猫よけ水入りペットボトルはまったく効果なし むしろ問題が多くなる
山本 葉子
2021/08/25
イメージ/©︎leoba・123RF
海外から伝わった? 猫よけペットボトルの効果
「住宅周りにペットボトルを置くのは、猫避けになりますか?」
このようなご質問を、年間通じていただきます。
それぞれの地域には特色があって、気候や地形による建造物の個性があり、街によって建物の様子が違っています。ですが、日本全国どこに行っても住宅周りの均一アイテム(?)のように、ペットボトルが置いてあるのを見かけます。
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なかには、戸建てのおうちの壁沿いに並べられ、アパートの入り口に揃いのボトルが並ぶ。大規模マンションでも綺麗な植栽の外側にずらりと並べられているということもあります。
また、狭い私道の両脇。駐車している車の横。隣の家との壁の間にも……。
ペットボトルを置いている途中で芸術欲が湧いてきたのか、量といい形状といいもう立派なオブジェのようになっているものまであったりします。
よくある家の周りのペットボトル
こんな「水の入ったペットボトル」を見かけるようになったのはいつの頃からでしょうか。なかった時代を想像しにくいほど、どこに行っても、もはや水入りのペットボトルは住宅地にあるのが当たり前のようになっています。
個人ブログかなにかに「これは犬の散歩をする人のために、親切な住人が用意しているんですよ」と(多少皮肉まじりに)書いていたものを見たこともありますが、もちろん、これはウソ。犬の散歩中の排尿を洗い流す目的で置いてあるわけではありません。
これほどの情熱を傾けて(傾け続けて)水入りのペットボトルを並べる理由について、
「キラキラしているから」
「並べておくとトイレがしにくいから」
「猫はこれ嫌いだって聞いたので」
というお答えが返ってきます。
そもそも水入りペットボトルが置かれるようになったのは、海外の方が
「水入りのペットボトルは猫避けになる」
と発言されたのによるそうですが、どのように日本中いたるところ広範囲に「猫避けペットボトルの設置」が伝わっていったのかは謎です。
猫よけにペットボトルはいいことはない
それだけ「外猫が庭先、駐車場や玄関で用を足すのを止めたい」と思っている方が多くいることがうかがえます。
猫好きの方からはそうは思えないかもしれませんが「できれば自分が追い払ったりせずに、苦手なものを置いておけば寄り付かなくなるとありがたい」というような日本的な穏便さもあるような気もします。
さて、そうした思いで猫除けを期待して設置した方には大変残念なことですが、このペットボトルは実際には効き目がありません。
猫たちにとっては、水が入っていようが空だろうが、ラベルが付いていようがいまいが、ペットボトルは別に苦手でも嫌いでもありません。
これまでにもたくさん並べて、もはや要塞のようになっているお宅にお邪魔して、オーナーの方にこのことをご説明すると「ここまでやっても効果がないの!?」と、とてもがっかりされた顔をなさっていました。
以前のコラムで、「マンションの植栽やファサードを猫トイレにされないための方法」をいくつかご紹介しました。そこで「平らで乾いていてザクザクできる」猫たちにとっての故郷である砂漠=トイレのような状態を回避すると、被害は途端に減るのです。
つまり、「デコボコさせる」「サラサラしていない」「掘ったりできない」工夫をする――こうした状態をつくることが効果的な方法なのです。
水入りのペットボトルバリケードは、猫たちが来るのを防ぐことはできないだけでなく、実はちょっと怖い話もあります。
私の運営する猫の保護施設は豊島区に猫のシェルターを持っていますが、管轄の消防署のセミナーに参加した際に「収れん現象」という耳慣れない言葉を教えてもらいました。
太陽の光がガラスやそれに類するものを通るときに、反射したり屈折します。そのとき光が一点に集まり、その先に燃えやすいものがあると発火することもあるのです。
これは水入りのペットボトルでも同じことが起きる可能性が指摘されています。
つまり、水入りペットボトルを置くのは
「猫避けにならない」
「火災の危険がある」
「美観も損なう」
「劣化したプラスチックに穴が開くと不衛生」
といいことはありません。。この際ですから、「水入りペットボトル」をおくのは止めてみませんか。
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この記事を書いた人
NPO法人東京キャットガーディアン 代表
東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。