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〜この国の明日に想いを馳せる不動産屋のエセー〜

家賃滞納トラブルは日常茶飯事 それでも日本の不動産屋さんが優しくなったワケ (2/3ページ)

南村 忠敬南村 忠敬

2021/11/16

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債務保証の必要性は、連帯保証人を用意できないような不安定な借主にこそ必要なのであって、そうでなくても身内の保証人を立てることは大きな負担であるのに、その上にまだ保証会社加入を要求するなんて、賃借人に過度な負担を強いることになり、賃借人保護を謳う借地借家法の趣旨にも反するやん!という理由で、連帯保証人をきちんと用意している借主には、保証会社加入を強制するなどはしなかった。

それが今では、一定の保証料を多く払えば連帯保証人が付けられなくても保証が受けられるようになり、私の「?」も払拭されたので、拙者の店でも他店同様、保証会社は必須条件とさせていただいている。

「保証人なしでは貸せません」といったやり取りも今は昔 イメージ/©︎bearbakerstreet・123RF

そもそも連帯保証人とは

世間では、「保証人」と一括りにするけれど、法律的には単なる「保証人」と、「連帯保証人」との区別は明確で、保証人として負うべき責任と義務の範囲に大きな違いがある。知ってるようで正しく理解している人が少ないから、債権者と保証人との間で日常的にトラブルが起こっている。それをどうにかしないと世の中の金融システムに支障を来たすとあって、昨今ご存じの民法大改正が行われたのも記憶に新しい。

【連帯】の文字が付くのと付かないのとで異なる最も大きな違いは、債権者に対する“ものの言い方”だ。法律用語では、「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」と「分別の利益」が認められていない、と説明する。随想を執筆していると、文面が解説書調になることは避けなければならないので、ここは“関西弁”で。

保証人に債権者から連絡が来るのは、債務者が債務の履行を怠ったときだから、当然、“請求”が目的だ。

その時、普通ならこう言いたいだろう。

「なんやねん、いきなり払えって。本人に言えや!」と、催告の抗弁で対抗。

「奴はけっこう金貯めてるで! 知ってるか? 調べてこいや!」、これが検索の抗弁。

「保証人は俺だけやなかったよな? 確かもう一人、あ、嫁さんがおったな。ほんならワシは半分だけでええやろ。残りは嫁さんから貰えよ!」は、債務分別の利益を主張することだが、いずれも連帯保証人にはこれらの抗弁が使えない。つまり、連帯保証人は、債務者本人と同様の債務と責任を負っているということや。

他方、保証会社の保証委託契約約款を読めば、その会社がどの範囲まで賃借人の債務を保証してくれるのかが書いてある。保険にしても、保証にしても、約款などを熟読する契約者は少ないと思う。これがダメなのだ。保証会社によっては賃料債務だけを保証するところから、悪質滞納者の退去や、残存物処理費用までを見てくれるところまで、その差はけっこう大きいことをご存じか? 

保証料が安い≒保証範囲が狭いというのは当然で、賃貸借契約から発生する様々なリスクを想定するならば、保証会社だけでは万全ではないのだ。そこで前述の、「保証会社加入+連帯保証人」の必要性が浮上する。なんせ、殆どの賃貸借契約書の連帯保証人特約にはこう書いてある。

「連帯保証人は、借主と連帯して、本契約から生じる借主の債務を保証するものとします」

これは何を意味しているのか。そう、この包括的債務保証の特約によって、保証会社が責任を負う範囲を大幅に超える賃借人の不始末の責任を取らされるということだ。例えば、部屋の原状回復義務に基づく改装工事費や、賃借人の自殺などを原因とする損害賠償なども連帯保証人は責任を負わなければならない。

次ページ ▶︎ | 賃料督促の現場ではどのようなことが起きているのか? 

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この記事を書いた人

第一住建株式会社 代表取締役社長/宅地建物取引士(公益財団法人不動産流通推進センター認定宅建マイスター)/公益社団法人不動産保証協会理事

大学卒業後、大手不動産会社勤務。営業として年間売上高230億円のトップセールスを記録。1991年第一住建株式会社を設立し代表取締役に就任。1997年から我が国不動産流通システムの根幹を成す指定流通機構(レインズ)のシステム構築や不動産業の高度情報化に関する事業を担当。また、所属協会の国際交流部門の担当として、全米リアルター協会(NAR)や中華民国不動産商業同業公会全国聯合会をはじめ、各国の不動産関連団体との渉外責任者を歴任。国土交通省不動産総合データベース構築検討委員会委員、神戸市空家等対策計画作成協議会委員、神戸市空家活用中古住宅市場活性化プロジェクトメンバー、神戸市すまいまちづくり公社空家空地専門相談員、宅地建物取引士法定講習認定講師、不動産保証協会法定研修会講師の他、民間企業からの不動産情報関連における講演依頼も多数手がけている。2017年兵庫県知事まちづくり功労表彰、2018年国土交通大臣表彰受賞・2020年秋の黄綬褒章受章。

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