モラトリアム法が期限切れ...ってなに!?
ウチコミ!タイムズ編集部
2013/06/10
昨日辺りから今年3月末でのモラトリアム法の期限で住宅ローンの破産者が10万人!?」という記事がYAHOOを始め、あちこちに掲載されています。
■そもそも「モラトリアム法」って何?
~まず、意味は「支払猶予」と訳される事が多いでしょう。そのままの意味ですね。ローンなどの借財の支払いを猶予するという事です。何の期限が切れるんですか?
~2009年に施行された「中小企業金融円滑化法」が期間限定で(時限立法)運用されてきましたが、期間満了という形で終わりました。「中小企業」という名称が入っていますが、個人の住宅ローンもこの法律の対象となり、景気低迷・リストラなどに苦しむ住宅ローンを抱えたサラリーマン世帯などの多くも、その恩恵に預かっていました。
■どんな恩恵に預かって来たの?
~簡単に説明しますと、住宅ローン等を組んだ方が、ローンの支払途上で、リストラ・減給・妻の妊娠による退職・離婚などの理由によって、通常の月々のローン支払いが厳しくなり、ローンの借入先に相談をしてローンの元本は据え置いて、金利の支払のみで待ってもらうシステムです。
このシステムだと、金利分のみの返済で済みますから、支払はとても楽にはなります。しかし、ローンの元本は一向に減りませんのでローン返済自体は全く進みません。その上、実質的には「住宅ローンの返済総額は増える」事になります。このモラトリアム法が無ければ、こんな件数の支払猶予が発生しなかったとも言えますが、破産者などが増えていたでしょう。ただ、いずれにしても この法律は期限を迎えて終了してしまいました。
■すると、どうなるの?
~先ほど冒頭で紹介した記事の題名の様な事が、可能性としてあります。つまり、今までは金利のみの支払で猶予をもらっていた方々の所にある日突然、来月からは通常の支払額になります。という様な通知が届き「支払猶予」は無くなってしまいます。
■どうなるのでしょう?
~経済的に回復して、通常の支払でも耐えられる体力が復活した家庭なら心配はいりませんが、体力が復活していないご家庭では大問題です。完全に支払いが出来ない状態になります。これは予測ですが、現在の日本の経済状況から言えば、支払が出来ない世帯の方が、圧倒的に多いと思います。
■支払が出来ないと、どうなるの?
~下記を参考にして下さい。これ以外のやり方は、ありません。
①ローンの残債(残りの金額)を一括返済する。
~一応選択肢としてありますので書きましたが、そもそもコウユウ方は全体の1%もいらっしゃらないと思います。でも、出来るのでしたら見直しも含めて検討してみてはいかがでしょう?
②「ローン残債」<「自宅の売却価格」の方
~まずは、家計の改善の為に住宅ローンの見直し、不動産の売却を考えましょう。実際、モラトリアム法の適用を受けなければ回避できない家計状況だったのでしょうから、もったいないですね。その上、金利支払いだけで元本が減っていない状況ですから、目に見えない金利蓄積などの損を考えたら…。
自分の住宅を持っていたいのでしたら、買い替えを考えましょう。もう一つ、年齢が若くて残債もそんなに大きくない方の場合、さきほど少し触れた、「住宅ローンの組み換え」も手段の一つにはなります。住宅ローンの支払年数が20年だった物を35年に組み替えるなど…。いずれにしても、借入先の金融機関に相談してみる価値はあります。借入先が不可でも、他の金融機関に相談するのも手ですが、②の条件と年齢、現在の収入状況が借入当時と変わっていない事が条件ではあります。
③「ローン残債」>「自宅の売却価格」の方
~正直にお話ししますと、かなり深刻です。この形でも、通常の住宅ローンの支払いが出来る方はいいのですが…。出来ない場合、売却しようとしてもマイナスが出る訳ですから、売却しても不足額を現金で用意できないと売却できません。この形態の場合「ローンの組み換え」も出来ないとは言い切りませんが殆どのケースで無理と思われます。すると、手段がありません。
出来れば、親御さんに相談してでも売却する事をお勧めします。売却する際に、不足するお金を手当できそうなら急いで行動した方が良いと思います。
■そんなに急がないとだめなの?
~このお話しは、厳しい話になります。まず、住宅ローンが払えなくなると金融機関から通知が来ます。この通知は、通知ですから普通に支払いの催促です。ここで支払いを行わずに3か月程経過しますと、督促状・催告書という形で催促がくるのと、住宅ローンの期限の利益の損失についての説明などが同時に通知されてきます。
この頃気を付けないといけないのが、固定資産税や住民税などの税金です。こちらを滞納し続けますと、自宅などの不動産にも「差し押さえ登記」が登記されてしまいます。売却などに不利ですから、気を付けてください。
【何を気を付ければいいか】
税金関係は、民間の金融会社に比べて「延滞」についても郵送での通知が主で、静かに・おとなしく感じてしまいますが、一定の期間「放置」していると、先ほどお話ししたようにイキナリ「差押え!?」となったりします。こうなってからは、延滞金の全額を支払わない限り「差押え」を取り下げてくれません。
非常に不利益をコウムりますから、先に手を打つ事をお勧めします。何をすればいいか? と言いますと、呼び出しの通知に従い役所などの納税課など(市区町村により名称が若干違う時があります)へ出頭して納税相談を定期的に受けましょう。この段階なら、家計事情や収入事情を聞いてくれて、全額完済が無理なら月々○万円とかの分割の相談に乗ってくれます。
更に、相談どうりに支払い・定期的な出頭を繰り返している状況なら「差押え」など全く心配する必要がありません。
つまり、放置状態が最悪のシナリオになります。面倒がらずに、絶対に納税相談に行きましょう。ほんとですよ!!
話が飛んでしまいましたが~金融機関により多少の差がありますが、3~6か月で「代位弁済」という状態になります。これは、債権者が住宅ローンの金融機関から保証会社に代わってしまった。という事で、住宅ローンの期限の利益を損失するので、分割払いは出来なくなり、ローン残債の一括返済しか出来なくなります。
その先は、放置し続ければ「競売開始決定の登記」がなされて、競売!となってしまいます。因みに、競売になってしまうと…。売却される不動産は、市場価格の6割前後の金額で売却されてしまうので返しきれないローン残債は、債務として残ってしまいます。
放置しない場合は、「任意売却」と呼ばれる形で、どちらにしても売却ではありますが、普通の売却に近いので残る債務はこちらの方が有利にはなります。ただ、売却金額の決定権は「保証会社など」が持っていますし、その会社と条件交渉などをいろいろしなければいけません。
なので個人的に「任意売却」を進める事は非常に難しいです。信頼できる不動産会社に、それも「任意売却」の知識や経験の豊富な信頼できる不動産業者に依頼しないといけません。と、ちょっとゾッとする話ではありますが、本当の事です。先ほど説明した様に、時間経過とともにステージは確実に進んでいってしまいますので、該当する方は一人で悩んでいてはいけません。
③に該当する方は、今すぐにでも行動してください。多分、「専門家」なんていう人たちはこんな時の為いるんですから、上手に利用して、不必要な心労・ストレスから自分を解放しましょう。ちょっと怖い話でした。
この記事を書いた人
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