい分、その後の融資がつきにくくなる可能性もなくはありません。人それぞれの状況や考えによりますが、信用金庫や地方銀行などからの信用を地道に積み重ねていった方が、中長期的には拡大していけるのではないでしょうか。
戸建ての空き家は「安く購入」が条件
──吉岡さんは空き家戸建ての投資をメインにしています。その理由を教えてください。
最初は、融資でアパートを購入したいと考えていました。しかし、先述した通り、融資がつかなかったため、現金で購入できる空き家からスタートしたというのが最初の理由です。実際に事業を始めてみると、空き家は物件数が多く、価格交渉しやすいというメリットがありました。対投資家との売買になるアパートやマンションに比べて、空き家は「いくらでもいいから引き取ってほしい」といったケースが多くあります。安く購入して賃貸に出し、さらにその後、売却しやすいというメリットもあるんです。
──空き家を購入する際の条件はありますか。
建物がしっかりしていればリフォームでなんとでもなるという感覚でいますし、利回りを高く維持するためにも、一番は安く購入できることが条件です。ただし、お風呂やキッチンなどの水回りはリフォーム費用がかかるので、最低限きれいな状態であるかどうかを確認しています。地方であれば、やはり駐車場も必須条件になりますね。
──リフォームする際にはどのようなことを心掛けていますか。
私のお客様のほとんどは「きれい!すてき!」といったデザイン性のある物件よりも、清潔感や子育てのしやすさ、周辺環境の利便性を重視される方がほとんどです。壁や床材は白で統一感を持たせ、水回りは新品を導入するようにしています。ファミリー層が使いやすいように仕切りを排除し間取りを変更する場合もあります。
不動産会社との効果的なつき合い方
──物件情報はどこから得ていますか。
これまで購入した物件は、不動産情報サイトと不動産会社からの紹介と半分半分です。インターネットでは気になる物件をブックマークしておき、定期的にチェックするようにしています。不動産会社の担当者の方とは、情報をもらえるようなおつき合いを心掛けています。
──情報をもらえるおつき合いとは、具体的にどのようなことですか。
私に物件を紹介したら買ってくれる、あるいは誰かを紹介してくれると思ってもらえるような関係性を作っています。たとえば、「この物件、150万円だったら買い取れますよ」「申し訳ないけれど、この物件はタダでも買い取れませんね」「これくらいの金額なら購入してくれそうなオーナーを紹介できますよ」など、何かしら返答するようにしているんです。もちろん、物件購入の実績も積み重ねていったことで、不動産会社からさまざまな物件を紹介してもらえるようになりました。
──そういう意味では、大家の会のつながりは功を奏しているのでしょうか。
そうですね。大家の会で知り合った仲のいいオーナーがどんどん増えていくと、誰がどのような物件を必要としているかが分かってきます。だからこそ、不動産会社が物件を紹介してくれたときに、必ず返答できるような形になっているんです。
──さらに全国大家の会を立ち上げたことによっても、利点になることはありましたか。
たとえば、東京の大家の会に参加させてもらうと、名古屋とはスピード感や考え方の違いを感じることがあります。地域によって不動産投資の感覚ややり方、金融機関とのつき合い方など微妙に異なることを把握でき、個人的にも気付きや学びを得ることができています。
つながりを増やす全国大家の会
──今後、吉岡さん自身の不動産投資はどのような展開を考えていますか。
妻が宅地建物取引士の資格取得を機に宅建業を開業しました。将来的には資産価値が高い東京でも事業を展開したいと考えています。また、空き家を活用した民泊事業も始めました。空き家ならではの日本家屋は外国人ゲストに大変喜ばれておりますので、さまざまなコンセプトでフルリフォームして、国内外の観光客に活用してもらえる民泊を確立させたいと思っています。さらに、空き家だけでなく、収益性の高いアパートの再生についても力を入れていきたいと考えています。
──不動産投資について、新しい展開になかなか踏み切れずにいる大家さんも少なくないと思います。なにかアドバイスはありますか。
いつも熱心に勉強を続けている方がいますが、やはり、まずは行動してみることだと思います。自転車に乗るために、いつまでも乗り方ばかりを学んでいても、実際に乗ってみないと乗れるようにはなりません。まず、物件を購入するという決断をすることです。大家の会には相談できるメンバーがたくさんいます。相談することで大きな失敗をすることもなく、地道に資産規模を拡大していくことができるのではないでしょうか。
──全国大家の会での今後の展望についても教えてください。
全国大家の会は、大家さんと各地の大家の会とをつなげるプラットフォームの役割を少しずつ果たせるようになってきたところです。大家の会の知名度はまだまだ低く、大家さんに特化したコミュニティがあることを知らない方も多くいます。大家の会の認知を広げ、お互いに相談し合える場となるよう、勉強会やイベント、懇親会などをより多く開催していきたいと考えています。私が不動産投資を始めたときは、毎月の収入を増やしたいという思いがあり、現在でも自分の会社を大きくしたいという目標もあります。しかし、何よりも不動産投資や不動産にまつわる仕事が好きでやりがいを感じているからこそ継続できているのだと思います。
全国大家の会で、多くの大家さんがお互いに楽しく情報交換しながら、効果的な不動産投資を実現していっていただきたいと思います。
全国大家の会主催の交流イベント「大家さんサミット in 東京」の様子
一般社団法人 全国大家の会 代表理事 吉岡 良太(よしおか りょうた)さん
大学卒業後、高等学校の体育教諭、会社員を経て、不動産投資をスタート。サラリーマンと副業で貯めた100万円を元手に、2020年9月に初めて空き家戸建てを購入。現在は、戸建て20軒、アパート2棟を所有し、2軒で民泊を運営する。全国にある大家の会がつながることで、不動産投資についてもっと学ぶことができると考え、2020年に全国大家の会を発足。約50社の協賛企業の協力も得ながら、「大家さんサミット」などのイベントや勉強会を各地で開催している。著書に『全国どこでも誰でもできる空き家投資術』(プラチナ出版)がある。
この記事を書いた人
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