地価LOOKレポート令和4年(2022)第1四半期分が公表 対象地区20カ所が削減に(2/2ページ)
2022/06/10
削減20地区について
さて、次は冒頭にふれた今回からの削減20地区についての話となる。顔ぶれはこうなっている。
住宅系地区
東京都 品川、豊洲、有明、立川
神奈川県 新百合ヶ丘
愛知県 覚王山
京都府 桂
兵庫県 六甲
奈良県 奈良登美ヶ丘
商業系地区
岩手県 盛岡駅周辺
東京都 日本橋、赤坂
神奈川県 元町
富山県 富山駅周辺
岐阜県 岐阜駅北口
大阪府 中之島西、OBP、江坂
愛媛県 一番町
鹿児島県 鹿児島中央駅
確かにこれらのなかには、近隣の他の地区の動向を見ればおおむね分析に足ることで、わざわざ調査対象に入れておく必要がなさそうな地区もあるが、逆にまったくそうでない地区もある。例えば、「岩手県 盛岡駅周辺」「愛媛県 一番町」「鹿児島県 鹿児島中央駅」だ。これらについては、それぞれが調査対象から抜けることで…
「東北北部3県エリア」
「四国西部・南部2県エリア」
「九州東部・南部2県エリア」
こうしたかなり広範囲のエリアにおける中心都市が、地価LOOKレポートのウォッチング対象から外れることになる。加えて「富山県 富山駅周辺」も、それに近い傾向をもつものといえるだろう。
つまり、岩手や愛媛、鹿児島、富山各県の人に対してはやや無神経な表現になるが、現在これらの地区は、大都市・拠点都市として国がわざわざ地価動向を注視し、分析・発表するほどの場所ではなくなったということにもなるわけだ。
なお、今回の国交省のリリースには、調査対象を削減した理由は書かれていない。しかしながら、上記削減に対しおそらく多くが違和感をもたないであろう辺りに、いわゆる3大都市圏や地方4市(札幌・仙台・広島・福岡)へのさまざまな集中が進む、現下のわが国の状況が示されているともいえそうだ。
地価LOOKレポートとは?
最後になったが、地価LOOKレポートとは何か? について添えておこう。
国交省が四半期ごとに公表する「地価LOOKレポート」は、公示地価・路線価・基準地価のいわゆる3大公的地価調査に次ぐ第4の指標として、他の3者にはない頻繁な更新をもって、われわれに日本の土地の価値にかかわる方向性を指し示してくれるものだ。
特徴としては、地価の動向を表す9種類の矢印や、多用される表や地図により内容がとても把握しやすい点が挙げられる。ただし、3大公的地価調査とは異なり、土地の価格そのものが示されるわけではない。地価のトレンドを調査し、分析する内容の報告書となっている。
全国80(今回より)の調査対象地区すべてにつき、不動産鑑定士による具体的なコメントも添えられている。それぞれのエリアの実情を理解するうえでよい助けとなるだろう。
留意すべき点として、今回記事でも触れているとおり、地価LOOKレポートは全国の主な都市部の地価にのみ対象を絞っている。正式名称「主要都市の高度利用地地価動向報告」が示すとおりとなる。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。