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有料化と手数料の徴収、銀行口座のデジタル化のポイント

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2021/06/21

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写真/編集部

デジタル化が進むなかで、銀行もネットバンキングのサービスに力を入れる一方、スマートフォン1つで預金や融資を受けられる「スマホ銀行」も登場し、これまでの通帳とハンコを使って管理する銀行口座のあり方が変わりつつある。これを機会に銀行口座の整理を考えてみてはいかがだろうか。

口座の整理をすると、自分の金融資産が可視化できるうえ、年齢を重ねた人であれば、相続の準備にもなって一石二鳥だという。

ネット調査会社マイボイスコムによるアンケート調査によると、利用している銀行郵貯の口座の所有数は1口座/8.6%、2口座/17.0%、3口座/23%、4口座/17.4%、5口座/14.1%と3口座を使い分けている人がもっとも多いという。いずれも休眠口座を除いた数字なので、これに休眠口座も含めると、その数はさらに増えることになることは容易に想像がつく。

所有している銀行口座数

出典/「マイボイスコム」2021年4月調査より

仮にあなたが亡くなった際、家族へ迷惑をかけないためにも増えすぎた銀行口座の整理はしておいたほうがいいだろう。

そこで銀行口座の整理をメリットから繰り越し通帳の保管に関する落とし穴、ネットバンキング利用の注意点まで、銀行口座の活用について見ていきたい。

有料化が進む銀行口座の現状

ゼロ金利政策が続き銀行の収益が厳しくなるなか、都市銀行をはじめとして、「紙の通帳の発行や繰り越しに対する手数料の有料化」や「数年間取引実績のない銀行口座(利用実績のない口座)に対する手数料」が新設されている。

具体的には、みずほ銀行は「2021年1月18日以降に新規で口座を開設する70歳未満の人」を対象として、新規の通帳発行時と繰り越し時、紙の通帳1冊につき1100円が手数料としてかかることを発表した。

三井住友銀行も「2021年4月1日以降に新規で口座を開設する18~74歳未満の人」を対象に、年間550円の手数料を新設。こちらは、紙の通帳を何冊繰り越しても、それ以上の手数料は取られない。同行は、さらに2年間の入出金がない「未利用口座」に対して、年1100円の手数料を徴収するようになった。

三菱UFJ銀行も21年7月以降に開設した普通預金口座で2年以上利用がない場合、年1320円の管理手数料を徴収すると発表している。

さらに共同通信の報道によれば、20年12月の「全国地方銀行協会と第二地方銀行協会に加盟する銀行全100行のうち、約3割に当たる27行が、出入金がない休眠状態の預金口座に管理手数料を課す制度を導入済みか、導入を決めている」という。もはや「紙の通帳の有料化」と「未利用口座」の手数料は既定路線なのだ。

利便性重視なら1口座ですべてを管理

銀行口座の整理とはどのようにすればいいのか。

まずは、利用している銀行の通帳はもとより、タンスの奥などに眠っている銀行の通帳をかき集めて、どの銀行に口座があるのか、残高はあるか、どの銀行口座からどんな引き落としがされているのかをしっかり把握することが、銀行口座整理の第一ステップになる。そして、休眠口座は、この際、解約手続きを進めておきたい。

そのうえで給料や年金など、メインの収入が入る銀行口座と水道光熱費など、公共料金の引き落とし口座が分散しているようであれば、同じ口座にまとめるのも、1つの方法だ。

「公共料金の口座に残金がなくて、電気や水道がストップしてしまうお年寄りは意外といます。入金のある口座にしておけば、ライフラインが止まることを防ぐことができるし、コロナなどで急に入院することになってしまい、家を空けることになっても、誰かに振り込みを頼まなくて済みます」(ファイナンシャルプランナー)

この方法は年金受給者の人にはおすすめだという。公共料金や家賃のほかにも、クレジットカードや携帯電話の利用代金、スポーツクラブなどの年会費や新聞の購読料、通信販売の定期コースなど、口座振替にしているサービスは意外と多い。この際、これらの支払いを再チェックし、不要と判断したものは、入金口座の引き落としへ切り替える前に解約も検討すると無駄な出費をなくすことにもつながる。

利便性より管理重視なら複数口座で

口座を1つにまとめるというやり方以外にも、メインとサブの2口座、あるいは3口座に分けて管理する方法もある。

銀行口座を複数持つ場合のポイントは、それぞれに目的を持たせることだ。具体的には、お金の「入」と「出」を分けるという方法でもある。こうすることのメリットは、入金と出金を分けることで、お金の出入りを銀行口座で管理することができる。これに預金専用の3つの口座にするとさらに分かりやすい。

例えば、毎月の入金をA口座、支払いをB口座、預貯金をC口座と分けることで、日常の支出はA口座からB口座、大きな買い物をしたり、イレギュラーな出費はC口座からB口座と使い分けることで、通帳を見るだけで、現状のお金の動きや残高といったキャッシュフローをつかむことが容易になる。

とはいえ、この方法では別々の銀行だと振込の手数料が気にかかるところ。しかし、少々手間はかかるがATMで引き出して入金すればそれもかからない。コンビニATMであれば利用を無料にしている銀行も多く、そうしたATMを利用するのも1つ。また、三菱UFJと三井住友銀行の2行は店舗外ATMを共同利用しおり、引き出し、預け入れでの手数料はかからない。

また、メガバンクのネットバンキングを利用すれば同一銀行の支店間のやり取りなら手数料はかからない。さらに給与や年金の受取口座にしたり、預金残高によって振込手数料が無料になるなど優遇もある。

複数口座を持つことのデメリット

こうした銀行口座の管理をすることは、現金資産の把握ということもあるが、自分が亡くなった “後始末”において重要なのだ。

死後、その人の銀行口座は凍結され、現金を引き出せなくなる。しかし、19年7月から「預貯金の仮払い制度」が適用され、凍結された預貯金口座でも、死亡時の「預貯金残高×法定相続分×3分の1」、あるいは「150万円」を上限に出金することができるようになった。

この制度は金融機関ごとに適用されるため、預金がいろいろなところに分散されていると、預金額が少ないため、必要な額の預金を引き出せないということにもなりかねない。また、いくつもの口座に分散されていると、それぞれ申請しなくてはならないため手間がかかる。

こうしたことを避けるためにも口座はまとめておくことのほうが、家族にとっては便利なのだ。

口座のデジタル化の落とし穴

自分で管理できる口座を整理した後、大切な注意点がある。それは5年以内の通帳はきちんと保管しておくことだ。

「子どもなど家族が財産を相続しようとした場合、税理士から『亡くなる前の5年間の取引記録』を求められます。これがないと、子どもなど相続人が銀行に連絡して取引の明細を発行してもらうのですが、およそ1口座1万円。5行あれば約5万円かかってしまう。しかも、何度も窓口へ行かなければなりませんし、全て揃うまで2、3カ月かかることもあるので厄介なのです」

と話すのは、とある税理士だ。

繰り越した通帳はつい捨ててしまいがちだが、うっかりすると相続の際に余計な手間や出費、時間がかかってしまうというわけ。相続手続きの時間を短縮するためにも、繰り越した通帳は大切に保管しておきたい。

都市銀行をはじめ、地方銀行もネットバンキングを活用する方向へシフトしている。それならいっそネットだけにして通帳をなくすというのも1つの選択でもある。ただし、それには注意点がある。

ネットバンキングを活用すると「デジタル通帳」へ移行するため、通帳の手数料は発生しない。実際、口座の出入金記録をインターネットで、確認できるので銀行やATMにわざわざ足を運ぶ必要もない。しかも、取引記録は、みずほ銀行が最大10年分、三井住友銀行は最大30年分を見られることになっている。

しかしながら、ネットで見られるのは「デジタル通帳」へ移行した後の取引に関してのみ。それ以前の履歴は、紙の通帳で保管しておくことが必要になる。

意外と不便? ネット、流通系銀行の弱点

最近は「PayPay銀行」「楽天銀行」、「ソニー銀行」「SBI銀行」などの「インターネット専用銀行」や「セブン銀行」「イオン銀行」といった流通系銀行も人気だ。ところが、ここにもチェックポイントがある。

こうしたインターネット専用銀行や流通系銀行のなかには「PayPay銀行」「楽天銀行」は、公共料金、税金などの口座振替やペイジー(Pay-easy)などのダイレクト納付ができない銀行もあるので、事前に確認したい。ただ、こうした口座振替ができない銀行でも、税金や年金などを「クレジットカード払い」にしておけば、手数料なしで口座振替にすることが可能だ。

あらゆる分野においてデジタル化が進み、今後は資産管理でのデジタル活用が予想される。銀行口座の整理整頓は、こうしたことも踏まえた、自分や家族のために行う最も身近な資産管理の第一歩と心得ておきたい。

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この記事を書いた人

記者・ライター集団

政治、経済、ビジネス、マネーなどさまざまなジャンルを取材、執筆活動を行っているフリージャーナリスト、ライター、カメラマンなどによる叶舎LLC.の取材チーム。

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