定期建物賃貸借とは?

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不動産や、マンションを購入しても一時的な転勤などによって、せっかく購入した物件を長期間空けるということが起こりえます。

このような時に、自己の物件を賃貸に出して収支を得るという方法があります。 しかし、転勤から戻ってきた時には必ず賃貸借契約を終了させ、賃借人から物件を確実に明け渡してもらわないと住む場所がないという不測の事態になってしまいます。 このような時に、賃貸借契約に期間をつける定期建物賃貸借契約という契約があり、今回はこの定期建物賃貸借契約についてご説明します。

なぜ、定期建物賃貸借契約でないといけないのか?

定期建物賃貸借契約でない場合には、契約期間後も賃貸人が異議を述べないまま、賃借人が居住している場合には当然に契約が更新されます(法定更新。借地借家法26条)。また、賃貸人による更新拒絶や解約の申し入れは正当事由がないと認められません(借地借家法28条)。

この規定の趣旨は、賃借人の居住の利益を保護するためであり賃借人に有利な規定となっています。そして、この規定は借地借家法30条で強行規定とされており、この規定に反し、賃借人に不利な規定を契約で締結することを禁じています。

したがって、通常の建物賃貸借契約を締結してしまうと、転勤から戻ってきたとしても賃貸借契約を終了させることができず、せっかく購入した物件に住めないなどの不都合が生じてしまいます。

このような不都合を解消するために借地借家法は更新のない定期建物賃貸借という契約方法を規定しています(借地借家法38条)。

定期建物賃貸借契約によって、建物を賃貸した場合には借地借家法30条の強行規定が適用されません。 このことから、借地借家法26条の法定更新、借地借家法28条の正当事由の規定とは異なった契約をすることができ、契約締結時に定めた期間で賃貸借契約を終了させることが出来ます。 では、定期賃貸借契約を締結するにはどのような手続きが必要か。 定期賃貸借契約を締結するためには、書面によって契約を締結する必要があります(借地借家法38条1項)。また、賃貸人は建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間満了によって建物賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付し、説明する必要があります(書面交付義務。借地借家法38条2項)。 これら手続きを行ってはじめて、定期建物賃貸借契約という更新のない契約を締結することができます。

しかし、この煩雑な手続きを行ったとしても書面交付義務における書面は、たとえ賃借人が契約の更新がなく、期間満了により契約が終了するという認識があったとしても契約書とは別個独立するものでなければならないという最高裁の判決もあり(最判平24年9月13日)、かなり厳格な要件の下でのみ認められています。

なお、定期建物賃貸借契約は、賃貸人の意向によっては更新することが出来ない契約なので、そもそも入居者が見つかりにくいというデメリットがあります。ただ、この点については、建物全体を定期建物賃貸借契約にすることにより、迷惑行為等を行う不良入居者を追い出しやすくすることができるので、住環境の維持・向上という面からはメリットもあります。 したがって、定期建物賃貸借契約によって不動産を賃貸するか悩んだ場合には、煩雑な手続きや入居者が見つかるかなどの事情も考慮した上、所有物件をどうするか判断してみるといいでしょう。

この記事のコラムニスト

森田雅也
森田雅也(弁護士)
弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。
上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。
[著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。
[担当]契約書作成
森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。