中途解約金条項の有効性について

違約金

賃貸借契約において賃貸人・賃借人間で様々な特約を定める場合があります。特に、一定の事由があった場合に賃貸人が賃借人に対して請求できる金額をあらかじめ合意しておくと賃貸人は損害の立証をしなくて済むので、多くの場合違約金条項が定められています。

違約金の額については、契約自由の原則から、原則として自由に決めることができますが、それがあまりに過大であれば、公序良俗(民法90条)に反して、無効となる場合があります。

近年の不況下では、賃借人に賃貸借契約を途中で解約されてもすぐには次の賃借人を見つけることができない場合が予想されます。そこで、賃借人が中途解約した場合に、賃貸人が新たな賃借人を確保するまでの間、建物を有効利用できないことによる損害を填補する違約金条項を定めておく場合があります。
このような中途解約金条項は、どのような場合に無効と判断されるのでしょうか。

まず、賃借人が個人消費者である場合には、消費者契約法の適用があります。 裁判例では、「一般の居住用建物の賃貸借契約においては,途中解約の場合に支払うべき違約金額は賃料の1ヶ月分とする例が多数と認められ,次の入居者を獲得するまでの一般的な所要期間としても相当と認められる」と判示し、1ヶ月の範囲でのみ違約金を有効とし、これを超える部分については消費者契約法9条に違反するとして無効にしました(東京簡裁平成21年2月20日判決・東京簡裁平成21年8月7日判決)。

一方で、賃借人が会社である場合には、消費者契約法の適用はありません。しかし、裁判例では約3年2ヶ月分の賃料の違約金が請求可能な約定は、賃貸人に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるとして、2年2ヶ月分は公序良俗に反して無効としました(東京地裁平成8年8月22日判決)。

この裁判例では①違約金の金額が高額になると、賃借人からの解約が事実上不可能となり、経済的に弱い立場であることが多い賃借人に著しい不利益を与えるとともに、賃貸人が早期に次の賃借人を確保した場合には事実上賃料の二重取りに近い形になるので、公序良俗に反して無効となる場合があると判示し、②本件では賃借人が明け渡した本件建物について賃貸人が次の賃借人を確保するまでに要した期間は数ヶ月程度である以上、1年分の賃料の限度で有効とするにとどめました。

中途解約金条項を定める場合には、解約後に通常どの程度の期間で新しい賃借人を確保できるどうかが重要となるので、その点を注意して違約金を設定する必要があります。無用なトラブルを避けるためにも、今一度違約金条項の見直しをすることをおすすめします。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。