いま日本人の4割は病院に通う——雇用や高齢化の“ここ10年”がよく分かる「人口100人でみた日本」
朝倉 継道
2022/03/11
イメージ/©︎morganka・123RF
10年で日本の姿はどう変わった?
厚生労働省が公表している厚生労働白書に、「人口100人でみた日本」という面白い資料が添えられている。日本の人口を100人であると仮定して、雇用・福祉・年金・医療など各分野にわたる数字を拾い集め、これをまとめたものだ。換算の効果により、大変分かりやすいレポートになっている。
なお、この「人口100人でみた日本」のスタートは平成22年(2010)版からだ。現在最新となる令和3年(21)版はそれより11年目のものとなる。
そこで、この記事では、21年版の数字と10年前の2011年版の数字を見比べ、両者の間での違いや動き、そこから示される時代の変化などをいくつかピックアップしながら追っていこうと思う。
なお、各年版のレポートをそれぞれ詳しくご覧になりたい方は、以下のリンクを辿ってほしい。
・令和3年版(2021)厚生労働白書「100人でみた日本、日本の1日」
・平成23年版(2011)厚生労働白書「100人でみた日本、日本の1日」
・(他の年版はこちら)厚生労働省「白書、年次報告書」一覧
非正規労働者を示す数字の明確な伸び
まずは雇用関係を見ていこう。日本を「人口100人の国」であると仮定して……
見てのとおり「自営している人」の数字が21年版でやや減っているのに対し、「雇われている人」の数字は伸びているのが分かる(11.2%増)。この間にどんな変化があったのか、次の各数字を比べてみよう。
まず見えてくるのは、ほぼ非正規労働者を示すといってよい各数字の増加だ。パート、アルバイト、派遣、契約社員・嘱託(請負)、これらすべてが11年版に比べて21年版では値を伸ばしている。
その結果、「短時間で働いている人(週35時間未満)」(パート、アルバイトを主に含むであろう)の伸び率は、この10年で33.6%増と著しい。
さらに、「雇われている男性」の伸び率(6.1%)に比べ「雇われている女性」の方が高い(18.1%)ことにも、その影響が及んでいることは間違いないはずだ。
老齢年金の受給者が一気に増加
次に、福祉と年金を見ていこう。
見てのとおり、老齢年金の受給者がこの10年で26.4%増と著しい。当然その背景には高齢化があるわけだが、それに伴うかたちで「介護サービスを受けている人」も21.2%の増加となっている。
一方、それらに比べると、高齢化との関りが深いとされる生活保護受給者の数については14.3%増と、やや抑えられた結果となっている。
日本人の4割はいま「通院者」
次に、医療の分野を見てみよう。日本人の高齢化はこちらにも当然波及している。まずはこの数字だ。
間違いではない。21年版の数字は、日本人が全部で100人だとしたら、そのうち約40人もの人々が「病気やけがなどによる通院者」であることを示している。
もっとも、この数字、世代によってはさほど驚きを感じられないものだろう。
なぜなら、数字をさらに拾ってみる。同じ厚労省の「2019年国民生活基礎調査」の中に上記を世代別に分けたデータがある。「性・年齢階級別にみた通院者率」だ。「人口100人でみた日本」に合わせて「100人中何人」で記していこう。
このとおり、通院者率は50代から顕著に跳ね上がり、70代からは100人中70人、つまり7割を超える。そのうえで、「人口100人でみた日本」における65歳以上の数の推移を見てみよう。以下のとおりとなる。
身につまされる数字だが、これが高齢化社会の現実となる。
減る小中高生、踏みとどまる大学生
最後に、日本を人口100人の国であると仮定して、学生・生徒は何人か? その数字を挙げてみよう。
少子化に伴い、小・中・高校生がこの10年で減少するなか、大学生・大学院生の数字は踏みとどまっている。背景にはもちろんのこと、大学進学率の増加があることに間違いはない。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。