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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

国を守るとは、国民を飢え死にさせないこと! 今こそ農業大国日本を創る(3/3ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2022/05/18

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【食料自給率向上が国防の鍵?】

世界の穀物生産量における国別ランキング(データ:農水省国際統計global note)で、日本は181カ国中37位である(2020年)。1位は中国で日本の56.35倍、2位米国、3位インドと続く。

穀物とは、コメ、小麦、大麦、トウモロコシ、蕎麦などで、勿論耕作面積によって左右される数字ではあるが、一方で同じ年の農業生産物・食料品の輸出額ランキングを見ると、世界217カ国中1位は米国だが2位にはオランダが入っている(日本は43位)。

オランダは比較的冷涼な気候であり、国土も狭く、けして農業条件が恵まれているとは言えない国で、農地面積も日本の約40%程度しかないにも係わらず、高度な生産技術を用いた大規模農業の展開を国家が支援し、第二次世界大戦後から農地の集約化(農家1戸あたりの農地面積は25ha日本は1.8ha)を進め、“スマートアグリ”と呼ばれる最新の情報通信技術や環境制御技術を導入したことにより、土地生産性は世界TOPレベルとなったのだ。

日本の農家の現状は、狭小農地しか持たない生産農家が多く、狭い土地に多くの資本・労働力を費やし、高収益を上げようとする「集約農業」が主流であったが、高コストのために農産物の単価は高く、国際競争力は弱いと言わざるを得ない。

しかるに、政府の農業保護率(農業総収入額に対する農業生産者支援補助金などの財政的支援額)は世界第5位という高水準で、専業農家は減少する一方なのに、農協組合員は増え続けるという矛盾に満ちた産業だ。

そんな状況下でも、世界中で日本食ブームが拡がり、日本の食品輸出に追い風が吹き始めている。政府は、2019年に農水産物・食品の輸出目標「1兆円」を掲げ、農業活性化にチャンスが訪れているのだ。

拙者の“小さな仕事”で紹介した農家も元は専業農家であったが、耕作面積が狭く、小作地を借りて営農していたが、技術革新の波に乗れず、先代から受け継いだご子息も、そこから抜け出すことは叶わなかったことが伺えた。結局農地は荒れ果て、生計もままならない状態で亡くなられたようで、残ったのは耕作放棄地と住宅ローンの残った農家住宅だけ。

このような事例は、実は国内各地に散見され、農家住宅の空き家問題は、農地法という諸刃の剣によって遅々として進まないのが現実だ。

今こそ日本の農業が息を吹き返す施策が必要だ。先ず農地の集約化を行い、農地というだけで一括りにせず、生産性の高い農地と農業以外の利用価値が見込まれる農地を峻別し、容易に用途変更が出来るような緩和策を講じるべきだ。

また、既に50年が過ぎた市街化区域と調整区域の線引きの見直しなども迅速に進めるべきで、国土の整備は農地の整備を最優先と位置付けなければならない。

そうすれば、近い将来、日本の農業が大規模化し、ブランド化することによって当然食料自給率も上がり、且つ輸出拡大につながれば、実質的にこの国が富むのである。

それがすなわち、持続可能な国家の礎となり、国民は飢えることなく、侵略なくして国を守る形が見えてくると思うのだが、皆さんどうだろう。

〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜
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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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