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すべての親へ贈るエール 両親の離婚を娘の視点で切り取ったメッセージ(後編)

しばはし聡子しばはし聡子

2021/05/17

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イメージ/©︎dolgachov・123RF

両親の離婚を体験した子どもの立場で、卒業研究では離婚をテーマにした論文を発表した20代女性にインタビュー。

前編では、留学から帰国したあと刺激がなくなりうつ病になってしまったことを告白。家族の存在をそのときの彼女はどう受け止めていたのか、親や家族に対する当時の想いからお聞きしました。そして、社会人となった現在、家族はどういう方向に進んだのか。また離婚を考えている、離婚を経験した親たちへ伝えたいこととは?

うつ病克服のきっかけは卒業研究

ーー病気を克服するきっかけはあったのでしょうか。

ときが解決してくれたということもあると思うし、あとは卒業研究が大きかったと思います。それを進めることでいろいろな経験をしている人がいることも知ったし、もっとつらい人もいることを知りました。

ーーなぜこの卒業研究を制作しようと思ったのですか。

最初はちょっと躊躇しました。でも自分の経験を生かして、自分にしか作れないものを作りたかったので、このテーマでやってみたい、という思いが強くあった。だからできたんだと思います。できたものは、多くの人に知ってほしいな、と思います。まだまだ勉強不足ではありますが、海外と比較しても、日本が離婚後もお父さんもお母さんも深く子どもと関われる制度になればいいなと考えます。お父さんとお母さん両方と深く関わることが大切だと私自身強く思います。

親が離婚しないで不仲のままが不運な場合も…

ーー日本は離婚すると別居親と会えない現状があると思いますが、そのことについてどう思いましたか。

これはどうにかしないと、変えないといけないな、って率直に思いました。子どもにとっては親の不仲もいやだけど、親が不仲で離婚せずに結婚したままの方が子どもにとっては悪影響なケースもあるから、必ずしも離婚しないで、というふうには思わないです。

ーー同居親さんから「子どもが”別居親に会いたくない”って言うのですがどうしたらいいですか?」という相談もよく受けるのですが、子どもの真意ってどうなのでしょうか。

子どもも別居親に会いたくないという真意、それは同居親への影響や気を遣っているケースが多いと思います。あの人は悪者だから、とか、あの人のせいでこうなっている、ということを話していれば、洗脳に近いかたちでそういう発言をしてしまうのかもしれません。何も知らずに育ったら別居親を好き、とかでなくても、自分の親はどんな人なんだろう、っていう興味でも会いたい、ってなるはずだと思うんです。でもそれが多分消されてしまっているのではないでしょうか。

親が離婚した子どもが、離れた親に会いたくないっていうのは、暴力や虐待が影響することもあると思いますが、でも親は親なんですよね。子どもにとっては大切な存在だと思うので、どんな親でも子どもは愛してほしい、と感じていると思います。離れて暮らす親に会いたくない、って思う子どもは少ないと感じます。

なので、子どもには分からない事情が親同士ではあると思いますが、子どもの利益を一番に考えてほしいと思っています。

ーー親権争いが起こる現状についてはどう思いますか。

まず、子どもはモノじゃないって思います。両親が争うことは子どもにとって絶対嬉しくないことだといえます。日本は単独親権でどちらかに親権者を決めないといけないし、離婚は不仲になるから争うことになってしまうと思いますが、子どもをモノのように取り合うのは誰にとってもよくないと思うんです。

ーー調停や裁判などで争うことは、子どものために、子どもを愛しているから戦う姿を残したい、という方もいて。そういった意見についてはどう思いますか。

それは子どもにとっては全然嬉しくないし、むしろ残してほしくないと思います。親は離婚しても仲良しでいてほしいし、子どもからすると「もしかすると復縁するのでは?」という希望も持ってしまうものです。いま私は父の前で母の話はほとんどしないですが、母と会ったときとかは報告もしています。父もそれに対しては肯定的で、「何食べたん?」とか話してくれるのでそういった会話ができる関係でいることがありがたいです。

ーー離婚して離れることになったお母さまからの愛情を感じるときはどんなときでしたか。

母は離れた後もそんなに頻繁にメッセージをくれなかったんです。私と距離を置くことで、自分も耐えていたかもしれないし、私にもこの状況で頑張ってほしい、っていう強いメッセージだったのかな、といまは思っています。

母が家を出たあとに弟と3人で会うこともありましたし、母もそこで寂しいとかは言わなかったですね。でも、母とのやり取りでするメッセージでは言葉に思いやりを感じます。

子どもとしては、母が会いたいとかさみしいとか言ってくれても嬉しいは嬉しいですけどね。私の場合は、母が家を出て行った当初は、毎日会いたい思いを抱えていましたが、母は自分の気持ちを私に伝えてくることはなかったので、私から会いたいと言いづらかったという思いがあったんです。

もしも離れて暮らすお子さんと連絡がなかなかできない状況があるとしたら、それはやっぱり周囲が子どもをサポートしてあげてほしいと思います。

「子どもが可哀そう」と言われても自分を責めないで

ーーこれからのビジョンをお聞かせください。

いまは別の仕事をしていますが、できるならすぐに親の離婚を経験した子どもたちの心のサポートをさせていただきたいと思っています。なかなか相談できる人がいないと思うので。

ーー同居親さん、別居親さんに向けてメッセージをお願いします

離婚って子どもが被害者に映ることが多いと思いますが、親も子どものことを考えてやむなく出した答えだと思うので、周りに離婚したことを伝えたときに「子どもが可哀そう」とか言われることがあったとしても、自分を責めないでほしいです。

それから、もしも子どもと離れることになったり、親権が相手にいってしまったとしても、子どもにとって親は絶対ふたり。お父さんとお母さんっていう子どもにとってはかけがえのない存在です。だから離れているからって自分は何もできていない、とか関われていないとか、そういったことはないと思います。

離婚された親御さんに思うのは、自分を責めないでほしいし、子どもは絶対親のことを愛しているし、忘れることはない、大切に感じていると思うので、責任感に苛まれずに、ご自身の幸せを考えて、ご自身の気持ちも大切にしてほしいです。子どもの立場から言うと、親が幸せなことが一番幸せだから。

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この記事を書いた人

一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント

1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️

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