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住宅の品質確保の促進等に関する法律

森田雅也

2020/02/20

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競売物件

第1 はじめに

不動産投資をするにあたって新築物件を購入しようと考えている方もいらっしゃると思います。
不動産売買についても、通常は、民法の一般原則が適用されます。

しかし、従来から、住宅取得者にとっては、①住宅の性能を表示する共通ルールがないため、相互比較することが難しい、②住宅の性能に関する評価の信頼性に不安がある。③住宅の性能に関する紛争について、専門的な処理体制がないことから、その解決に多くの労力がかかる、④新築住宅の取得の際に、契約書において瑕疵担保責任が1~2年などとなっているため、その後に瑕疵が明らかになっても、無償修繕等が要求できない、などが問題でありました。

このような問題を解消するために、平成12年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下「品確法」といいます。)が制定されました(平成12年4月1日施行)。
そこで、以下では、このように買主の保護が厚い特別法である品確法についてご説明いたします。

※1 なお、品確法は、新築住宅と既存住宅の双方について適用があります。
しかし、新築か既存かによって適用されるルールが異なります。
今回は、主に、新築住宅に関する品確法の内容について説明しています。

※2 「新築住宅」とは、「新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)」を指します(品確法2条2項)。
「新築住宅以外の住宅」、すなわち「新たに建設された住宅ではない」又は「人の居住の用に供したことのあるもの」若しくは「建設工事の完了の日から起算して一年を経過したもの」などは「既存住宅」となります。

 ●品確法の重要なポイントは大きく分けて3つです。

  1. 新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」すること
  2. 様々な住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」の制定
  3. トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」の整備

以下、これらについて具体的に説明させていただきます。

第2 住宅性能表示制度について

1 概要
住宅性能表示制度とは、売主や買主とは全く別の第三者機関である「登録住宅性能評価機関」が住宅の性能レベルを評価し、住宅性能評価書として住宅の性能を表示する制度です。
2 ポイント
  1. 住宅性能表示制度は、法律(品確法)に基づいた制度です。
  2. 国土交通大臣から登録を受けた「登録住宅性能評価機関」に住宅の評価を客観的に評価してもらい、「住宅性能評価書」を交付してもらうことができます。
  3. 上記「住宅性能評価証明書」やその写しを、新築住宅の請負契約書や売買契約書に添付などすると、住宅性能評価書の記載内容を契約したものとみなされます。
3 住宅性能評価書について
⑴ 種類

住宅性能評価書には、
  1. 設計図書の段階で評価結果をまとめた「設計住宅性能評価書」
  2. 施工段階と完成段階の検査を経た評価結果をまとめた「建設住宅性能評価書」
の2種類があります。
それぞれ法律に基づくマークが表示されます。
なお、性能評価の料金は、評価機関ごとに独自に定められています。
不動産投資においては、家賃収入(インカムゲイン)や転売による売却益(キャピタルゲイン)を目的に完成した建物を購入される方が多いと思われますので、主には「建設住宅性能評価書」を取得することになると思われます。
もちろん、「設計住宅性能評価書」のみ交付を受けることや「設計住宅性能評価書」及び「建設住宅性能評価書」の両方の交付を受けることも可能です。

⑵ 効果(品確法6条)

この評価書の交付を受けることにより、同書面やその写しを、新築住宅の請負契約書や売買契約書に添付などすると、住宅性能評価書の記載内容を契約したものとみなされますので、評価書と相違があった場合には買主は評価書の記載通りに補修などを求めることができます。
ただし、契約書面で、契約内容としないことを明記した場合は適用されませんので注意が必要です。

※既存住宅でも住宅性能評価書の交付を受けることができます。
しかし、既存住宅の場合には、契約のみなし規定の適用がありません。

第3 指定住宅紛争処理機関について

性能評価を受けた住宅にかかわるトラブルに関しては、裁判外の紛争処理体制が整備され、紛争処理の円滑化、迅速化が図られました。

具体的には、建設住宅性能評価書が交付された物件で仮に問題が生じた場合には、国土交通省が指定する指定住宅紛争処理機関(各地の単位弁護士会)に紛争処理を申請することができます。

指定住宅紛争処理機関は、裁判によらず、住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関ですが、建設住宅性能評価書が交付された物件であれば、住宅性能評価書の記載内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間のすべての紛争の処理を扱います(品確法66条以下参照)。

なお、紛争処理委員のうち1名は必ず弁護士であり事案に応じて建築の専門家が委員になるなどして、紛争処理することになっていますので、通常の裁判に比べ、円滑・迅速・確実な処理が可能になります。

第4 瑕疵担保責任の特例

1 瑕疵担保責任とは(民法の原則)
瑕疵担保責任とは、契約の目的物に隠れた瑕疵があった場合に売主が負う責任(修補・代金減額・解除・損害賠償など)のことです。
民法の原則では、瑕疵担保責任の請求は、買主が契約不適合を知った時から1年以内に通知する必要があります。
  • ※1 この度、民法が大幅に改正され(令和2年4月1日施行)、瑕疵担保責任につきましても、大幅な変更がされておりますが、ここでは改正内容の詳細は割愛させていただきます。また、改正後の民法を前提に説明しております。
  • ※2 民法改正前には民法570条において瑕疵担保責任と呼称しておりましたが、改正後は「契約不適合」という呼び方に改められました。しかし、特別法である品確法においては、従前の「瑕疵」という言葉を規定しているため、本記述も瑕疵担保責任と統一しています。
2 品確法による民法の原則の修正
品確法では、新築住宅については、住宅のうち構造耐力上主要な部分と、雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるものに関しては、瑕疵担保責任が、10年間に伸長されています。
また、この期間は強行規定といわれるもので、この期間より短くする特約は無効とされています。
このように、買主・施主の保護が厚いものとなっています(品確法94条及び95条)。
したがって、新築物件を賃貸物件として購入し雨漏りが発生した場合、賃貸人(買主)は10年以内なら売主に対し責任追及をすることができます。
ただし、クロスの汚れなどは構造耐力上主要な部分とは言えないので、クリーニング代などを請求することはできないことに留意する必要があります。

※なお、既存住宅については、上記に挙げた瑕疵担保責任の特例の適用はありません。

【新築住宅に係る品確法による瑕疵担保責任の特例のまとめ】

⑴ 対象となる部分
①構造耐力上主要な部分
建築物の荷重を支え、外力に対抗するような建築物の基本的な部分のことである。
具体的には、次の部分が「構造耐力上主要な部分」に該当する。

・在来工法の木造住宅の場合
基礎に関するものとして「基礎」「基礎ぐい」、軸組に関するものとして「土台」「壁」「柱」「斜材(筋かいなど)」「横架材」「床版」、屋根に関するものとして「小屋組」「屋根版」が、「構造耐力上主要な部分」

・鉄筋コンクリート構造のマンションの場合
「基礎」「基礎ぐい」「壁」「床版」「屋根版」が「構造耐力上主要な部分」
⑵ 請求できる内容
  • 修繕請求
  • 損害賠償請求
  • 解除(売買契約のみ。修補不能な場合に限る)
⑶ 瑕疵担保期間
完成引渡しから10年間

第5 最後に

品確法は、個人にも適用されます。例えば、新築物件を自宅として購入したけれども、急遽転勤が決まり入居する前に転売したような場合においては、転売人は品確法の売主として扱われるため、瑕疵担保責任を負うことになります。ただその場合にも、元の売主に対して品確法の責任を追及できる可能性があります。

弁護士でも不動産案件を専門に扱っていなければ、特例の存在を知らない場合もあり得ます。不動産取引は大きな買い物ですので、不動産取引でお困りの際には、一度、不動産案件を多く手掛けている弁護士に相談してみるのがいいでしょう。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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