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私って誰から部屋を借りているんだろう? 賃貸住宅の「かたち」をおさらいしてみよう

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イメージ/©︎garage38・123RF

え、不動産会社さんじゃなかったの?

「いま住んでいる部屋、あなたは誰から借りているの?」と、賃貸住宅に暮らす若者などに尋ねると、頼りない答えが返ってくることがある。

「え? 駅前のA賃貸センターさんじゃないかな」

ところがその会社、実は入居者募集を担当しただけの「客付け」仲介会社だったりする。その後、年月を経たいまは、入居者本人とはまったくつながりのない存在となっている。

「分かった! C保証さんだ。預金通帳を見ると、この会社が毎月家賃を引き落としていますから」……いやいや、それは家賃債務保証会社だ。

これでは普段の生活に支障はないにしても、いざ何か起きたとき心もとない。賃貸住宅を借りて住む場合、誰がその物件の所有者だったり、貸主だったりするのか、いま一度おさらいをしてみよう。

さらに、賃貸物件の管理についても整理しておこう。こちらは「誰があなたの物件を管理しているの?」だ。

あなたは誰から部屋を借りているの?

1.個人オーナーから借りている

もっとも多いケースがこれだ。あなたはそのアパートやマンションを所有している個人から、部屋かもしくは一戸建てであればその家を借りている。この場合、賃貸借契約書には賃貸人=貸主として、その個人本人の名前が書かれているはずだ。いわゆるオーナー・大家さんだ。

ちなみに、アパートや比較的小規模なマンションの場合、オーナーはその建物1棟をまるごと所有しているケースが多い。一方、もともと分譲物件として建てられた大規模なマンションなどでは、その部屋のみの持ち主=区分所有者であることが一般的だ。

そんなオーナーあるいは大家さん、入居者にとっては1対1の契約関係にある重要な相手だが、「一度も会ったことがない」との声も普通に多い。入居者募集~契約~入居に始まり、その後も仲介会社や管理会社(まとめて不動産会社)が両者の間に入り、オーナーに代わって諸々の世話をやいていることが多いためだ。

なおかつ家賃の受け取りも、近年はオーナーの口座が使われず、管理会社や家賃債務保証会社が代行するケースが多い。そのため、入居者とオーナーとの距離はますます隔たりがちなものとなっている。

2.法人オーナーから借りている

先ほどのオーナーが、個人ではなく法人の場合もある。企業などの法人が、住宅を貸しているケースだ。

この場合、大きく分けて3つのかたちがある。ひとつは、個人オーナーによるいわゆる事業の法人化だ。多くは課税対策が目的となっている。この場合、個人によるオーナー業と基本として実態は変わらない。

さらには、仲介会社や管理会社が、さまざまな理由で自ら物件の所有者となっていて、これを入居者に貸しているケースも少なくない。

加えて、不動産業務とは直接関係のない法人が、オーナーとなって賃貸住宅を営んでいるケースもある。

3.転貸主から借りている

いわゆるサブリースといわれるものがこれにあたる。入居者に物件を貸しているのは不動産会社の一種であるサブリース会社だが、物件そのものは彼らの所有物ではない。オーナーは別に存在する。サブリース会社が、そのオーナーから借りた物件を転貸、つまり又貸ししているかたちだ。

ちなみに「サブリース」とよく大掴みにいわれるが、正しくはオーナーとサブリース会社との間に交わされる契約をマスターリースと呼び、サブリース会社と入居者の間に交わされる契約をサブリースと呼ぶ。

またサブリース会社は、通常、後述する「管理をオーナーから全部委託」されている管理会社の立場もとる。なぜなら、サブリースをわざわざ選ぶオーナーに、自ら賃貸経営の現場で手間を労したいとする人は理屈としていないためだ。(ただし、複数の物件を持っていて、物件ごとに関与の仕方を変えるオーナーはいる)

誰があなたの物件を管理しているの?

1.オーナーの自主管理

物件をいつも掃除しているのはオーナー、備品交換や修理をしているのもオーナー(専門的な部分は業者に発注)、家賃の振込先もオーナー、入居者からの要望やクレームを受け付けるのもオーナー……と、そんなかたちで物件管理・入居者管理のすべてをオーナーが行うやり方を自主管理と呼ぶ。

古くは、この自主管理が賃貸経営における当たり前のかたちだった。昭和の下宿・アパートなどの多くは自主管理オーナーが運営していた。しかし、現在これを選ぶオーナーは一部のプロフェッショナル志向の人などを除いて減りつつある。代わって、管理会社への管理全部委託や、一部委託が選ばれることが多くなっている。

ちなみに、委託管理は過去にもあり、オーナーの親類縁者が管理人としてアパート等に住み込む例がたまに見られた。ただし、これらの多くは自主管理の範疇といってよいだろう。

2.管理会社への委託による管理

現在主流といえるかたちだ。ただし、内容にはさまざまあって、物件共用部分の定期的な清掃だけをオーナーが管理会社に依頼する自主管理に近いものから、清掃、メンテナンス、クレーム受理、家賃収受、入居者募集等々、何から何まで全部を管理会社に任せる全部委託まで、メニューは幅広い。

なお、家賃収受に関しては、管理会社からさらに家賃債務保証会社に委託されるケースが、近年一般化してきている。

3.元付け仲介会社への委託による管理

オーナーが、自らの物件の入居者募集を直接依頼する相手となる不動産会社が「元付け」仲介会社だ。その元付け仲介会社が流す物件情報をもとに、入居者募集を行うのが「客付け」仲介会社となる。

つまり、客付け仲介会社は、オーナーとの接点をもたない立場の不動産会社となるわけだ。ただし、同じ会社が物件によって元付け・客付け、それぞれに立場を変えることは普通にある。

そのうえで、十数年くらい前までよく見られたのが、上記の元付け会社が「管理も請け負っている」というケースだ。もっとも、管理といってもその内容は多くの場合、設備の故障が起きた際、業者に修理の依頼を取次ぐといった程度だった。なぜなら、彼らの「管理」とは、次回もまた入居者募集を任せてくれるはずのオーナーに対する、必要最小限のボランティアによるサービスであることが多かったからだ。

しかしながら、こうした片手間なやり方では、とても現代の入居者ニーズは満たしきれない。そのため、近年は管理そのものを本業として掲げる管理会社が、入居者募集や契約更新事務の請負も含めて、彼らにとって代わる立場となっている。

つまり、賃貸管理会社とは、物件管理および入居者管理もプロとして請け負う、仕事の範囲が広い元付け仲介会社、との見方もできるわけだ。

頼りない入居者に部屋を貸していたのは誰?

以上、「あなたは誰から部屋を借りている?」「誰があなたの物件を管理している?」――それぞれに対する主な答えを挙げてみた。現在、賃貸住宅に暮らしている人の多くがこれらのどれかに当てはまっていることだろう。 

なお、冒頭に挙げた「頼りない入居者」の場合、実態はこうだった。

「A賃貸センター」=客付け仲介会社
……入居者はこの会社の入居者募集広告を見て窓口を訪れ、物件を内見し、入居を申し込んだ。A賃貸センターはそれを下記のB管理につなげた。

「B管理」=管理会社 兼 元付け仲介会社
……入居者はこの会社の窓口で建物賃貸借契約書に署名捺印した。なおかつ、入居者が現在住む物件はこのB管理が管理している。

「C保証」=家賃債務保証会社
……B管理との契約に基づき、この会社が家賃債務保証(滞納時の対応等)を請負っている。入居者の口座から家賃も引き落としている。 

「Dさん」=物件個人オーナー・貸主
……B管理に対し、自らが所有する賃貸物件の物件管理、入居者管理、募集・契約更新事務等「全部の管理」を委託している。

このとおり、「いま住んでいる部屋、あなたは誰から借りているの?」に対する正しい答えは、最後のDさんだった。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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