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“駅近”物件 実は地盤が弱い? 地盤から考える安心・安全な住宅とは(2/2ページ)

小川 純小川 純

2022/02/25

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「地歴」を知ることが対策につながる

この試験では、どういったことが分かるのだろうか。

「地盤や建物には固有周期というものがあります。例えば、熊本地震では長周期地震動というものが観測され、建物によってはこうした揺れによって倒壊してしまうものもあります。そこでこれをデジタル的に数値化。家の健康診断を行い、耐震工事などに役立てられます」(伊東さん)

また、同社ではこうした調査をもとに構造計算、建物倒壊シミュレーションを取り入れた耐震リフォームを実施。地震災害対策を行った建物に対して、10年間5000万円の地盤補償を付帯した「地盤ロングライフ補償」というものも展開している。

同社ではこれらの調査をセットにしたサービスとして、「3ZERO計画」というものを打ち出している。

1つ目は〈豪雨事故ZERO〉だ。国土交通省や各自治体では地震や洪水に備えたハザードマップが用意されているが、このハザードマップの情報を統合。将来、起こる可能性のある浸水、土砂崩れを見極めるという。

2つ目は〈震災事故ZERO〉。これは地盤の「微動探査」を行い地盤の揺れやすさを見極める。

そして、3つ目は〈不同沈下事故ZERO〉だ。 「不同沈下」とは、建物が斜めになるなど不揃いに沈下を起こすことで、これを一定の荷重がかかったときにどの程度沈下するかを数値データにする「SWS試験」を行うことで地盤の強度を掴み、地盤の弱さや液状化を防ぐ手だてを考える。

駅から遠いほど地盤は安心・安全

こうした「地盤の対策を行うことで、賃貸住宅の安心・安全をアピールすることができる」と山本さんはこう話す。

「実は駅の近くというのは、地盤がよくないところが多く、逆に駅から離れていくほど地盤がよいところが多いのです。ですから、駅から離れた物件では、地盤の調査をしたうえで、そうした安心・安全をアピールすることができます。とくにお子さんやお年寄りがいる家庭には、こうした安心・安全を重視するので、訴求力になるのではないでしょうか」

また、コロナ禍だからこそ地盤のよさをアピールできるという。

「テレワークが進み都心から郊外に転出する人が増えています。そこで郊外の地盤のよいところが注目されます。都心でもよいところはありますが、標高で見ると都心は30メートルがMAXになります。都心から離れるほど標高が高くなります。なかでも、地盤から見ると埼玉県は安定していて、所沢で標高60メートル、飯能では100メートルになります」(山本さん)

埼玉県以外でも地盤のよいところには共通点があるという。

「今から50年~60年前に造られた古いゴルフ場があるところは安定しています。その理由は、造成工事が難しいため、平坦なところに作ったからではないかと思います。また、こうしたゴルフ場は高速のインターから近いところも多いのでアクセスの面からも便利なところが多い」(山本さん)

地盤の観点からも見逃せない空き家

さらに大きな社会問題になっている空き家についても、地盤の観点から見ると、見逃せないという。

「古い空き家があったところは、地盤を観点に見ると、価値があるかもしれません。つまり、そこは昔から今まで家が壊れず建っていたという証拠。これら古い空き家や寺社などが維持されてきたということは、地盤の健全性が高かったとも言えるでしょう。古い空き家も放置せずに見直してみる価値はあると思います。家は古くなると価値が下がってしまいますが、地盤は古ければ価値が上がってくる。ただし、それに該当するのは、50年以上前の空き家です。直近30年以内に建てられた家は、建設技術力が上がっているため、どんな場所でも家を建てられるようになっているのでこれには当てはまりません」(山本さん)

しかしながら、地盤のよさは、永遠ではないという。

「地盤にも経年劣化というものがあります。周辺の建物、道路や大型施設ができることで変わることがあります。昔は周りには何もない一軒家だった周辺に、たくさんの家が建つことでも変わります」(山本さん)

何年かに一度は自分の持つ物件の地盤を確認することが必要ということだろう。まずは、無料でできる「地盤カルテ」で確認してみてはどうだろうか。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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