ウチコミ!タイムズ
賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

神奈川県はなぜ特別な「県」なのか? ——『ドカベン』『SLAM DUNK』「鎌倉幕府」…その理由をひろってみる(1/2ページ)

朝倉 継道朝倉 継道

2021/12/24

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

鎌倉文化の象徴 鶴岡八幡宮/©︎scanar・123RF

神奈川県はなぜ特別な県なのか

気付いている人はかなり多いと思うが、日本に43ある県のうち、神奈川県はどこか“特別”だ。

どう特別かというと、なんとなくメンタルな意味でのポジション付けが高い。特に、神奈川県のうちでも横浜、鎌倉近辺からいわゆる湘南地区にかけてのエリアにその雰囲気がつよい。そのため、主にはそれがあふれ出すかたちで、神奈川県の心理的な地盤はいつも全体に浮揚している。今風にいえば、周囲に対してマウントがとれている(笑)。

神奈川県は、なぜ多くの人の意識のなかで特別なのか? それを支える要素をいくつか拾い集めてみよう。

地方の平均であり代表が神奈川県

日本では、東京は、首都としていろいろな意味で地位の隔絶性が高い。

この「首都隔絶性」は、約1300年前の平城京に始まり、途中、封建時代の長い中断を挟んで近代以降リスタートすることとなった。いわゆる“この国のかたち”のひとつだ。そこで、「首都東京」に対する東京以外の「地方」というシンプルな図を思い浮かべたとき、神奈川県は後者を代表する位置にうまくおさまりやすい。

その理由は、第一に、なんといっても神奈川県が、府でも道でもなく県であることだ。すなわち43ある十把一絡げ(あえての表現)された地域のうちのひとつであること。つまりは平均性を明確に帯びていることだ。そのうえで、他の県や道、府がそれぞれに持っている、地方としての色を神奈川県は持たないことだ。例えば、ざっと四捨五入して神奈川県は標準語だ。これといった言葉の訛りや方言がない。

加えてこの県は、県でありながら首都圏という日本最大の都市部のうち、その“トロ”の部分ともいえる京浜エリアをも一端に含む。そのため、いわゆる都鄙(とひ・都会と田舎)という意味での偏りも持たない。

すなわち、神奈川県は、いなかを表す「県」のタグを一応は下げつつ、一方では都会のきらめきを片手に掻き抱くような場所でもあるわけだ。そのため神奈川県は、東京以外の日本の「地方」である46道府県を46で割った場合の解答欄にほどよく落とし込みやすい。そのことにより、ある種のマーケットを想定したとき、「神奈川県」は非常に使い勝手のよい、平均性または普遍性をアピールするためのシグナルになる。

『エースをねらえ!』はもともと埼玉が舞台

その分かりやすいひとつが、漫画・アニメだ。

『ドカベン』『エースをねらえ!』『SLAM DUNK』——昭和・平成の歴史に残る3大高校スポーツ漫画・アニメは、舞台がすべて神奈川県に設定されている。これらでは、高校という、本来はローカルに立脚するはずの舞台設定によって、全国という一律なマーケットの鍵穴を回してやるためのカギとして、「神奈川県」が大きな役目を果たしている。

すなわち、ドカベンの明訓高校をその校名のモデルのまま新潟県の学校であるとしたり、野球が強いからといって高知や広島においたりしてしまっては、特にこの作品の連載が始まった昭和(都会と地方の環境差がいまに増して甚大だった)においては、話がなかなかギアに乗って来なかったはずだ。


神奈川県の明訓高校(架空の高校)が舞台の『ドカベン』 出典/Amazon

一方、エースをねらえ!は、実は原作では埼玉県が舞台となっている(浦和市・当時)。ところが、テレビアニメではそこが勘案されたらしく、特に2作目では神奈川県横浜市がかなり明示的に背景として描かれる。そのため、「ひろみやお蝶夫人は外国人墓地の佇む港の見える丘に建つ高校に通っていた」と記憶している人が、いまも古いファンの多くを占める結果となっている。


浦和西高がモデルとなっているが、お蝶夫人のセレブ感たるや…『エースをねらえ!』 出典/Amazon

すなわち、やや冷酷なかたちだが、ここでは神奈川県というシグナルの持つ特別な効果が示されているといってよいだろう。神奈川県は、日本の地方の平均であり、かつ代表であるという意味で、特別な県なのだ。


神奈川県湘南地区が舞台のメインになっている『SLAM DUNK』 出典/Amazon

高校スポーツ作品ではないが、『キャプテン翼』も、サッカー王国・静岡という特殊な場所がもしも存在していなければ……「?」なのかもしれない。

次ページ ▶︎ | 首都と開港場を持った唯一の県 神奈川 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

ページのトップへ