うつ、統合失調症…「こころの病」に保険はどこまで対応できるのか?
内田 まどか
2021/06/11
イメージ/©︎olegdudko・123RF
まずは加入中の保険のチェックから
緊急事態宣言や在宅勤務の推奨など、人と会うことが難しくなっている今、こころの病を心配される方もいらっしゃるのではないでしょうか。自分や家族が精神疾患にかかってしまったら、対応してくれる保険はどのようなものがあるのでしょうか?
最初に現在入っている保険があれば、どのような場合、保険金が出るのか確認しておきましょう。
■医療保険
医療保険の給付金は、基本的に入院日数に応じ受け取ることができます。
最近の医療保険は一入院を30日や60日、長くても120日など短くする傾向にあります。平成29年度の厚生労働省「患者調査」によると、病院での平均的な在院日数は30.6日なので、一般的な病気ならおおよそ対応できるでしょう。しかし、精神および行動の障害に限った平均在院日数は277.1日にも及ぶのです。一般的な医療保険だけではまかないきれないと覚悟しておいた方がよいでしょう。
出典/平成29年 厚生労働省「患者調査」
■収入保障保険
病気やケガでの収入減を補う保険ですが、多くは「精神疾患はのぞく」となっています。新しく発売される保険のなかには精神疾患を対象にするものも出てきました。しかし、支払われ方は入院が30日続けば出る保険もあれば、症状が180日以上続かなければ出ない保険、障害等級2級以上でなければ対象にならない保険など各社さまざまです。どのような症状、もしくはどのような条件で保険金が受け取れるのか確認しておきましょう。
■死亡保険
死因が自殺による保険金の支払いについては、保険会社や保険の種類にもよりますが一般的に1~3年の免責期間が設定され、免責期間中は支払わないとされています。しかし、免責期間中であっても精神疾患が原因となって自殺したなど「意志決定能力が認められない」と判断されれば、保険金を支払われる場合があります。
■更新タイプの保険
更新前に病気になってしまったとしても、保険会社が定める年齢までは自動で更新されます。保障内容の減額はできても、増額や保障追加など、告知や審査を求められるような変更は難しくなります。
こころの病に対応した保険加入の前に
精神疾患の場合、入院は長期化する傾向にあり、再発リスクや一度病気になると「完治」が分かりにくいため、加入するにはかなり条件が厳しくなります。まずは市区町村が窓口になっている「医療費の助成」や「手当」、会社員であれば「傷病手当金」など、公的な制度でどこまでカバーできるのかを確認し、何に対しての保障が欲しいのかを整理しておきましょう。
一般的に5年以内に治療履歴があると、通常の保険に入るのは厳しいでしょう。
既往歴があったとしても入りやすいといわれる引受基準緩和型の保険でも、過去の給付歴などにより必ずしも加入できるわけではないようです。また、加入できる保険があったとしても、現在治療している病気は保障の対象外になったり、保険料が割増されたりといった条件が付く場合もあります。
どのような条件が付くのか調べるのと同時に、引受基準緩和型の保険や無選択型の保険の保障範囲や保障内容を調べ、自分が欲しい保障と合うかどうか比較してみましょう。がんだけを保障するがん保険であれば、精神疾患の既往症があっても加入しやすいところが多いようです。
まずは今、加入している保険があるのならばできるだけ生かせるようにし、解約や減額する場合は慎重に行いましょう。
元気なときは、なかなか病気などのことに向き合うことはないかもしれませんが、家にいることが多くなった今、一度、リスクに対してしっかり向き合って見直ししておきませんか?
この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
東京都出身。1997年にFP資格取得後、損害保険代理店・生命保険代理店・FP事務所を開業(現在、保険分野は他代理店と合併)。「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるための個人相談を中心に活動している。