女性の労働市場を襲うコロナ 総務省「労働力調査」2021年平均結果を考察(2/2ページ)
朝倉 継道
2022/02/22
バッファとして機能させられた「若い女性」
基本集計に示されている「雇用形態、年齢階級別 役員を除く雇用者の推移」のデータを見ていこう。こちらでは、コロナ禍の直接的な悪影響が如実に数字に表れている。
注目は「役員を除く雇用者」に占める「非正規の職員・従業員」の数と割合だ。非正規の職員・従業員は、19年から21年にかけては2165万人から2064万人へ、およそ101万人その数を減らしている。さらに、これに符合するかたちで20年および21年においては、全年齢階級において上記割合の前年比が下がっている。
なお「正規の職員・従業員」は、逆にこの間62万人ほど増えている(19年:3503万人 → 21年:3565万人)。つまり、両者で明暗がくっきりと分かれている。
これについて、想像しうる理由は、単純に「バッファが機能した」ということだ。コロナ下の2年間で、多くの非正規の職員・従業員が、気の毒ながらその本来の機能たる雇用の調整弁の役目を果たしている。つまり仕事を失っている。
また、その内訳を見ると男女で差が大きく、ダメージはとりわけ若い世代の女性に著しい。以下にその数字を挙げてみよう。
「女性の年齢階級別 19年 → 21年 非正規の職員・従業員の増減数」
15~24歳 | 14万人減(153 → 139万人) |
25~34歳 | 22万人減(177 → 155万人) |
35~44歳 | 32万人減(295 → 263万人) |
45~54歳 | 4万人減(375 → 371万人) |
55~64歳 | 1万人減(292 → 291万人) |
65歳以上 | 12万人増(182 → 194万人) |
なお、そもそも非正規の職員・従業員には女性が多い(21年平均で男性652万・女性1413万)。そのため「犠牲者」の数も当然女性に増えることとなるが、実数としてはさきほど「およそ101万人その数を減らしている」と記したうちの実に半分以上を25~44歳の女性が占めている。24歳以下を加えると7割に近い。つまり、コロナは不安定な就労にいそしむ若い女性を主にいじめている。
以上は、今回のコロナ禍における社会への影響のうち、もっとも深刻な部分を穿つ数字のひとつといってよいだろう。
禍か、どこ吹く風か、追い風か?
コロナ禍は、われわれの社会にまさに「まだら」にインパクトをおよぼしている。例えば、今回の労働力調査で明らかになった「主な産業別就業者数・雇用者数の推移」を見ると、「宿泊業、飲食サービス業」では2021年に22万人が減少しているが、「医療、福祉」では同じ数がこちらは増えている。「生活関連サービス業、娯楽業」では10万人が減ったが、「情報通信業」では16万人が増えているといった具合だ。
よって、コロナ禍は、多くの人が気付いているとおり、人それぞれの置かれた立場によって「禍」であったり、「どこ吹く風」であったり、ともすれば追い風だったりもする。その点で、どうもこの病気は始末がよくない。社会に少しずつ悪い分断を生んでおり、わが国ではむしろそのことの方が病(やまい)として、後遺症も含め重い可能性もある。
そこで、われわれが忘れてはならないのは、この「禍」を文字通り「禍」として受けとめざるをえない人々のことだ。
社会を自らの視点からだけでなく、多角的に俯瞰し、理解・共感していく、やや高度な訓練をわれわれはいま要求されていると思った方がいいだろう。
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。