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BOOK Review――この1冊 『デイトレード』

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『デイトレード』 オリバー・ベレス/グレッグ・カプラ 著/日経BP刊 2200円+税

新型コロナによって、テレワークや在宅勤務が日常化する中で、その合間にデイトレードをはじめたり、こうした危機に備えて投資を始める人が増えているという。

そこで今月はデイトレードの“古典”といわれる一冊をご紹介したい。

投資といって、PCやスマホで「資産形成」「投資初心者」などの検索ワードを入力すると、金融機関などが運営する、投資初心者向けのホームページが多数ヒットする。そこでは「低金利時代だからこそ、運用で資産を増やしましょう」「リスクを低下させるには、株や不動産、債権などへの分散投資がおすすめです」など、資産運用の重要性や初心者でも安心の投資手法などが丁寧に説明されている。読んでいると「ふむふむ、確かにその通りだな。何か手堅い商品を探して、少額の投資から初めてみようか」なんていう気分になってくるのである。

しかし初心者からすると、ちょっと腰が引けてしまう投資の世界。どうやって銘柄を選べばいいのか。どんなリスクがあるのか。そもそも、何から準備すればいいのか。最初の資金はどれくらい必要なのか。分からないことだらけだ。

そんな人におすすめしたいのが本書だ。著者は、ウォール街のデイトレーダーとして、日々しのぎを削るオリバー・ベレスとグレッグ・カプラ。世界中のトレーダーから信頼されるマーケット情報サイト「Pristine.com」を運営するプリスティーン・キャピタル・マネジメント社の共同創業者でもある。

本書が重点を置いて解説するのは、投資のテクニックではない。二人の著者が投資に関するあらゆる失敗を経験しながら身に付けた、デイトレーダーがもつべき基本的な心構えだ。

2002年の発行以来、アメリカだけでなく、日本の投資家にも支持され続けている本だ。簡潔かつ率直な語り口で投資のなんたるかを説明しており、初心者にも読みやすい。著者の経験に裏打ちされた、独自の投資哲学ともいうべきしっかりとした考え方が土台にあるからこその説得力もある。

以下に、投資の基本について説明した箇所を引用する。

株式市場は本当のところは極めて単純に機能しているのである。(中略)株価、そう、マーケットには、次の3つの現象しか生じないのである。

1)上昇
2)下落
3)横這い

それだけである。(中略)何とも単純ではないか。しかし「単純」であることは「容易」であることと同義ではない。(中略)トレーディングの機能は比較的単純である。あまりにも単純であるがゆえに重要性を看過してしまう、あるいは無視してしまう。もう1つの根本的な真実を考えてみてほしい。

真実――買いが売りを上回る場合、株価(あるいはマーケット)は上昇するしかない。

本書ではまた、次に引用するように、ビギナーズラックで成功するよりは「よい負け方」を経験し、きちんと原因を分析して次につながる教訓を得る方がよほど大事であるということも、繰り返し述べられる。

技術を完璧に身につけ、信じられないほどの機敏さでマーケットを制する者について、たまたま天賦の才があったとか、先天的な勘があるのだと思いがちである。しかし、それらは真実からはほど遠い。苦痛。損失。フラストレーション。混乱。不安。支離滅裂。こういった事柄が、大いなる高みに達するために必要不可欠な教師となるのである。今日、ある程度成功しているトレーダーは、過去に敗者の苦しみと痛みを味わっていることは間違いない。人は成功からは多くを学ばないものである。

書かれていることはしごくまっとうで筋が通っている。投資だけでなく、人生で経験する様々な物事に応用できそうだ。「こうすれば必ず成功する」といったテクニック論は出てこないが、時代や状況に左右されない投資の基本を、ごく簡単な言葉で述べている本ならではの安心感があり、投資の知識がなくても手を伸ばしてみたくなる。

投資を始める前の準備として読むのはもちろん、投資を始めて少し経った頃、自分なりに勘をつかんだ頃と、折に触れて何度も読み返したい一冊だ。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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