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「売りたい物件」を選ばせる営業マンの手練手管

その物件、自分で選んだと錯覚していませんか?

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「買わせる物件」は最初から決まっている

前回の記事でご説明したように、不動産会社の営業マンの多くは、お客さんが希望する条件に合う物件よりも、自分の利益になる物件、自分が売りたい物件を売りこもうとします。

そのために、営業マンはさまざまなテクニックを駆使して、お客さんを誘導し、買う気にさせるのです。

まずは物件を案内する方法です。お客さんから物件の問い合わせがあった場合、その物件だけを案内して終わりということはまずありません。お客さんの希望条件を聞いて、近い条件の物件を探しておき、当日には2、3件の物件を見てもらいます。

もちろん、ただ案内するだけではありません。営業マンは、実際に物件を案内する前に、そのお客さんに「買わせたい物件」、というよりも、「どの物件を買わせるか」を決めているのです。そして、その物件をお客さんに選ばせるために、ほかにはどういう物件をどういう手順で案内するか、どのようなセールストークを展開するか、事前に綿密なプランニングをしているのです。

お客さんをどうやって誘導するのか

つまり、営業マンは、ただ複数の物件を案内して、そのなかからお客さんに気に入ったものを選んでもらうのではなく、最初から「買わせたい物件」を決めておき、その物件を引き立てるための「おとり」の物件を組み合わせて案内していくのです。

しかも、「買わせたい物件」がお客さんの目に、よりよい物件に見えるように誘導しながら、お客さん自らがその物件を選んだように錯覚させるようなセールストークを展開していきます。

つまり、お客さんは自分の意思で選んだと錯覚しているだけで、実は営業マンが狙いをつけた物件を選ぶように誘導されているといってもいいでしょう。

たとえ誘導されたとしても、自分にとってベストな物件を選べればいいのかもしれません。しかし、「両手取引」「担当ボーナス」といった不動産業界の商習慣の存在を考えると、残念なことにその物件が本当にベストなものなのかどうか、疑念を完全にぬぐい去ることはできないのではないでしょうか。

「回し物件」をどうやって使うのか

「おとり」として使われる典型的な物件に、「回し物件」と呼ばれるものがあります。これは一言でいってしまえば、「買いたくない家」のことです。たとえば、築年数の古すぎる物件や、工場の近くや非常に不便な場所にあるなど立地が極端に悪い物件などです。

「お客さまの条件だとこのような物件がほとんどです」などと言いながら「回し物件」を見せた後に、「買わせたい物件」を見せれば、それがごく普通の物件であっても、あたかも掘り出し物であるかのように思わせることができます。

また、ごく普通の物件に「割高な価格」をつけて「回し物件」にする場合もあります。割高な物件を見せて「このあたりの相場は高いんです」と話した後に、「買わせたい物件」を手の届く価格で紹介すれば、お買い得なおすすめ物件のように見せることができるでしょう。

このように、営業マンはさまざまなテクニックを使って、自分が紹介した物件がベストなものであるとお客さんに思わせるのです。

いい物件を隠されてしまったら…

仮に、ほかにもっといい物件があったとしても、営業マンが隠して見せなければ、お客さんにはわかりません。見せてしまえば、自分が売りたい物件を売ることができないと思えば、見せないという選択が営業マンにはできるのです。仮にほかの物件情報を知ることができても、「囲い込み」と同じように、「もう申し込みが入ってしまってるんです」と言われればそれまでです。これが、不動産業者と消費者との間にある圧倒的な情報格差の現実なのです。

そして、もうひとつ営業マンが狙うのが、「その日のうちに買わせてしまう」こと。「一度ゆっくり考えます」とか「ほかの物件も見て決めます」と言って帰ってしまったお客さんが戻ってきてくれる可能性は非常に低いからです。

そのために、「煽り」を入れたり、「サクラ」の競争相手を登場させたり、お客さんを「この物件をいま買わなければ後悔する」という気持ちにさせるために、やはり営業マンはさまざまなテクニックを駆使していきます。それについては、また改めてお話ししましょう。

 

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この記事を書いた人

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