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賃貸物件で殺人事件が起こったら~居住者、入居者編~(1/2ページ)

森田雅也森田雅也

2017/12/13

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今回は、居住者・入居者側からどう対応すればいいのかを説明いたします。 通常、賃貸物件で殺人事件が起きたらオーナーには告知義務が発生します。
この告知義務ですが、自然死、自殺事件と殺人事件では期間などに大きな差があり、殺人事件のことを説明されなかったからといって、必ずしも入居しようとしている物件で過去に死亡事件が発生していないとは限りません。
そもそも、自然死による死亡事件の場合には、告知義務が通常オーナーに課されることはありません。

また、自殺に関する裁判例では、「自殺事故の後の最初の賃借人には自殺事故があったことを告知すべき義務があるが、当該賃借人が極短時間で退去したといった特段の事情が生じない限り、次の賃借希望者に対しては自殺事故があったことを告知する義務はない」としています。

この裁判例から分かることは、事件のあった後すぐの入居申込み者には告知義務が生じるが、その居住者が短時間で転居していない場合には、次の入居申込み者から告知義務は発生しないということです。 これは、告知義務の原因である心理的瑕疵の希薄化といい、他の人が住んで瑕疵が薄れるために、通常の(瑕疵のない)物件に戻ったことを意味します。一時期、希薄化だけを行うために短期間のフリーレントを行う方法が横行しましたが、それを防ぐためにこの裁判例は、極短時間の退去を特別の事情として扱っていることが窺われます。

では、殺人事件の場合にはどれくらいの期間、告知義務が必要なのか裁判例をいくつかご紹介します。
土地を転売目的で買い受けたが、調べたら以前に、敷地内のすでに取壊された建物で殺人事件が発生しており、購入者が見つからないという場合において裁判例は、「本件殺人事件は女性が胸を刺されて殺害されるというもので残虐性が大きく、通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きいと考えられ、新聞にも報道され、約8年前以上前に発生したものとはいえ、嫌悪すべき心理的欠陥がなお存在する」とし、民法570条の「隠れた瑕疵」の存在を認めています。
ただ、この裁判例では、瑕疵につき約8年以上前に発生したものであり、事件のあった建物は取壊されていることなどから、嫌悪すべき心理的欠陥は相当程度風化していると判定した。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人Authense法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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