ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

BOOK Review――この1冊 『しょぼい喫茶店の本』 池田達也 著(1/2ページ)

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

『しょぼい喫茶店の本』 池田達也著 百万年書房刊 1400円(本体価格)+税

喫茶店は、1980年代のピーク時には15万軒あったものの、今やその半分以下の6万7千軒にまで減少している(全日本コーヒー協会調べ)。チェーン店が店舗数を伸ばしている一方で、個人経営店は苦戦しているのが現状だ。

そんな喫茶店のマスターといえば、親の店を継ぐか、脱サラした40代以上の男性が思い浮かぶ。カフェまで広げれば、お金を貯めた30代女性や主婦がこだわりメニューでもてなす、そんなイメージが一般的だろう。

2018年3月、東京・中野区の新井薬師前に大学卒業を間近に控えた一人の青年・池田達也氏が喫茶店をOPENした。その名も「しょぼい喫茶店」。カネなし、コネなし、ウデなしのないない尽くしの中、「100万円以内」の喫茶店開業を思い立つ。本書は、そんな「しょぼい喫茶店」ができるまで、そしてできてからを綴った実話である。

池田氏は、就活に失敗して、自分は普通の人生を送ることができないと死ぬことさえ考える。「普通」というのが曲者である。どんなにダイバーシティだ、働き方の多様化だと言われようが、地方在住の親、祖父母世代に通用するわけがなく、いい大学に入り、いい会社に入って、一生勤め上げるのがまだまだ「普通」、デフォルトなのである。

池田氏が就活に失敗したのには、前提がある。小中学校と活発でリーダー格だった少年が、高校生になって部活の顧問に暴言を吐かれ続け、自己嫌悪を抱え、人の顔色を見ながら生活するようになっていく。大学生になってもアルバイト先での周囲の視線や、就活で自分を演じることに疲れ果てる。

こんなことでは自分は大人になれない。レールから外れてしまったんだ。就職ができなければお金を稼ぐことはできない。どうやって生きていけばいいんだろう。

そんな彼を救ったのが、親友の何気ない一言だった。自分に期待するのをやめて、だめな自分なりにやっていこう。「自分の価値基準で幸せを決める」生きづらさを抱えていた池田氏の最初の一歩だった。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

ページのトップへ

ウチコミ!