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企業マーケティングに浸透中の「行動経済学」を賃貸経営にも応用できるか?(1/3ページ)

朝倉 継道

2021/09/24

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イメージ/©︎banphote・123RF

「ナッジ」が駐輪場を整理整頓させる

斜めに置かれたり、横を向いたり、通路に飛び出していたり……無秩序に自転車が停められていた賃貸アパートの駐輪場。その地面に、自転車1台分ごとのスペースを挟んだ「線」を引いたところ、皆がそれに従って自転車を置くようになった……。

賃貸住宅の管理に関連して、よく話題となるエピソードだ。行動経済学が語る「ナッジ」の概念に基づくマネジメントのひとつといっていいかもしれない。

ナッジ(nudge)とは、ある種の仕掛けのことだ。人間の行動を規則や強制ではなく、あくまで自発的に変えてもらうために設計される小さな工夫などのことをいう。

もっとも、ナッジはあからさまに表現されるものではない。目的に対し直接的な誘導をせず、一歩引いた、気の利いたメッセージに留めることで、抵抗や摩擦が生まれないようにする。そこが、ナッジの要は勘どころだ。

すなわち、上記アパートでは、入居者は「この線に沿って自転車を停めなさい」と、指示を受けたわけではない。

「線があるとなんとなく従っておきたくなる」「それが楽」といった、人間の行動や習慣における“ツボ”を刺激されたかたちで、おそらくは誘導されている。結果、自転車がきれいに並ぶことで、「ナッジが効いた」「成功した」ということになるわけだ。

こうした、社会に提供される具体的な方法論であるナッジのほか、行動経済学は、人間のさまざまな心理を分析し、類型化することによって、人の行動を変えたり、方向性を生み出したりするヒントを与えてくれている。

そこで、私も賃貸経営に絡めて、いくつか応用例を考えたり、集めたりしてみた。その一部を紹介していこう。

なお、以下に挙げた以外にも、行動経済学が語る人間の心理と行動に関わる原則は、さらに数多く存在する。多くのウェブサイトや本が解説しているので、「行動経済学」や「ナッジ」をキーワードに、ぜひ探してみてほしい。

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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