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家賃返済特約付き【フラット35】とは?

住宅ローンが返済困難になったら? 家賃返済特約付き【フラット35】はこんなに使える!

横山晴美横山晴美

2017/05/11

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住宅ローン返済が困難になったらどうする?

住宅ローンを組むときに多くの人が心配するのが、将来にわたってきちんと返済を続けていけるかどうかという点でしょう。そんな不安に応えてくれる制度が、【フラット35】にあるのをご存知でしょうか? それが、家賃返済特約付き【フラット35】です。

これは、住宅ローンの返済が困難になったとき、マイホームを賃貸に出して、その家賃を住宅ローンの返済にあてることで返済を続けていける制度です。

通常、住宅ローンの返済が困難になった場合、まず取るべき対策としては、金融機関に返済額の軽減を申請する、もしくは返済期間の延長を申請することがあげられます。どちらも金融機関に認めてもらえば、月々の返済額を軽減することはできますが、総返済額が増えてしまったり、返済期間が延びてしまったりというデメリットもあります。

そこで検討したいのが、マイホームを賃貸に出して、その家賃を住宅ローンの返済にあてるという方法です。ただ、マイホームを賃貸に出すのはそう簡単ではありません。

まず、住宅ローンが残ったマイホームを賃貸に出すためには、融資を受けている金融機関の承諾が必要ですし、入居者が見つからない、入居者が退去してしまうという空室リスクもあります。

また、賃貸契約は普通借家契約を結ぶのが一般的ですが、普通借家契約の場合、いったん賃貸に出してしまうと、マイホームに戻りたいと思っても、こちらの都合で簡単に退去してもらうことはできないというデメリットがあることも無視できません。

(関連記事)
リストラで住宅ローン返済ができなくなったらどうする? これだけは知っておくべき4つの対策

家賃返済特約付き【フラット35】とは?

このようなリスクやデメリットに対応できるのが、家賃返済特約付き【フラット35】です。

もし返済が困難になった場合に、「移住・住みかえ支援機構(JTI)」の「再起支援借上げ制度」を利用できる特約がついた【フラット35】だと考えるとわかりやすいでしょうか。

再起支援借上げ制度とは、住宅ローンの返済が困難になった場合、JTIの「マイホーム借上げ制度」を利用してマイホームをJTIに借り上げてもらい、その家賃で住宅ローンの返済を行なうことができる制度です。

実は、通常のJTIのマイホーム借上げ制度の場合、利用できるのは50歳以上に限られているのですが、再起支援借上げ制度では利用者の年齢が問われることはありません。つまり、利用するための年齢制限はないのです。

さらに、いったん入居者(JTIが借り上げた家を転貸するので、正確には「転借人」となります)がつけば、その後、入居者がいなくなっても、JTIが一定の家賃を最低保証として支払い続けてくれます。ちなみに、賃料はJTIから直接、【フラット35】を運営する住宅金融支援機構に支払われ、ローンの返済にあてられます。

また、賃貸契約は「定期借家契約」になるので、契約期間(原則として3年間)が満了すれば、契約を更新することなくマイホームを明け渡してもらうことができます。

つまり、家計が安定してローン返済を続けていける見通しが立てば、契約を更新せずにマイホームに戻ることができるということです。これは、普通借家契約とは異なる大きなメリットと言えるでしょう。

家賃返済特約付き【フラット35】のメリットは?

改めて家賃返済特約付き【フラット35】のメリットをまとめてみましょう。

(1)マイホームを借り上げる機関(JTI)が決まっている

(2)一度でも転借人がつけば、空室になってもJTIが一定の家賃を保証してくれる

(3)定期借家契約なので、マイホームを明け渡してもらえないということがない

自分でマイホームを賃貸に出すと、入居者が見つからないということも考えられます。当初から借入先が確保されているのはうれしいですね。

適用の流れはどうなっているの?

続いて、家賃返済特約の適用の流れを見ていきましょう。

まず大前提として、【フラット35】に申し込みをする時点で、特約についても申し込みをしておかなければならない点を知っておいてください。【フラット35】の申し込み前に制度の内容を理解して、利用するかどうかを決めておきましょう。

ただし、住宅ローンの返済が困難になったからといって、すぐに家賃返済特約の適用を受けられるわけではありません。適用の条件を流れにそってご説明しておきましょう。

(条件1)返済困窮者特例措置の条件に該当していること
まず、返済が困難になった債務者(住宅ローンを借りた人)が金融機関に適用を申請します。適用を受けるには、収入が一定の基準以下になった場合、失業した場合など、住宅金融支援機構が定める返済困窮者対応特例措置の条件に該当している必要があります。

返済困窮者特例措置の条件を満たすと、「最長15年の返済期間の延長」、「最長3年間の元本据え置き期間の設定」、「据え置き期間中の金利引き下げ」といった毎月返済額を軽減する特例措置を受けられます。困窮の度合いが深いと、より多くの特例措置を受けることができます。

(条件2)JTIが最低保証する家賃でローン返済が続けられること
返済困窮者対応特例措置の条件に該当していれば、住宅金融支援機構はJTIに賃料査定を依頼します。この査定賃料をもとにJTIが最低保証する賃料(実際の受け取り賃料=JTIの査定賃料の85%が目安)が決められるのですが、このとき、「特例措置後の毎月返済額≦JTIが最低保証する賃料」となっているか、つまり、JTIが最低保証する賃料で、ローンを返済していくことが可能かどうかが審査されます。

最低保証賃料が毎月返済額を下回るなど、返済継続ができないと判断されると適用されないこともあります

(条件3)耐震性など借り上げ住宅としての基準を満たしていること
賃料査定と並行して、JTIが耐震性など住宅の性能を審査し、借り上げ住宅としての基準を満たしているかどうかを判断します。

こうした条件を満たすかどうかが審査され、最終的に、住宅金融支援機構が家賃特約の適用を決定し、ローン契約者に通知します。上にあげた条件のほかにも、住宅ローン返済を滞納していないことなども条件になるので、特約の申し込みを決める前に条件について説明を受けるなどして内容を把握しておきましょう。

このように、必ずしも家賃特約が受けられるわけではありませんが、無条件に適用してしまうと制度そのものが成り立たなくなってしまうので、一定の条件が求められるのはしかたないところと言えるでしょう。

きちんと返済を続けていたにもかかわらず、失業や収入の減少などによって返済が困難になった場合に適用される救済措置のようなものと考えてみてはいかがでしょうか。

特約を活用すると返済負担はどれくらい軽減できる?


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では、家賃返済特約を活用することで、どの程度のメリットが得られるのが見ていきましょう。

先ほど、特約適用の条件のところで、返済困窮者特例措置に該当すると毎月返済額を軽減する特例措置を受けられることをご説明しました。この特例措置には、困窮度合いに応じて次の3段階があります。

(1)最長15年の返済期間の延長

(2)最長3年間の元本据え置き期間

(3)据え置き期間中の金利引き下げ

(1)に比べると(2)(3)の要件は厳しいため、ここでは適用されやすい、「(1)最長15年の返済期間の延長」の措置を受けた場合を想定して、シミュレーションしてみましょう。

【当初借り入れ条件】

借入額 3000万円   借入期間 35年

適用金利 2%    毎月返済額 9万9378円

上記の条件で、借り入れから10年が経った時点で返済が困難になったケースについて考えてみましょう。借り入れから10年が経った時点での住宅ローン残高は2344万6504円です。この時点で、本来の住宅ローン返済期間は25年ですが、10年間の返済期間延長を受けたとします。

【返済期間延長後の条件】

借入額 2344万円(※)   残りの借入期間 35年

適用金利2%   毎月返済額 7万7674円

(※1000円以下は切り捨てとします)

毎月返済額が2万円以上、軽減されました。

仮に借り上げ賃料(JTIの査定賃料)が9万円であれば、JTIの最低保証賃料(実際に受け取る賃料)は7万6500円となり、毎月返済額をほぼ賃料収入でまかなえることになります。

借り上げ賃料が9万円より低く、賃料だけでは毎月の返済額をまかなえない場合でも、不足分を補てんできるのであれば特約を利用する意味は十分にあると言えるでしょう。

マイホームを賃貸に出している間の住まいはどうする?

ただし、マイホームを賃貸に出すのであれば、その間の住まいを確保しなければなりません。賃貸住宅に住むのであれば、家賃負担を考慮する必要があります。

もちろん、家賃が安い家を借りられる、もしくは実家を頼って移り住むことができるといった場合には、十分、家賃返済特約付き【フラット35】を利用する価値はあると言えるでしょう。

また、この制度はあくまで【フラット35】に付与される特約です。ベースにあるのは【フラット35】であり、全期間固定金利であることや審査基準などは変わりません。

【フラット35】は近年、低金利化が際立っています。家賃返済特約を検討する際は、【フラット35】そのものの魅力にも注目したいところです。

(関連記事)
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家計が立ち行かなくなる前に、早めの相談を

ここまで、家賃返済特約付き【フラット35】について見てきましたが、【フラット35】を利用するならば、つけておいて損はない制度と言えるでしょう。

ただし、毎月の返済が賃料で相殺される制度であり、住宅ローン返済が免除されるわけではないということを忘れてはいけません。また、自分たちの住まいは別途確保する必要がありますし、この特約を利用すれば必ずしも生活が楽になるとは言い切れません。

住宅ローンはあくまでも、無理なく返済を続けられる条件で借り入れをすることを心がけ、もしもの場合に備えて、家賃返済特約付き【フラット35】を選択しておくと考えることが大切ではないでしょうか。

なお、この特約の適用を申請してから、適用が認められ、実際に賃料が入ってくるまでには数カ月のタイムラグが発生する場合があります。入居者が見つかるまでに時間がかかることもあります。返済が困難になって、家計がどうにも立ち行かなくなってしまう前に、早めに金融機関に相談することをおすすめします。

(参考記事)
住宅ローンの返済と子どもの教育資金で家計を破綻させない5つの方法
収入と返済能力があっても借りられない? 中古住宅購入で住宅ローンが使えない4つのパターン

 

 

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この記事を書いた人

ライフプラン応援事務所代表

ファイナンシャルプランナー(AFP)、住宅ローンアドバイザー。企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げて以降、住宅相談を専門に扱う。マイホーム相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。相談業務のほか、セミナー講師、執筆業など情報発信、啓蒙活動にも力を入れている。 「自分の家計は自分で守る」をモットーに、丁寧でわかりやすい面談が好評。 また、給付金や控除など、消費者のための制度を調べるのが得意で、「ここが使いにくい」「誰のための制度なのか」などとケチをつけるのが好き。

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