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サブリースで新たなトラブル続出 個人オーナーのサブリース契約が解約できない(1/2ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2021/12/01

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イメージ/©︎beauty-box・123RF

「借地借家法」で縛られているサブリース契約

「この度、息子の就職に伴い、空室で職場にも近いのでこの部屋に住ませることにしました。タイミングよくサブリースの契約(3年契約)も切れるということで、管理会社にサブリース契約を解除してほしいと通知したところ、『正当な事由がないと解除できない』との回答でした……」

このような問題が多発しています。

2020年6月、サブリース事業者を対象とするはじめての規制「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)」が公布されましたが、サブリース(マスターリース)の解約については、サブリース新法の規制対象とはなっていません。

サブリースというと、サブリース会社が借り上げて家賃保証をするというイメージですが、厳密にいうと、物件オーナーからサブリース会社が借りることを「マスターリース」、サブリース会社が借り上げた物件を賃借人に貸し出す、間借りする(させる)ことを「サブリース」といいます。

こうした一連の賃貸形式を総称して「サブリース」といっています。

さて、住宅や土地の賃貸について定めた法律である「借地借家法」では、「期間の定めのある契約」について貸主側から契約を終了させるには、以下のような定めがあります。

1)期間満了の1年前から6カ月前までに更新拒絶の通知を出すこと
2)借地借家法の定める正当事由(借地借家法第28条)があること

借地借家法はこれらの点に反する借主に不利な特約は法律上無効だとしています。

もちろん、借主が快く合意してくれれば別ですが、そうでない限り自己使用の必要性や、立ち退き料の提供など、いわゆる契約終了するには「正当事由」 が必要になります。

マスターリース・サブリース契約のフロー

借地借家法第28条は、建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件になるとする「正当事由」の概要は、以下のようなものです。

1)賃貸人の建物使用を必要とする事情
2)賃借人の建物使用を必要とする事情
3)従前の経過
4)建物の利用状況
5)建物の現況
6)立退料の申出

借地借家法と消費者契約法の類推適用

何かとトラブルの多いサブリースですが、問題が起こる根底にあるのが、不動産サブリースに関する契約が「消費者契約」(消費者契約法2条3項)といえるかという点があります。

そもそも物件のオーナーは、反復継続的に賃料収入という一定の利益を得るために契約の当事者となるため、個人であっても「事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合」とされるおそれがあります。

しかし、「事業」の目的は、営利・非営利を問うものではありません。

日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編「コンメンタール消費者契約法(第2版)」(商事法務、2010年)では、事業について「それを行っているものが当該契約について情報の質、量および交渉力に相手方当事者より高いレベルにあると判断される場合であり、一応の定義をしたとしても各契約の実態に合わせて柔軟に解釈すべきである」としています。

つまり、賃貸人(オーナー)が、何棟もの賃貸物件を所有し、賃貸業を営んでいるような場合であえばともかく、初めて賃貸物件の建築契約等(サブリース契約含む)を行うなどの場合については、賃貸人(オーナー)の属性や、勧誘の状況にもよっては、消費者契約法の適用が十分検討できるものと思われます。

消費者契約法の第1条の目的において、次のように定められています。

消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

また、消費者契約法3条は次のようにあります。

消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。

消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとする。

つまり、個人オーナー(区分所有)に対するサブリース解約条項の説明不徹底問題は消費者契約法2条3項に抵触すると考えられます(令和3年6月15日賃貸住宅管理業法 全面施行以前の事案対象)。

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この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

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