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『カツベン!』

遊び心と映画愛にあふた周防版『ニュー・シネマ・パラダイス』(2/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2019/12/06

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成田凌のしゃべり、周防映画ファンならわかる細かい仕掛け

主人公を演じるのは昨年『スマホを落としただけなのに』と『ビブリア古書堂の事件手帖』の演技で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、大ヒット作『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』にも出演した注目株、成田凌。厳しいオーディションを勝ち抜いただけあり、初主演映画とは思えない堂々たる存在感で映画をリードする。カツベンとしての喋りの技術にも感服した。

ヒロインは『あしたになれば。』(2015)で映画初主演後、多くの映画やテレビドラマで活躍する黒島結菜。このフレッシュなコンビを支えるべく、永瀬正敏、高良健吾、井上真央、竹野内豊、音尾琢真、小日向文世といった実力派キャストが脇を固めている。とりわけ注目すべきは竹中直人と渡辺えり。この二人は夫婦役で、役名が青木富夫と豊子なのだ。つまり、周防監督の傑作『Shall weダンス?』で二人が演じたキャラクターそのままで登場し、しかも結婚していたという仕掛けである。

周防映画ファンには嬉しい趣向だ。ちなみに、周防作品常連俳優の竹中直人は、他の周防作品でも青木という名の男を演じている。
他にも、日本映画黎明期を支えた監督である二川文太郎や「映画の父」として知られる牧野省三を物語に組み込んだり、『椿姫』(1921)や『金色夜叉』(1932)といったサイレント映画の名作を意外なキャストで再現したりと、遊び心と映画愛にあふれる作品に仕上がっている。周防版『ニュー・シネマ・パラダイス』である。

『カツベン!』
監督:周防正行
脚本・監督補:片島章三
出演:成田凌/黒島結菜/永瀬正敏/高良健吾/井上真央/音尾琢真/竹中直人/渡辺えり/小日向文世/竹野内豊
配給:東映
公式HP:https://www.katsuben.jp/
(c)2019『カツベン!』製作委員会

 

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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