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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

敷金と保証金、申込証拠金と手付金…秋の夜長に考える「似て非なる業界用語」のあれこれ(4/4ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/10/16

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よく聞く「被疑者と容疑者」「被告と被告人」の違い

法律家の間では笑い話となって久しいと聞くが、未だにメディアではその違いと意味を理解せずに使い方を間違っているにも係わらず、堂々と公共の電波に乗せて拡散し続けているのはどうしてだろう。殆ど毎日、マスメディアの報道番組やニュース、ワイドショーの果てまで、耳にしない日は無いほど使われている言葉。拙者が初めてこの疑問に触れたのが昭和59年に初版された、今は亡き弁護士で作家の和久俊三氏が出した『法定生態学』という書籍だったと思う。

先日、衆議院が解散された。これからまた騒々しい2週間が始まる日本列島だが、現職国会議員として4度逮捕・起訴され、統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件の単純収賄と証人買収等では、9月7日に東京地裁の有罪判決を受けた秋元司衆議院議員(当時)に関する新聞各社の記事やニュースに、『秋元被告に懲役4年の実刑判決!』の文字が躍っていた(秋元氏弁護団は即日控訴)。これはれっきとした刑事事件だから、被告ではなく被告人だろう!

被告は民事事件の裁判で訴えられた側を言い、訴えた側は原告である。因みに判例集などでは原告をX、被告をYと記述する。

不動産の世界では民事裁判は日常茶飯事だから、所属する団体に寄せられる苦情案件にも裁判所の判決文や、和解調書などが添付されていることもしょっちゅうだ。民事は事実関係が明らかになって被告が勝訴することもしばしば。

だから被告だろうが原告だろうが、どっちが良いとか悪いとかの先入観は持たないのだが、メディアの影響でか、どうも訴えられた側は犯人、加害者だと言われているようなプレッシャーを感じるようだ。「被告って、気分が悪い!」と、開口一番、相談員に吐露する業者さんはけっこういる。


被告、原告、どちらが良いとか悪いとかの先入観は不動産業界にはあまりない/©︎freehandz・123RF

一方、刑事裁判では原告は常に検察官であり、逮捕勾留期間中に容疑が固まり、検察庁に送致後起訴するかしないかが判断されるのだが、起訴される前までは被疑者、されたら被告人と呼称が変わるのだ(刑事訴訟法37条の2等、60条等)。しかし、容疑者という言葉は法律にはなく、マスコミ用語として定着しているようだ。一説によれば、被害者と被疑者が紛らわしいので、起訴されるまでを容疑者と称し、被告人は文字数の関係と言い易さで被告と表現している、らしい。

秋の夜長に、似て非なる言葉を探求するのもまた楽しい。

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/公益社団法人全日本不動産協会・公益社団法人不動産保証協会・一般社団法人全国不動産協会 理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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