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空き家率30%時代になっても、「賃貸」より「持ち家」が有利な4つの理由

牧野寿和牧野寿和

2017/03/14

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人口減、高齢化で住宅を買うことに不安を感じる人が増えている


(c) NOBU – Fotolia

最近、30年35年といった長期のローンを組んで住宅を購入することを大きなリスクと考える人が増えているようです。

経済の先行きが不透明ななか、ずっと住宅ローンを支払い続けられるかという不安に加え、30年後、35年後にローンを払い終える頃には人口減少と高齢化によって、資産価値が大きく下がっているのではないかという不安が原因として考えられます。

私のところにいらっしゃるお客さまの相談内容にも変化が起きています。住宅の相談は、これまでは家を購入することが前提でした。

「この価格の物件を購入しても無理なく完済できるのか」「ハウスメーカーから紹介された金融機関の住宅ローンよりも得な住宅ローン商品はないか」「繰り上げ返済や借り替えをした後、生活に支障はないか」といった相談がほとんどでした。

しかし、最近では「自分たちの収入だと、どれくらいの家賃のところに住むのが妥当なのか」といった購入目的ではない住宅に関する相談が増えてきています。

以前であれば、家の購入の相談にみえていた20代後半から30代のご夫婦のなかに、家賃の相談にこられる方が増えてきているのです。

また、家の購入を考えておられる方でも、ハウスメーカーや金融機関がつくった住宅ローンの返済計画表を持ってこられて、本当に完済できるのかセカンドオピニオンを聞きたいという方もいらっしゃいます。以前に比べると、住宅ローンについてご自分で勉強していらっしゃる方が増えているように感じます。

また、年齢を問わず、現役中に老後資金を準備したいとか、貯蓄や運用で資産形成したいという相談が増えており、住宅購入より優先的課題になってきているように思います。

年金受給など不透明な老後の生活に不安を感じておられる方が増えているのでしょう。

2033年には空き家率は30.2%、家が余る時代がやってくる

家を購入することの優先度が下がっているのは、当然といえば当然かもしれません。皆さんは、「2019年問題」をご存知でしょうか?

国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに発表している「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」の2013年1月推計によると、日本の世帯総数は2019年に5037万世帯とピークを迎え、その後2035年には4956万世帯まで減少すると推定されています。

世帯数が減っていく時代がもう目の前に来ているのです。

世帯数人口が減るのに、これまで通りに住宅が建設され続ければ、住宅はますます供給過剰になり、空き家が増えていきます。また土地の価格、建売りやマンションの価格も下がるでしょう。2年後の2019年から起ころうとしているこうした問題が「2019年問題」です。

さらに、野村総合研究所(NRI)の「ニュースリリース2015年6月22日」では、既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ2033年の総住宅数は約7100万戸、空き家数は約2150戸、空き家率は30.2%に上昇すると予測しています。何らかの対策が打たれないと、空き家が増加するばかりです。

こうした数字を目のあたりにすると、ますます住宅購入を躊躇する人も増えるでしょう。

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「物件の募集図面」を見れば不動産会社の裏側が手に取るようにわかる!

賃貸と持ち家ではどちらが有利なのか

しかし、生涯の家計収支を考えていくと、一生を賃貸で過ごすよりも、住宅を購入したほうがいいというのが、ファイナンシャル・プランナーとしての私の考えです。

その具体的な理由をお話する前に、一生賃貸で生活した場合と、住宅を購入した場合のそれぞれについて、どれくらいの住宅費がかかるのか見てみましょう。

よく住宅を購入しても賃貸で生活をしても、生涯では同じくらいの住宅費が必要と言われているのを聞きますが、実際はどうなのかを検証してみたいと思います。

現在30歳の夫婦が、90歳(女性の平均寿命約87歳に少し余裕を持たせた年齢)までの60年間でいくら住居費が必要か、単純にマンションを購入した場合と賃貸で生活をした場合とで計算してみます。

<購入した場合の条件>
購入価格:3000万円(購入時の諸費用などは考慮せず)

住宅ローンでの借入金:3000万円(35年返済、全期間固定金利、金利1.0%)

毎月の返済額:8万4686円(年間で101万6232円)

総返済額:約3556万円

管理費、修繕積立金:月額2万5000円、年間で30万円

固定資産税など年間支出額:12万円と仮定

<賃貸の場合の条件>
家賃:12万円(地域によって必要な敷金礼金保証金、更新料などは考慮せず)


(図表1)購入と賃貸、それぞれの支出額の合計

図表1の通り、購入したほうが有利という結果になりました。もちろん、このシミュレーションだけが正解なわけではなく、計算の方法によって結果は変わってきます。

また、このシミュレーションには含めていませんが、住宅購入時には諸費用と言われる物件価格以外の費用がかかりますし、住んでいる間にはメンテナンス費用のほか、水漏れの修繕費用などの想定外の支出が発生します。一方、賃貸の場合には引越し毎に費用が必要です。

そうした費用を含めて考えても、また、将来、家賃が物件の老朽化によって下がったり、家賃が安いところに引っ越したりしても、老後の生活での家計支出を考えると賃貸での生活は不安定であり、購入したほうが有利ではないかと言えます。

それでは、この検証を参考に住宅を購入した方がいい4つの理由をお話していきましょう。

<理由1>教育費や老後資金を含めた生涯の家計収支が見通せる


(c) milatas – Fotolia

購入すれば、毎年、固定資産税などの税金の納付が必要となりますし、リフォーム代も必要とはなります。しかし、生涯にわたるおおよその家計収支の把握ができるため、子どもの教育資金や老後資金を確保するために、いくらの貯蓄をすればいいのか具体的な目標額が把握できます。

また、その住宅を終の棲家(ついのすみか)とする場合は、税金や戸建ての場合は生涯の修理費を、またマンションの場合でも、将来大規模修繕に追加の費用がかかっても、それに必要な費用を別途準備しておけば、家賃を生涯払うこともなく、老後の家計収支の見通しがつけやすくなります。

(参考記事)
住宅ローンの返済と子どもの教育資金で家計を破綻させない5つの方法

<理由2>売却、賃貸に出すことで収入を得ることができる

購入した物件は、あなた自身の資産となります。もし将来、何らかの理由でその物件に住まなくなった場合、売却をすることで得た収入を将来の生活に充てることができます。また、売却の時期によっては、そのお金を資金に金融商品で運用をすることも可能です。

さらに言えば、賃貸で貸し出すことで、維持費はかかりますが定期的な収入を得ることができます。ただし、その物件の耐久年数を考え、将来的に売却するのか、大規模修繕をしても保有し続けるのかなど、「出口」を考えておくことも必要です。

(参考記事)
マンションは「住み心地」で選んではいけない! その3つの理由とは?

<理由3>インフレに対応できる

将来、ハイパーインフレが起きたときでも、年利1.0%の全期間固定金利で融資を受けていれば、たとえ物価が大きく上昇しても、住宅ローンは契約通り年利1.0%のままで返済していけばいいので、実質的な借金の負担は小さくなります。

逆に家賃を支払っている場合は、どれだけ家賃の安い物件でも家賃が上がることもあります。また引越しをすれば、空き家が増えているといっても、そのときの家賃相場で借りることになり、家計にとって大きな負担となりかねません。 

<理由4>「いつでも帰れる家がある」という安心感がもてる

いつでも帰ることのできる家があるというのは、大きな安心感です。また、居心地、住み心地を考えて自由に内装を変えたり、リフォームしたりできますし、戸建てであれば家の周りも自由にアレンジすることができます。

最も居心地のいいリラックスできる場所をつくることができる、それが賃貸住宅に住むのと最大の違いでしょう。

住宅を買うときにこれだけは意識すべきこと

家という資産を持つことが、決して不安だけではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。とはいえ、これからますます住宅が余る時代になっていくのは確実ですから、どんな住宅を買うかで、将来の資産価値が大きく変わってくることは十分にあり得ることでしょう。

最近では、ハウスメーカーや金融機関の言われるままに住宅を購入する人は少なくなってきましたが、住宅を買う時に意識していただきたいことをお伝えしておきましょう。

注意点(1) 完済できる物件を買う
たとえば、3000万円の建売住宅を購入する場合、3000万円のほかに購入時の諸費用、室内や屋外に追加で設置する費用、購入時にかかる税金、住宅を所有している間は毎年かかる固定資産税のほか、修繕費のように不定期に必要な費用など、毎月の住宅ローンを返済していくお金とは別にお金がかかります。

これらの支出額も算出した上で、完済できる購入物件を決めることです。

注意点(2) 資産価値のある物件を買う
将来、資産価値が下がってもローン残高を下回らない物件を購入することです。

建物は、築年数の経過とともに資産価値が減少していくもので、それは避けられません。しかし、あまり安価な物件を購入してしまうと、新築で購入しても、すぐに修理が必要になることもあります。

そうした物件の資産価値は当然、すぐになくなってしまいますので、安いからとそういった物件に安易に手を出さないよう注意してください。

一方、土地は文字通り不動産で動くものではありません。そこで購入時少々高い物件を購入しても、通常、地価は急激には上下しませんので資産価値を維持することにもつながります。

注意点(3)貸しやすい、売りやすい物件を買う

上記の資産価値のある物件にも関連することですが、購入する物件を将来どのようにしたいのかを、あらかじめ決めてから購入することも必要です。

たとえば、高台にある見晴らしのいい物件を購入しても、いざ貸そうとすると上り坂がきつく借り手がいない。また、最寄り駅から徒歩15分だけれども公園が近くにあり環境がいいという理由で購入しても、いまでは駅から5分圏内が最適、公園が近くにあると夜は物騒だという思いもよらない物件評価をされることもあります。

物件評価は時代とともに変わりますし、個々の物件の特徴や土地柄によっても評価は異なります。

賃貸にする場合は、空き家が多くあり、物件が余っていることも考慮して、一般的には駅に近い交通の便がよく買い物もすぐにできるところが好まれます。

また売却をする場合は、交通の便が悪いとか、近くに人の集まる騒がしい場所があるなど、住環境に難がある物件を、価格面で妥協して購入した場合などは、希望の価格で売却することはむずかしいでしょう。

住宅を購入することは、資産を持つことです。資産があればお金を生むチャンネルがひとつ増えることは間違いありません。

「資産を持つ」という意識で、慎重に検討すること、そして、決して妥協してしまったり、買い急いでしまったりすることのないようにしてください。将来のために、資産価値のある物件を購入してください。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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