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地域に溶け込む鍵は感性とつながり

よそ者フレンドリーな地域がオススメ

馬場未織馬場未織

2016/01/05

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よそ者フレンドリーな拠点を探そう!

 ひと口に「地方」といっても、比較的町中もあれば、山あいの里山、海辺の港町など、地域特性はさまざまです。地域住民のメンタリティも地域によって異なる個性があります。たとえば、昔から人の往来の多かった地域と、地域内だけの人間関係で完結していた地域では、よそ者に対する距離感も自ずと違うはず。移住・デュアルライフ(二地域居住)初心者であれば、よそ者に慣れた地域のほうが何かと安心でしょう。せっかくなら、ある程度は温かく迎えてくれる地域の方が快適です。

 旅先で偶然入った喫茶店が、まるで以前から通っていたみたいに自分の感性にフィットして妙に居心地がいい。そんな経験はないでしょうか? カフェでもアンティークショップでも本屋でも、もちろん宿でも、そういう場所がひとつでも見つかると、その町の印象がグンとよくなりますね。

 移住・デュアルライフ先の選び方として、そんなふうに自分の感性に合い、かつよそ者にもやさしい場所を基準に考える手があります。昔ながらの古い町並みのなかで、ちょっと周囲とは違う雰囲気のおしゃれなお店を見つけたら、それは移住者がつくった場である可能性も高いもの。ステキな場に出会ったら、ぜひ店主に話を聞いてみましょう。そこを拠点によそ者から見た地域の情報を聞き出せるかもしれません。

 たとえば瀬戸内海の小豆島にある「HOMEMAKERS」。愛知県生まれの三村ひかりさんが、2012年に家族で移住し、農業に取り組みながら築120年の農村民家を改装してオープンしたカフェです。

「HOMEMAKERS」
http://colocal.jp/topics/lifestyle/shodoshima/20140224_29806.html

 滋賀県・近江八幡の「尾賀商店」は、戦前までは砂糖問屋を営み、戦後からは履物の卸をしていた築150年の古民家をリノベーションして、新たな創造と発信の場として生まれたショップです。建物の一部をギャラリーとして貸し出すなど、人をつなぐ多目的スペースとしても生かされているそうです。

「尾賀商店」
http://www.oga-showten.com/

 もちろん、移住者だけが移住のかすがいになるというわけではありません。たとえば、気に入った地域を見つけたら、飲み屋さんの暖簾をくぐり、カウンター越しに大将と話をしてみるというのも手です。何度か通ってみるうちに、常連さんとのつながりができたり、「あの人のところに使っていない家がある」といった地元の人にしか分からない不動産情報を手に入れたりできることもあります。

 こうしたユニークな「場」を拠点にして、地域を知り、人と交わるなかで、移住やデュアルライフに溶け込むきっかけをつかむのもいい方法です。

全国に広がる「みんなの移住計画」

 移住やデュアルライフを応援するNPOやグループも増えています。その代表格のひとつが「みんなの移住計画」というプロジェクト。「生きたい場所で生きる人の旗印へ」をコンセプトに、全国に広がる「◯◯移住計画」の情報を連携して情報発信しているネットワークです。もともとは2011年に始まった「京都移住計画」が発端となり、いまでは福岡、岩手、佐賀、信州、新潟など、各地でおもしろい取り組みが広がっています。

 それぞれのサイトを見ると、住まいや仕事の情報、イベント案内など、移住・デュアルライフを検討している人が知りたい情報が盛りだくさんです。とくに「京都移住計画」に載っている移住者の声を読むと、無性に移住欲をかき立てられます。「東京より自分の存在価値が見いだせると思った」「旅行者として京都を見るのではなく、生活をして移りゆく日常の京都を見てみたい」「刺激と癒し、都会と自然、最先端と伝統などバランスが良い町だと思った」などなど。なるほどなと思ったり、あー、移住ってそういうことか、と思ったり、きっと誰かしらの言葉に共感を覚えることでしょう。

「京都移住計画」
http://kyoto-iju.com/voice

地域のキーパーソンに会いに行く

 「地域コーディネーター」という言葉を聞いたことはありますか? 人、モノ、地域をつなぎ、地域に埋もれている資源を掘り起こしながら、地域を活性化する役割を担う人のことです。人口流出や高齢化など、地方にありがちな課題を抱えながらも、克服して、元気を取り戻そうとしている地域には、必ずと言ってもいいほど、地域コーディネーターと呼ばれるようなキーパーソンの存在があります。

 こうした人は、移住やデュアルライフを考えている人にとっても強い味方です。地域と都市をつなぐのも重要な仕事である地域コーディネーターなら、よそ者がどうやって地域に溶け込んでいけばいいか、いろいろなヒントをくれるはずです。

 「地域コーディネーター」には公的な資格があるわけではありませんから、この名称で活動している人ばかりではありません。地域でまちづくりのNPOをしていたり、商店街で商売をしていたり、自治体の職員をしている人もいます。

 「地域コーディネーター養成講座」を行っていたこともあるNPO法人ETIC.では、地域で若者と経営者をつなぎ、新たなチャレンジを仕掛ける人や組織を「チャレンジ・プロデューサー(CP)」と呼び、全国的なネットワークを展開しています。サイト(http://www.challenge-community.jp)には、全国で活躍するCP一覧が掲載されているので、こうした組織を足がかりに、移住・デュアルライフに役立つ地域の情報を探すのもオススメです。

「地域コーディネーター養成講座(NPO法人ETIC.)」
http://challenge-community.jp/youseikoza/

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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