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『モンタナの目撃者』/ふたりの“女性ヒーロー”によるパニック映画とサスペンス映画(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2021/08/31

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11年ぶりにアクションを見せてくれたアンジェリーナ・ジョリー

『17歳のカルテ』(1999)でアカデミー賞助演女優賞を受賞し、近年は『マレフィセント』正続編(2014・19)で主演兼製作を務めるアンジェリーナ・ジョリーの最新作である。

森林消防隊員のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、ある日の勤務中、何かに脅える少年コナー(フィン・リトル)と遭遇。走り去ろうとするコナーを引き留めて話を聞くと、彼は父親を死に追い込んだ暗殺者に追われていると言う。

会計士だったコナーの父親は、ある情報を握っていた。その情報が明るみに出ると、少なからぬ有力者たちが窮地に追い込まれる。情報を握るもう一人の男はすでに殺されており、コナーは秘密を知るただ一人の生存者となったのだ。ハンナは暗殺者からコナーを守り抜く決心をする。

一方、コナーを追う暗殺者のパトリック(ニコラス・ホルト)とジャック(エイダン・ギレン)は、パトロール中だった保安官代理のイーサン(ジョン・バーンサル)を拘束し、コナーの追跡を手伝わせていたが、事件から警察の目をそらすため森林に火を放つ。ハンナとコナーは暗殺者だけでなく、自然の猛火からも追われることになった――。

欲張りな映画だ。森林火災という題材だけでも十分に1本のパニック映画が出来上がるというのに、迫り来る暗殺者から逃げるというサスペンス映画の要素を付け加えた。

映画の冒頭で、森林消防隊員たちの日常が描かれる。ハンナは粗野な男たちの中にすっかり溶け込んでおり、下品なジョークにもひるむことなく自然に応じている。彼らの絆は固く、チームワークもいい。

しかし、仲間からの信頼も厚いハンナは、閑職に追いやられているかに見える。彼女の見る悪夢でフラッシュバックされる過去の痛ましい事件が原因のようだ。ハンナはその事件に対応できなかったことを深く後悔し、心的外傷後ストレス障害に苦しんでいた。彼女がコナーを助けると決めた理由は、あの時と同じ後悔をしたくなかったからである。

暗殺者からコナーを守ることは、ハンナが障害を克服するためにも必要不可欠な行動であった。

暗殺者と猛火という二つの脅威から逃れるべく、ハンナは持ち前の運動神経と森林消防隊員としてのスキルを駆使し、立ち向かってゆく。かつてアンジェリーナ・ジョリーは『トゥームレイダー』正続編(01・03)でトレジャーハンター、『Mr. & Mrs.スミス』(05)と『ウォンテッド』(08)で殺し屋、そして『ソルト』(10)ではCIAエージェントを演じ、女性アクションスターとしての地位を不動のものにしていた。

彼女はその後アクションを封印していた感があるが、本作でおよそ11年ぶりに切れのいいアクションを見せてくれた。心的障害に苦しみながらも、大自然の脅威と凄腕の暗殺者の追跡から子どもを守る勇敢な女性を見事に演じている。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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