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「時代の証言」本当にあったひどい話 あの頃、賃貸生活は(賃貸業界も)ヤバかった…  (2/2ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/10/29

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例えば、私の住んでいたアパートの場合、「廊下の蛍光灯が切れました」と管理会社に電話で告げても、交換まではほぼ3週間以上待たされるのが普通だった。それでも、当時周りの話を聞けば私のところなど比較的甘い方だった。「そもそも一度の電話で済んでいるケースの方が珍しい」と、羨ましがられてしまう有様だった。

なので、地方から転居してくる入居者に物件の鍵を渡す日、店番が自分ひとりであるにも関わらず入り口を閉めてブラブラ買い物、客の引っ越しを半日以上遅らせて悪びれる様子もない管理会社の支店長……と、その程度の話ならば、ごくごく些細な、よくある事例にしか感じられなかったものだ。

心を削る「いかがわしいチラシ」


当時はいかがわしいチラシが郵便受けにどっさり/©︎nobilior・123RF

「帰宅すれば郵便受けには毎日何枚ものチラシ。しかもいかがわしい写真だらけ」……90年代の都市部の単身用賃貸物件ではあたりまえの風景だ。

いかがわしいチラシとは、主に違法なアダルトビデオソフトを宣伝するものをいう。大っぴらには販売できないこれらの商品を宅配する業者が当時は無数に存在し、大量のチラシを撒いて注文を集めていた。

そうした、子どもには拾われたくないタイプのチラシが、空室の郵便受けからあふれ出たり、入居者が床に捨てたりしたところに、管理会社やオーナーの怠慢が重なると(数カ月にわたり掃除に来ないなど)、景色は実に殺伐としたものになる。当時は、あちこちのアパートやマンションで、そんな心を削る風景が展開していた。

一部のオーナーが背負っていた古い時代の影

忘れもしない91年のこと。あるアパートオーナーにこんな悩みを聞かされた。「長く住んでいる入居者をどうにか追い出したい」。理由はその女性入居者が「40歳を過ぎた」から。それ以外に彼女には何の落ち度もない。

しかし、オーナーはこう言うのだ。

「そもそも30過ぎのオバさんが1人で入居してきた時点でオレは嫌な予感がしたんだ。それが案の定、40になっても結婚しないで1人で暮らしているのだから、おそらく今後も独身だろう。いつまでうちのアパートに居座られるのかわかったもんじゃない。部屋で自殺でもされたらたまらないよ」

これを聞き、「一体この人は何を言ってるんだろう?」と、混乱する人がいまは多いだろう。しかし、91年といえばまだ平成3年だ。当時のオーナーといえば、要はつま先から眉毛まで、どっぷりと昭和の文化に浸かって生きてきた人たちだ。

人種や職業、性別、年齢のみならず、国内であっても出身地方によって差別をしたり、謂れのない警戒感をもったりするなど、古い時代の感覚を悪気のないまま持つ人が、いまの数倍、あるいは十数倍規模で存在していた。

そうした差別や偏見に遭った人たちの怒りの声を住宅情報誌のバックオフィスにいながら数年にわたって直接電話で聴かせてもらっていたひとりが、若き日の私だ。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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