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今日もどこかの街で美食探訪 ねこやま大吉のグルメ狩人

北区(大阪市) 秘伝の出汁と昭和レトロ感が隠し味 お好み焼きの名店「美舟」

ねこやま大吉ねこやま大吉

2020/06/26

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たこ焼き・お好み焼き 「粉もの天国」大阪

キタの中心地「梅田」。大阪駅・梅田駅を中心に百貨店・ホテル・ファッションビル・オフィス街ほか、西日本屈指の商業施設が建ち並ぶ。

江戸時代、このエリアには畑と低湿地帯が広がっていた。土を埋め開拓したので昔は「埋田」と呼ばれていた。「埋」の字の印象が悪いということもあり、露天神社・綱敷天神社ゆかりの紅梅から文字を取り、現在の「梅田」と呼ばれるようになったという。常に開発が進む梅田のなかで、阪急東通商店街にはいまだ昔の風景が残っている。

大阪といえばたこ焼きと、ガチンコのお好み焼き。その歴史は古く、令和から遡ること400年。安土桃山時代、千利休が茶会の場で茶菓子として出していた「麩焼き」が始まりといわれている。小麦粉を水で溶き薄く焼いた物に芥子の実を入れ、山椒味噌・砂糖を塗って出されていた。

そんな歴史を持つお好み焼きが関西で一般的になったのは、戦後の復興期。どんどん焼から進化し、貧しくてもお腹いっぱい食べられるよう、小麦粉にキャベツを混ぜ、カサ増しして食するという庶民の知恵でもあった。また、関東では鉄板に文字を描く文字焼が、もんじゃ焼きに進化したのもこの頃である。

昭和23年創業 昭和の残り香を漂わす「美舟」

25年ぶりに暖簾をくぐったのは東梅田、阪急東通商店街にある、昭和の残り香を漂わす「美舟」。暖簾こそ新調されているが、その佇まいはまるで昭和のまま、時が止まっているかのよう。店外の食品サンプルが展示されているところには阪神タイガース優勝記念のたばこ(1985年吉田義男監督時代)が、その存在を強烈に主張している。店内はいまどきの店とは違う換気システムで、期待通り、油とソースが充満している。

そしておひとり様用の鉄板もいい。「いらっしゃいませ」「おかえりなさい」と話しかけられているようだ。このスタイル、大阪では一般的。早速、美舟の“おかん”に「豚焼」をお願いする。

よくあるお好み焼きの「○○玉」の玉は、玉子の「玉」で、昔は追加でトッピングするちょっと贅沢なものだった。しかし美舟の豚焼には「卵」が最初から入っているのが嬉しい。鉄板に(通常、鉄板の隅にはお焦げなど落とす口があるが、ここ美舟にはそんな気の利いた物はない)火を入れ、しばし待つ。慣れない挙動におかんが「特別に作ったるわ」と目の前で混ぜ始めた。「にいちゃん、今日は特別やで」。

豚肉を先に鉄板にのせ、コテで切り、生地をのせる面積分に広げていく(焼きあがりの際、万遍なく肉の触感が楽しめるように)。生地を縦に切りながら空気を入れていくこと30回。さらに右回転15回、左に10回転。手際よく豚肉の上に形成する。「4分触ったらあかんで」と魔法の言葉を残し厨房へ消えていく。ふっくらと厚みのある大阪のお好み焼きの完成である。

甘めのソースをたっぷりとかけ、青のり・鰹節をふりかける。切り方は格子切りとする。ピザ切りは仲間とシェアする切り方。格子切りは1人で楽しむシェアなしの切り方。つまり1人1枚の法則である。関西から西に多い。箸を使わずコテで直接口に運ぶ。文句なしに旨い。出汁の効いた生地に包まれたキャベツは、サクサク感を失うことはない。至福の逸品。

淀川水系の水と秘伝のレシピの集大成である豚焼。25年前と変わらぬ味に舌鼓を打っていると、「にいちゃん閉店や」とラストオーダーも聞かれずに勘定の催促。でも丁度よかった。新大阪発東京行き『のぞみ』に乗る時間が迫っている。

後ろで「おおきに」の声が。今度は25年ぶりといわず、すぐに再訪しようと決めた。

今回お邪魔した美味しいお店 :『美舟』
住所:大阪府大阪市北区小松原町1-17
交通:梅田駅・東梅田駅 徒歩5分

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この記事を書いた人

編集者・ライター

長年出版業界に従事し、グルメからファッション、ペットまで幅広いジャンルの雑誌を手掛ける。全国地域活性事業の一環でご当地グルメを発掘中。趣味は街ネタ散歩とご当地食べ歩き。現在、猫の快適部屋を目指し日々こつこつ猫部屋を制作。mono MAGAZINE webにてキッチン家電取材中。https://www.monomagazine.com/author/w-31nekoyama/

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