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「空き家率13.6%」をあらためて考える―― “空き家調査”から見えてくるもの

小川 純小川 純

2021/03/26

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イメージ/©123RF

増加数は鈍化 しかし、実態は?

5年に1度、総務省が行っている「住宅・土地統計調査」。直近の調査は「平成30年住宅・土地統計調査」として、2年前の2019年4月16日に発表された。

それによると総住宅数は6242万戸と前回調査(平成25年 住宅・土地統計調査)に比べ、179万戸・3%増加。都道府県別にみた増加数は東京都が31万戸、神奈川県が15万戸、千葉県が14万戸、埼玉県が12万戸と1都3県で全国の4割を占めている。

一方、空き家については846万戸で前回調査から26万戸、率にして3.2%増加した。総住宅数に占める空き家の割合は13.6%で、前回調査より0.1ポイント上昇している。
 
空き家の内訳を種類別にみると、「賃貸用の住宅」が431万戸(総数の50.9%)、「売却用の住宅」が29万戸(同3.5%)、「二次的住宅(別荘など)」が38万戸(同4.5%)、「その他の住宅」が347万戸(同41.1%)となっている。

前回調査に比べると、「賃貸用の住宅」2万戸(0.4%)の増加、「売却用の住宅」1万戸(4.5%)の減少、「二次的住宅」3万戸(7.3%)の減少、「その他の住宅」29万戸(9.1%)の増加という結果になった。前回調査では全国の空き家の数が800万戸を超えたということで衝撃的なニュースとして伝えられたが、平成30(18)年の調査は、当時、令和の幕を開ける直前ということや、大型連休を目前にしていたこともあってか、大きなニュースとして報道されなかった。

とはいえ、「実際の空き家の数は、公表されている数よりもかなり多いのではないか」と話すのは一般社団法人 空家空室対策推進協会 代表理事の川久保文佳さんだ。一般的には8軒に1軒が空き家といわれるが、「実感としてはもっと多い」と川久保さんは次のように話す。

「地方に視察に行くと10軒のうち3軒は空き家という感じで、人が住んでいない家が多いのです。また地方に実家のある50代ぐらいの方に話を聞くと、両親の実家2つともが空き家になっている、一人っ子の方のなかには、祖父母の家も空き家になっていて、1人で空き家が4軒もあるという人もいます」

都道府県別に空き家の状況をみると、空き家率のもっとも高いのは山梨県の21.3%、次いで和歌山県の20.3%、長野県の19.5%、徳島県の19.4%、鹿児島県の18.9%と山間部や大都市圏とのアクセスがよいとはいえない地域で空き家が多いことが分かる。

平成に入ってから、調査のたびごとに100万戸前後増加してきた空き家だが、今回の調査では増加数が減ったとはいえ、確実に増え続けていることに変わりはない。

そもそも空き家は15年2月から施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって、1年以上住んでいない、または使われていない家を「空き家」と定義された。そのうえで「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅」「その他の住宅」に4つに分類されているのだが、「数字にはあらわれてこない空き家があるのでは」と川久保さんは指摘する。

「『その他の住宅』の空き家というのは、賃貸用の住宅、売却用の住宅、二次的住宅以外の住宅で、例えば転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分の判断が困難な住宅などを含むとされていますが、空き家のなかで増えているのが『その他の住宅』に分類されているものです。今回の調査では29万戸増加していますが、施設などに入居して、実質的には空き家になっていてもカウントされていないものもあって、実態はもっと多いのではないかと思います」(川久保さん)

平成の30年間で2倍に増えた共同住宅

この「住宅・土地統計調査」では、空き家ばかりが注目されているが、もう1つ「住宅の建て方」の調査も見逃せない。

空き家ではない住宅は全国に5366万戸あって、その内訳は、一戸建が2876万戸(53.6%)、長屋建が141万戸(2.6%)、共同住宅が2334万戸(43.5%)になっている。前回調査と比べると、一戸建てが16万戸(0.6%)、長屋建が12万戸(9.2%)、共同住宅が126万戸(5.7%)とそれぞれ増加しているが、共同住宅の戸数が大きく増えていることが分かる。

この共同住宅の増加の伸びは、平成に入るとより大きく、平成の30年間で2倍以上増加している。この傾向は大都市圏でより顕著にあらわれており、都道府県別に住宅に占める共同住宅の割合を見ると、東京都の71.1%がもっとも多く、次いで沖縄県の59.0%、神奈川県の55.9%、大阪府の55.2%、福岡県の52.6%と続く。このことからも大都市圏への人口の流入、また大都市圏ほど核家族が進んでいることをうかがわせる。

さらに共同住宅の階数別の内訳を見ると、「1・2階建」の住宅数は624万戸(全体の26.7%/前回調査比36万戸(6.2%)増加、「3~5階建」は880万戸(全体の37.7%/前回調査比45万戸(5.4%)増加),「6階建以上」は830万戸(全体の35.6%/前回調査比45万戸(5.7%)増加。また、「6階建以上」の住宅のうち「11階建以上」は343万戸(全体の14.7%/前回調査比20万戸(6.0%)増加、「15階建以上」の高層住宅は93万戸(全体の4.0%/前回調査比8万戸(9.5%)の増加)となっている。つまり、共同住宅は“より高く”上へと伸びているというわけだ。

この「15階建以上」の高層住宅は東京都が25万戸ともっとも多く、次いで大阪府の20万戸、兵庫県の7万戸、神奈川県の6万戸、愛知県/福岡県の5万戸となっていて、そして、この6都府県で全国の7割以上を占めている。

しかも、この「15階建以上」の高層住宅は03年から18年までの15年間の増加数が60万戸と、およそ3倍に増加。都道府県別に増加数を見ると、東京都が17万戸と大阪府が12万戸で、この2都府で全国の増加数の約5割を占める。この数字からも2000年代に入ってからのタワマンブームに勢いを感じるが、これらのタワーマンションが同時期に修繕期を迎えることになるわけだ。

また、空き家の建て方別の住宅数の推移をみると、08年までは共同住宅の空き家数が急増している。1978年から08年までの30年で共同住宅の空き家は336万戸増加した。しかし、08年以降はこの増加幅が縮小し、18年までの10年間では、13万戸の増加にとどまっている。

とはいえ、本格的な人口減少が始まっていること、さらにはバブル期に建てられたマンションが築30年を超えることなどから、今後は共同住宅の空き家も増加に転じることが予想される。

パターン化した対策では見えてこない解決策

こうした空き家問題だが、いまだに抜本的な対策が立てられてはいない。

「個人ベースで空き家の活用方法はないかという相談はもちろんありますが、棟単位で複数のマンションを持っていて、それらが虫食い状態で空き家になってしまい、これをどうにかしたいといった相談もあります。コロナ前、うちではインバウンドへの対応をしていたので、民泊、簡易宿所、コ・ワーキング、留学生のための住まいというような外国人をターゲットにした転用で活用したいという相談が多かったのです」(川久保さん)

空き家対策にインバウンドは欠かせない。しかし、コロナ禍ではそれも厳しい。一方で地場に根ざした不動産業者でも、新たな動きが出てきていると川久保さんはこう話す。

「街の不動産屋さんというのは、これまであまり研究熱心ではなく、管理費をもらっているだけというところもありました。とくに地場の不動産屋さんは、地元の地主のオーナーさんとつながりも深い。そのため両者ともに高齢になって、とりあえずの収入があればいいと、双方ともにナアナアの関係で空き家があってもあまり気にしないということもありました。でも、ここにきて、こうした状況が少し変わってきています。なかでも不動産屋さんの世代交代がはじまってきていて、ただ管理費をもらっているだけのビジネスをしてもしょうがないということで、相談が増えているのです」

物件のオーナーや不動産事業者も空き家対策への意欲は高まっているものの、やはり対応の要になるのは自治体だ。しかし、自治体が打ち出す対策はパターン化しており、抜本的な解決策になっていないという。

「自治体の空き家対策は、最初に空き家の実態調査を行い、有識者委員会をつくります。そして、空き家バンクに登録する――ここまではどこの自治体も必ずやります。その後は、ほかの自治体で成功したものを持ち込むんですね。多いのは地元の人や高齢者の人が集まり趣味などを行う場としての活用。あるいは子ども食堂といったものです。“地域貢献”といって活動をする人を集めて、最初は補助金を出すのですが、運営するのはボランティアなので、補助金がなくなると続かなくなってしまことが多い。ただ、成功例をマネするのではなく、その地域に合ったものを、ビジネスとして成り立つようにしなくては、本当の空き家対策にはなりません」(川久保さん)

増加を続ける空き家――。その解決の処方箋はいまなお見えていない。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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