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為替と不動産の関係——ドル安・円高の可能性 そのとき日本の不動産価格はどう動く?(1/3ページ)

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イメージ/©︎Panuwat Sikham・123RF

「5月末からドル・円の為替相場が動かなくなり、為替ディーラーが手持ち無沙汰になっている」と東京の金融街で言われている。今、活発に動き回っているのはコロナによる世界的な金融緩和により、日本の不動産取得を目指す外資の景気のよいニュースだけのようだ。

ではなぜ、為替相場は政府の介入が入るほど激しく上下したり、凪のように動かなくなってしまうのか? 要因は日米の景気、物価動向、政府の予算規模、貿易収支などが影響しあっているからだ。

2020年末には「21年は円高の時代」との予測が多かったが、21年の上半期を振り返ると、春まで円安の要因が強く、現在は円高と円安の要因が打ち消し合い、1ドル=110円前後のボックス圏に入っているようだ。この先、円高になるのか、円安になるのか、不動産の切り口から考えてみよう。

不確定要素の多いコロナ後の為替相場

訪日客を待ち焦がれるホテル・観光・不動産業にとって、新型コロナワクチンの普及は、国際便復活(訪日客の戻り)に向けた朗報になるはずだ。しかし、この先のドル・円の為替相場の動き次第では、まだ手放しで喜べない。

コロナ以前から、日本の都心部・観光地では不動産利用においてホテル・宿泊向けの施設が増えており、不動産価格は訪日客からの需要(外需)にさらに依存するようになった。このため円高は、日本国外からの訪日客にマイナスに働く。観光・ホテル業は、外需依存という点で輸出産業と同じ悩みを抱えるが、「観光」を輸出することはできないし、不動産事業の海外進出・投資は進んでいない。

財務省では「菅首相から、1ドル=100円割れを止めよという指示があった」という噂がしきりだ。財務省には為替市場において円売り・ドル買いの介入権限がある。これにより、「財務官」という外為特別会計を握る財務省のポストがにわかに注目されているが、担当者にとっては胃が痛むことだろう。

なぜなら、為替市場でのドル買い介入(円安誘導=円高阻止)は2011年を最後に事実上の禁じ手となっているからである。「米国が配下の同盟国である日本に為替介入を許すはずがない」という見方があり、このため官邸も、財務省も動けない。11年の為替介入にしても東日本大震災という特殊要因があったからである。菅首相の為替についての「口先介入」など効果はない。


財務省の為替介入は事実上の禁じ手/©︎編集部

為替ストラテジストらの予測では21年末は、1ドル=95円という円高予想も出てきており、円高進行論者では、100円割れの円高予想は珍しくない。

こうした状況から観光産業にとっては、新型コロナのワクチンが普及した後、東京五輪開催後の国際便の完全復活をもたらす可能性もゼロではないわけで、コロナ後の為替相場は気がかりなのだ。

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