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スルガ銀行不正融資に見る 賃貸住宅「建築基準法違反」の実態(3/3ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2021/10/08

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建物を建築する際、行政に申請するわけですが、図面など必要書類を揃えて、ここでは法律に則って、1階を住居や店舗ではなく駐車場として申請。駐車場であれば容積率に含まれないので、申請通りであれば、その部分を除いた面積が延べ床面積なり規制内として許可されます。

しかし、実際の建築では1階部分は駐車場ではなく住宅や店舗として建築するというわけです。調査の結果、こうした容積率を超えている建物が2割以上あったのです。

不正を見抜けない役所の事情

なぜ、こうしたことが可能になるのか。

役所は巡回で調査はしません。そもそも全てを調査する人材は役所にはいないため、できないというのが実態です。また、確認申請だけでは、いつ建物が建てられるかは分からないため、これも調査しない理由になっています。もちろん、建物が建てられた時点で、建築主は完了検査を依頼する義務はありますが、罰則はありません。

つまり、性善説にたって処理されているわけです。ただ、一般の住宅では、この検査を受けて検査済証を取得しないと公的融資が実行されないので、キャッシュでもない限り建設できません。

しかし、デベロッパーなどでは、公的融資を受けるわけではないので、実務上は検査済証がなくても資金に問題がなければ、検査を受けず建てられてしまうというわけです。しかも、登記申請には建築確認許可は必要ありません。土地家屋調査士が作成した申請する図面があれば、法律違反でも登記されるのです。

さらにこのような建物であっても、賃貸に供する際の制約もありません。

賃貸マンションでは、一部屋でも多ければ収入が多くなるのですから、違反だと指摘されなければ購入者にとっては“ありがたいこと”になってしまうわけです。

つまり、こうした法律の抜け道を使って、違法な建物が建てられてきたのです。本来、建物を売買するときには、重要事項説明をしなくてはなりません。この時点で、建築基準違反であると買い主に気付かれてしまえば、契約不成立か、あるいは大幅な値引きを要求されるでしょう。言い換えれば重要事項説明のときにバレなければ、どうにでもなるということなのです。

こうした不正をどう見極めるか。

一言でいってしまうと、内容と実際の物件が合っているかを確認することです。そのもっとも簡単な方法は、地域の行政の建築指導課(自治体によっては名前が違います)に問い合わせするだけです。仮に、こうした不正が発覚した場合は、建築士など専門家に相談するしか解決方法はありません。

スルガ銀行の不正融資では、こうしたさまざまな抜け道が使われていたのです。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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