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給与はマイナス、負担は2%アップ もはや日本は江戸時代と同じ「五公五民」

小川 純小川 純

2021/02/11

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イメージ/©︎mtaira・123RF

減る一方の可処分所得

新型コロナによる緊急事態宣言によって厳しい生活環境が続いているが、なにも生活が苦しくなったのは新型コロナだけによるものではありません。2000年代に入ってからというもの自由に使えるお金、いわゆる可処分所得は減る一方なのです。しかも、08~09年にはリーマンショックがあり、その傾向が一層強まりしました。

国税庁がまとめた「民間給与実態統計調査結果」によると、年収ベースで見たリーマンショック前の07年の全給与所得者の平均給与額は約437万円(男女合計/平均年齢44.1歳)でした。そして、08~09年のリーマンショックによって、年収はダウン。09年には約405万円まで下がっています。

そして、徐々にその金額を戻し平成の終わり19年に約440万円(男女合計/平均年齢46歳)となんとかリーマンショック前まで回復したものの、令和に入った途端、約436万円にダウンしています。

一方、税金や社会保障の支出に目を転じると、所得税、住民税(地方税)は大きく変わっていないものの、年金、健康保険料が大幅にアップしています。

具体的には、30年前の1991年と比較すると、厚生年金の負担は標準月額の8.4%(個人負担分は4.2%)だったものが、18.3%(同9.2%)と4%(個人負担分は2%)アップ。しかも、91年当時は、ボーナスからは年金、健康保険料の徴収はなかったのですが、これも取られるようになっており、年収ベースでの負担はさらに高くなっています。そして、2000年には介護保険が導入され、40歳以上になると、この保険料負担も増えています。

厚生年金の保険料率の推移

これに加えて、日常生活においては消費税が3%から10%になり、7%アップしているのですから、これでは可処分所得が減るのは当然と言えるでしょう。

では、社会保障費と消費税は1カ月あたり、いくら増えたのでしょうか。

年金は国民年金と、給与所得者の厚生年金の2つがありますが、前項の1991年を2021年を比較すると、当時の国民年金保険料は9000円から1万6540円へと増額。

年収600万円の東京の給与所得者の1カ月あたりの厚生年金、健康保険料負担額は次のようになります。

・厚生年金保険料(個人負担分)
 3万6000円→4万5750円(9750円負担増)
(※月収50万円/配偶者、扶養家族など控除はなし)
・健康保険料(介護保険負担あり)
 2万1000円→2万9150円(8150円負担増)

このように厚生年金と健康保険料の合計で1万7900円の負担増になっているのです。

ただ、前述のとおり、当時は厚生年金保険料と健康保険料はボーナスにはかからなかったのでその分の負担も増えています。

加えて日常生活においては、消費税が3%から10%になり7%アップしたことで、総務省の家計調査を元に計算した年収500~600万円の人の1カ月あたりの消費税負担はおよそ6200円から1万9417円(1万3217円の負担増)になります。

1世帯あたりの年間消費税負担額(万円)・消費税3%

1世帯あたりの年間消費税負担額(万円)・消費税10%

このように社会保険料と消費税による1カ月あたりの負担の増額は、およそ3万1117円になります。給与はマイナス傾向にあって、社会保障費の負担は増えるばかりでは消費が減るのは当たり前です。

財務省は毎年度、国民各層の税・社会保障の負担度をあらわす「国民負担率」を公表しています。その負担率は30年前の1991年度は37.4%でしたが、2020年度は44.6%に上がっています。江戸時代の重い税を象徴する言葉に「五公五民」というものがあります。現代社会は、江戸時代に比べ福祉が進んでいるとはいえ、この五公五民に着実に進みつつあるようです。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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