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団塊の世代を洗った定年の波 調査対象全員が高齢者となった「中高年者縦断調査」

朝倉 継道朝倉 継道

2021/12/15

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イメージ/©︎theshots・123RF

団塊の世代とその前後世代を刻々とリサーチ

厚生労働省が公表している各種調査報告のなかに「中高年者縦断調査」という面白いレポートがあるので紹介したい。11月24日に最新版となる16回目のリリースが行われている。

この調査の興味深いところは、タイトルどおり時間を縦断したかたちで集計が行われている点にある。具体的には、ある年代に生まれた人々について、その就業状況や世帯の様子、健康といったデータの変化を刻々と年次で追っていく。

対象となっているのは、2005年10月末時点で50~59歳だった全国の男女の方々だ(集計人数1万7084)。生年月でいうと、1945年11月から1955年10月までの人がこれにあたっている。いわゆる団塊の世代(1947~1949年生まれ)を中に包み込んだかたちとなっている。

加えて、これらの人々は今回分の調査をもって、いよいよその全てが65歳以上となった(65~74歳)。全員が「高齢者」となるわけだ。よって、その点においても今回公表分の内容は、当調査におけるひとつの劃期にあたるものといえるだろう。

世代を洗った定年退職の波

では、「第16回中高年者縦断調査」の内容のいくつかを見ていこう。

まずは就業の状況からだ。06年に公表された1回目の調査より続く全16回分のデータを眺めていくと、際立って大きな数字の減少を示している項目がひとつ見つかる。

「正規の職員・従業員」だ。第1回調査では全体の38.5%が「(私は仕事をしており)正規の職員・従業員である」と回答していたものが、今回分の調査では3.5%に激減している。これはとりもなおさず、この間、定年退職の波がこの人たちの人生を順次“洗った”ことを意味している。

すると、そのようにして正規の職員・従業員ではなくなった人は、現在どんな立場にあるのだろうか。

男性の場合「仕事をしていない」が53.1%を占めている。これに「パート・アルバイト」16.2%、「労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託」11.4%が続く。

一方、女性では「仕事をしていない」が60.5%にのぼる。「パート・アルバイト」21.0%がこれに続くかたちとなる。

すなわち、かつてはいわゆる正規雇用されて働いていた男性の半分と少し、同じく女性の約6割が、現在はリタイヤしているとの結果だ。

定年はやはり人材がもったいない?

一方、「正規の職員・従業員」同様に正規(?)の立場といえる「自営業主、家族従業者」と「会社・団体等の役員」のデータを見ると、こちらは減少の度合いがかなり低い。

「自営業主、家族従業者」の場合、第1回調査では全体の15.5%を占めているが、今回もさほど割合は落ちておらず12.9%だ。「会社・団体等の役員」では、第1回調査が4.7%、今回は3.0%となっている。

さらに、第1回調査で「自営業主、家族従業者」であるとした男性のうち、現在「仕事をしていない」とするリタイヤ組はそのうちの22.0%。同じく女性は34.0%に留まる。

また、第1回調査で「会社・団体等の役員」であるとした男性のうち、現在「仕事をしていない」とするリタイヤ組はその36.1%。同じく女性は37.1%となっている。

つまり、さきほどの「正規の職員・従業員」に見られたリタイヤ組が半数を超える状況に比べると、「自営業主、家族従業者」および「会社・団体等の役員」は、ざっといえば高齢となっても比較的多くが従前と変わらない立場で活躍し続けている図式となる。

もっとも、これは当然ながらあたりまえのことといってよく、これらの立場にあっては定年制度が設けられているケースが少ない。しかしながら、本来、自然の話として、人の老いは個人差をもって進行するため、経営者は皆年をとっても若々しく、勤め人はそろって衰えが早いなどといったものでもない。

よって、わが国において、まるで食品の賞味期限のように一律な定年制度が国民平均寿命を大きく下回る水準で運用されていることは、やはり単純に「もったいない」部分が多い話であるといえそうだ。

4世帯に1世帯が「親なし子あり」は不思議? 納得?

次に世帯の状況を見ていこう。過去より増加の度合いが著しいのが「夫婦のみの世帯」と「単独世帯」だ。

調査対象者が50~59歳だった第1回調査において、「夫婦のみの世帯」の全体に占める割合は21.4%だった。それが今回(第16回)は45.9%と、大幅に増えている。

同じく「単独世帯」はかつては4.8%だったが、今回は11.6%とこちらも倍以上の増加となっている。すなわち、両方合わせて57.5%=6割近くが、現在は2人以下で暮らす世帯となっている。

なお、以上の変化については、子どもの独立やパートナーの死去といったその理由が容易にイメージしやすい。

一方、不思議な数字もある。「親なし子ありの世帯」のデータだ。

第1回調査では39.4%となっていて、調査対象者が当時50代であったことを想うと、「独立前の子どもがいる家庭が4割近く」との理解で、さほど違和感は生じない。

だが、その後15年が経った今回分でも意外に数字は下がっておらず、24.0%となっている。あくまで私個人の印象だが、こちらは何とも「違和感アリ」だ。

なぜなら、今回分の調査対象年齢である65~74歳の親の子どもといえば、私が知るケースを思い浮かべる限り、皆とうに独立し、親元には住んでいない。一方で、親の介護のため子どもが実家に帰って来るといった例も、この年代の親たちにあって、私は未だその始まりを見ていない。

然るに、上記における24.0%=約4世帯に1世帯という割合は、印象としてかなり大きいと感じざるをえないのが正直なところだ。

とはいえ、これは当調査において厳密かつ現実に拾えている数字であって、その意味において正確なものだ。自身の見聞きする範囲のことと比べ、私が勝手に悩んだところで、それはまさに栓ないことというほかないだろう。

なお、上記24.0%の想像される内訳としては、子どもが単身で親元に暮らす場合と、結婚した子ども夫婦が親の家に同居している場合が主に考えられる。

そこで、前者を想うとき、ニートやひきこもり、さらには「子ども部屋おじさん(おばさん)」等を思い浮かべる人も多いと思われるが、当調査はあくまで親世代の人生にフォーカスしているため、そちらは掘り下げの対象とはなっていない。 

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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