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心理的瑕疵とは——判例から見つけ方まで徹底解説(2/3ページ)

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心理的瑕疵物件発覚のきっかけは…大げさな近隣住民

入居しようとする物件に対して、もし、不動産会社や大家さんから心理的瑕疵物件という事実を隠されていた場合、それを知るきっかけはどんなことが考えられるでしょうか。例を挙げて見ていきましょう。

とある買主が、購入予定の物件を視察に行った際、近隣のお年寄りから声をかけられました。何やら気さくな様子でついつい話し込んでしまいます。しかしこのお年寄り、どうやら話を大げさに盛る癖があるようです。もちろん、買主はそんなことを知る由もありません。 

お年寄りはこう話します。「この物件では、ここ数年の間、病死や変死が続いている」とのこと。また、過去に殺人事件があった疑いもあると言うのです。そんなことを聞いてまでその物件に住みたいと思うはずもなく、買主は購入することをやめました。

実はこの物件、売りに出す前、家族が自宅で亡くなっていたのです。売主は不動産会社に売却依頼をし、運よくこの買主が見つかりました。

売主は、家族が自宅で亡くなったことなどさして重要な問題ととらえず、不動産会社にも買主にも伝えていませんでした。ですから、買主側がそのことを近隣のお年寄りから聞き、怒りながらキャンセルをしたのでした。

いったいこの迷惑(?)なお年寄りは何者?ということで、不動産会社が売主に確認すると、「話を大げさにする近隣の住民」ということが分かりましたが、もちろん取り引きはキャンセルされた後……。もう手遅れという事態に陥ってしまいました。

買主の立場としては、たとえ盛られた話であっても、「死人がいたという既成事実」を教えてもらえなかったということで怒るのは当たり前です。その物件は契約前にキャンセルされましたが、売買契約が成立した後だったら大変なことになっていました。

トラブル回避に大切なことはしっかりとした説明をすること

このように、一見問題なさそうなことが問題となるのが心理的瑕疵なのです。こんなことが起こらないように、売主・貸主はどのように行動すればいいのでしょうか。

やはりそれは、売主・貸主が買主・借主、あるいは関わる不動産会社に「できる限りすべてのこと」を説明し、契約書に記載することが大切になってきます。そうすれば、「説明したという事実=契約書に記載があるということ=買主・借主が確認したこと=署名したこと=了解した事実」ということになり、大きなトラブルは回避される可能性が高くなります。

心理的瑕疵におけるガイドラインについて

国土交通省が「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)」(以下、「ガイドライン」)を発表しましたので、その内容を少し紹介していいましょう。もちろん、このガイドラインは現時点の案ですので、以後変更があるかもしれませんので、ご注意ください。

裁判例

心理的瑕疵の不動産においての取り扱いについて、判例が多くありますので、簡単に説明したいと思います。

〇自殺があった物件に心理的瑕疵を認めた裁判例(横浜地裁 平成元年9月7日)
不動産取引において心理的瑕疵があるということは、対象となる建物が通常保有する性質に欠けるということですから、これは心理的瑕疵と言えます。

〇信義則上の告知義務を認めた裁判例(大阪高裁 平成26年9月18日) 
一般的に、賃貸借契約にて、対象となる建物で1年数カ月前に自殺があったという事実は心理的瑕疵に値します。貸主がそのことを知っていたのなら、この事実を報告する義務があるのは当然ですね。

しかしながら、実際の不動産取引の現場では、心理的瑕疵が疑われる物件において、それを買主・借主に告知するべき事実かどうか明確に判断することが難しいケースが多く、宅建業者の対応も曖昧なものでした。

そして、今までは、このように曖昧になりがちなケースにおいて、行政の介入はありませんでした。しかし、今回、国土交通省はこのようなケースに宅建業者がどのように対応すればいいかを示ししたガイドラインを発表したのです。

ガイドラインの対象となるのは?

不動産取引のあった物件で起きた「人の死」に関する事柄がガイドラインの対象となり、建物が取り壊された場合の土地取引や近隣の建物などに関する死亡事例はガイドラインの対象外となります。また、居住用の不動産のみが対象となり、オフィスや店舗などは対象外とされています。

告知が必要な物件は?

それでは、どのような場合に告知が必要になるのか見ていきましょう。

〇自殺や他殺、事故死などの原因がはっきり分からない場合の死亡事例 
こういった事例は、判例からみても紛争に発展しやすく、契約において重要な影響を及ぼす可能性があるため、告知義務があります。

〇不慮の事故、自然死、孤独死など、特殊清掃がなされた場合
不慮の事故や自然死などは予測可能であるため、告知の必要がないとされていますが、死体が長期間放置された場合に損害がひどく、特殊清掃が行われた物件である場合には告知が必要となります。

具体的にどのような内容を告知すべきか

発生時期や場所などを借主に報告する義務があります。特殊な理由がある場合を除いてはおおよそ3年間その義務があるとされています。その3年が長いのか短いのか、難しい問題かもしれません。

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この記事を書いた人

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