詐欺の詐欺――原野商法の二次被害 その手口と流れ
ウチコミ!タイムズ編集部
2020/10/10
文/朝倉 継道 構成/編集部 イメージ/©︎Phuong Nguyen Duy・123RF
「原野商法の二次被害」といわれる、悪質な手口による詐欺があとを絶たない。
原野商法とは価値のない原野などの土地を、土地開発・計画の情報などに紐付け「将来値上がりする」といって買わせる、半世紀ほど前に流行った詐欺行為である。では、原野商法の「二次被害」とはどんな被害なのか? それは「あなたの土地を売ってください」と原野などの売却を持ちかけ、金銭などの被害をもたらすというものだ。
よく知られている流れは次のようになる。
1.名簿が出回っている?
まず、業者は、過去に山林や原野等の土地を購入し、それを処分できずにいる人や、売却をあきらめて放置している人に目を付ける。こうした人々の情報が、業者間で密かに出回り、共有されているともいわれている。
2.焦る気持ちにつけ入る
次に、業者は、そうした人に電話をかけたり、自宅を訪問したりして接触。そこで、「あなたの土地を買いたがっている人がいる。わが社が間に立つ。買わせてもらいたい」などと言って、売却を提案。過去に一度原野商法にひっかかり、不要な土地を買わされていた人にとっては、まさに降って湧いたチャンスだ。しかも、そこで示されるのは、購入価格よりも高い売却価格。「要らない土地を子どもに引き継がせたくない」と悩んでいる人にとっても、一見、渡りに舟の提案だ。
3.なぜか他の土地を買わされる
話に乗ってしまった被害者に対し、業者は「ただし…」と、条件を提示する。それは「土地を売るためには、手続き上、別の土地をあなたに一旦買ってもらわなければならない」という奇妙な申し入れだ。もっとも、その土地については「次の買い手が決まっている」と業者は説明。「その人はあなたが買ったのと同じ金額でその土地を買う。なので、あくまでこれは手続き上の取引です」と語り、被害者を安心させる。ちなみに、このとき被害者が買わされる土地は、売る土地(元々持っていた土地)よりも高く、新たに買う土地が売れなければ被害者は差額による損を被る。そこで業者は、「買い手は必ずこの土地を買う。そういう手筈になっている」と太鼓判を押すが、そんな人物はもちろん実際には存在しない。
4.実体のない経費を取られる
被害者がすっかり騙され、土地の売却および購入、両方の話が進むと、業者はこれに絡めて「あれが必要になった」「これも」と、さまざまな名目で経費を要求する。これらは数十万円から100万円以上と、多額に及ぶが、「最終的には補填するので損はしない」と、被害者を言いくるめるようなケースも見られる。
5.業者と連絡がとれなくなる
土地の売却・購入両方の契約が結ばれ、被害者は購入した土地と売った土地の代金の差額を支払う。ところが、話は急にそこから先へ進まなくなる。存在するはずだった土地の買い手が、いつまでたっても現れない。しかも、補填される約束の諸経費の振り込みもさっぱりだ。電話をかけても担当者はいつも不在。ほどなく業者の電話自体が繋がらなくなり、被害者はやっと騙されていたことに気づく。しかし、時すでに遅し。多額の出費をさせられた挙句、被害者の手元には、欲しくもなかった資産価値のない土地だけが残るといった顛末だ。
6.さらにつけ込まれる例も
加えて、以上のような状況に愕然としている被害者のもとに、さらに別の業者から電話がかかってくることもある。曰く、「騙されてしまいましたね。でもその土地は当社が売ってあげます。安心してください」…このように、騙された人からさらに搾り取ろうとする、とんでもない輩もうごめいている。
「騙される方も甘いのではないか」――たしかにそのとおりだろう。
とはいえ、実際には騙す方も巧妙だ。不動産のことを多少知っているがゆえに、引き込まれてしまうようなトークを展開する。
たとえば、「土地を売るためには、手続き上、別の土地を一旦買ってもらわなければならない」といったくだりは、「売る話をしているのに突然買う話になるなんて、おかしいじゃないか」と誰もが思うだろう。実際の現場では、業者はここに税金対策の話をうまく絡めるなどし、さもありなんといったトークで嵌められてしまう。
話の振り出し部分でも、業者は「つかみ」を用意する。
「内緒ですが、外国資本がこのあたり一帯に目をつけていて、当社はその流れで動いている」。そう言われれば、被害者の頭の中には、過去にテレビで観た有名リゾート地の情景がパッと思い浮かぶだろう。現に土地の引き合いが来ているという目の前の現実と、そのイメージが重なれば、「いままで売れなかった土地が急に売れるようになるわけがない」との確固たる認識も、自身の欲に惑わされ簡単に覆されてしまう。
世の中の振れ幅が大きくなっているとき、詐欺は横行しやすい。消費者庁が具体的な事例を挙げて注意を促しているので参考にしてほしい。
もしこのような話になったときは、各地の消費生活センターや警察にすぐに相談するべきだ。
この記事を書いた人
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