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賃貸の謎費用、更新料とは? 「事務手数料までくっついている!」の声にも回答

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イメージ/©︎123RF

礼金に並ぶ「謎」費用?

賃貸住宅の「謎」費用として、礼金に並んでよく挙げられるのが更新料だろう。

【参考記事】いまさらだけど「礼金」って何? まけてもらわないと損をするの?

「毎月欠かさず家賃は払っている。ほかに何かサービスを受けたわけでもない。なのに『住み続けるなら払え』って? 一体何の対価なのかまるで納得がいかない」

「携帯電話だったら長期の利用者はむしろ特典をもらえるよね?」

このような不満が渦巻くまま、更新料を支払っている入居者も少なくないはずだ。

ちなみに、礼金同様、更新料にも地域性がある。更新料が設定される物件の多い地域、少ない地域、それぞれが存在する。

例えば、首都圏・関東は多い方にあたる。「更新料のない物件には住んだことがないので、全国すべての物件にあるものだと思い込んでいました」という人も、東京辺りだとたくさんいるはずだ。

法的根拠ナシ ただし最高裁のお墨付き?

更新料に法的根拠はない。国の法令や規則に定められているようなものではない。あくまで契約当事者間での自由な意思にもとづいて約束されるものだ。そのため、述べたとおり地域性があったり、更新料設定の多いエリアでもこれを取らない賃貸住宅オーナーがいたりする。

 

ただし、「賃貸住宅における更新料とは何であるのか?」について、公式の定義は行われている。それを行ったのは最高裁だ。「平成23年(2011)の判決」といえば、多くの業界関係者がこれを知っている。このなかで更新料は……

「(通常は)賃料とともに賃貸人の事業の収益の一部を構成する」

「(一般に)賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」

このように規定されている。そのうえで……

「更新料の額が、賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものには当たらない」

すなわち、「家賃1カ月分・2年毎」に代表される、世のなかで一般的に見られるレベルの更新料に関しては、その存在に「問題はないですよ」と、最高裁判所は判断を示したかたちになっている。

後出しジャンケンはもちろんダメ

なお、当然のことだが、気をつけたいのは、上記最高裁のお墨付き(?)にあっては、これがあくまで「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項」について、述べられたものであることだ。

つまりどういうことか?

そもそも更新料は、契約当事者間での任意によってその内容が決められるものなのだ。ゆえに、その更新料が「問題ない」と認められるためには、契約を交わす双方が、当該更新料の支払いについて明確に事前合意していなければならない。

契約書に記載がないのに「住み続けたいならこの金額を払え」と、あとからオーナーが突然入居者に迫るなどあってはならないことであり、もちろん認められるはずもない。

 

更新料のほかに「更新事務手数料」が…これって何?

さらに、こんな人もなかにはいるだろう。

「私の住む物件では、更新料のほかに更新事務手数料なるものが存在します。これって何ですか?」

基本的にはこういう切り分けとなる。

更新料:貸主=賃貸オーナー(大家さん)に支払うもの

更新事務手数料:更新のための事務を行う不動産会社(仲介会社・管理会社)に支払うもの

つまり、更新事務手数料(あるいは更新手数料)が更新料とは別に存在するケースでは、入居者が支払った更新料はそのままオーナーに渡っていることが想像できる。

一方、これが無いケースでは、更新料はその一部か全部が、還流するかたちで事務手数料として不動産会社に渡っていることもあるわけだ。

ともあれ、いずれかでなければ、不動産会社はタダ働きをすることにはなる(それほど手間の多い仕事ではないが)。

 

そこで余談になるが、最近はあまり聞かなくなったものの、以前はこの更新事務手数料をオーナーに内緒で入居者から取る業者の存在がちらほら話題にのぼるなどした。

理由として、「出費に厳しいオーナーが“還流”を許してくれず、かといってボランティアはゴメンなので」と、気持ちが若干分かるようなケースもあったが、なかにはよくない事例もあった。

「更新料はオーナーに渡さず手数料としてフトコロへ。さらに入居者にもこっそり手数料を二重請求」といったやり方だ。

この場合、例えば入居者は更新のためのコストとして家賃1.5カ月相当=更新料×1月分・更新手数料×0.5月分などといった出費をさせられることになる。なおかつ、その全額が業者の財布に吸い取られる。

 

そこで、そのことを知ったオーナーが、「そんなことやってるから更新のたびにみんな退去してしまうんじゃないか」と激怒。やや騒動になった例もある。

もっとも、ちゃんとオーナーと話し合ったうえで更新事務手数料を設定、結果として入居者が結構な額のコストを求められているケースもある。そのやり方で回せるかどうかは、物件自体のもつ力(入居者をつなぎ留める力)がいかほどかによって、答えが出ることにもなるだろう。

更新料は退去の引き金になる

ところで、いま触れたとおり更新料はよく退去の引き金にもなる。

「更新が近づいた……更新料を取られる……、じゃあそれを引っ越し代の足しにして、この際引っ越そうか」

結婚や就職など、ライフイベントがとくに迫っているわけでもない入居者を退去に向かわせるきっかけを更新料はつくりやすい。

そこで、更新料の設定をやめるオーナーや、入居者からの値引きの申し出には柔軟に対応するオーナーも昨今は増えてきている。

ヘタに更新料=家賃1カ月分に固執して退去を招けば、次の入居者を募集するためにその数倍のコストがかかるだけでなく、空室が長引けば逃す収益も多大なものになるといった計算だ。冷静な判断といっていいだろう。

更新の報せを受け、「引っ越します」を告げてきた入居者に対しては、「ご入居継続の場合は更新料をタダにおまけしますよ」と、ひと声かけることにしているオーナーもいるようだ。

入居者は更新料の値引きを積極的にリクエストすべきか?

そうしたわけで、「更新料をきっかけに入居者に退去されるくらいなら、これをもらわず住み続けてもらう方がよい」と考えるオーナーは、いまは少なくない。物件の築年数が嵩んでいるなど、空室が生じた際の募集難航が予想されるほどに、その割合も高まることになるだろう。

であれば、入居者側はそこを目ざとく突いて、値引きをどんどんリクエストすべきかといえば……そこは一歩立ち止まり、一応あることを考えたい。

それは何かといえば、契約以前に行われる礼金や家賃の値引き交渉とは違い、更新料は、通常は契約によって一度は支払うことを約束したお金であるということだ。

 

すなわち、更新料の値引きをリクエストすることは、一度は合意した内容をあとから覆そうとすることにほかならない。よって、その点はきちんと踏まえたうえで、入居者側もジェントルに振る舞いたいものだ。それは、例えば交渉時のみならず、普段の生活においてもいえることとなる。

自身が、周りに迷惑をかけない優良な入居者として「これからも住んでいてほしい」と、オーナー側に思われる存在かどうかは、当然に振り返っておくべきこととなるだろう。

また、更新料を値引きしてもらいながら、その後、特段の理由もなく早期退去するなども、他の入居者への影響も併せた意味で、よい行為とはいえないだろう。

賃貸住宅の更新料は、たしかにいまどき無くなった方がよい謎費用だが、「約束は約束」ということだ。


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編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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