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首都圏・関西圏と地方圏のギャップ大――心理的瑕疵物件の現状 (1/2ページ)

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文/朝倉継道 構成/編集部 イメージ/©︎Ilkin Quliyev・123RF

2020年 は「心理的瑕疵物件」元年?

2020年は、賃貸住宅業界を取り巻く、ひとつの重要な動きが始まった年といえる。それは、心理的瑕疵物件、いわゆる事故物件をめぐる動きだ。2月から国土交通省が「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」で検討会をスタートさせている。

「不動産取引において、取引対象の不動産において過去に死亡事故が発生した事実など、いわゆる心理的瑕疵をどのように取扱うかが課題となっている」「このことが、既存住宅市場活性化の阻害の一因ともなっている」など、これらを前提に「国交省において検討会を立ち上げ、心理的瑕疵に係る適切な告知、取扱いに係るガイドラインの策定に向けた検討を進めていく」と、しているこの会合、2月5日にその1回目が開催されている。

しかしながら、その後の様子はというと、会議の内容も開催の有無も非公開となっているため、外部からはほとんど窺えない状態だ(8月末現在)。

そうした中、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が6月にリリースした「日管協短観」(2019年度下期)の中で、「心理的瑕疵物件(事故物件等)による成約賃料の減額割合」と、題した興味深いデータを公表している。

ちなみに、日管協は、上記国交省の検討会への関わりが深い団体で、課題となっている「ガイドラインの策定に向けた検討」に関しても、参考データの提供や収集など、重要な役割を担っているものと思われる。

心理的瑕疵物件の約4割が賃料を20〜39%減額

話を戻す。「心理的瑕疵物件(事故物件等)による成約賃料の減額割合」についてだ。

賃貸物件が、不幸にして事故物件化したあと、再度入居者を募集、契約する際、家賃をどのくらい減額したか? との質問に対する答えをまとめたもので、回答しているのは、日管協の会員である管理会社155社(首都圏48社、関西圏22社、首都圏・関西圏を除くエリア85社)となる。


出典/第23回 賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観 心理的瑕疵物件(事故物件等)による成約賃料の減額割合」を基に編集部作成

ご覧のとおり、「約20~39%減額」が約4割と、もっとも多くを占めている。これは大方の実感値に沿うものといえるだろう。しかしながら今回、これらの状況が、物件の建つ場所によっては変わることも、データは併せて示している。

以下、エリア別の数字となり、割合の多い上位3つまでをピックアップ(「まだ事例なし」を除く)した。


出典/第23回 賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観 心理的瑕疵物件(事故物件等)による成約賃料の減額割合」を基に編集部作成

注目は「その他エリア」の首都圏、関西圏を除く地方圏だ。「約40~59%減額」が、他を引き離し、3割に迫る数字を示している。このことについて日管協は、「物件数、近隣の人間関係、情報の残存率等、地域特性によるものと思われる」とのコメントを添えている。

ベースにある物件数の少なさが事故物件化した例をことさら目立たせること、周りの人々の事故への記憶が長く保たれやすいこと、それにより事故物件が「怖がられ、嫌がられる」度合いが社会的に大きいこと、それらが影響するとの見方のようだ。

そこで類推すると、事故物件化によって起こりがちな「入居者の一斉退去」「現場のみならず物件全体におよぶ空室期間の長期化」、さらには、「減額した額から元の賃料に戻すのに要する期間の長期化」、これらも地方圏ではより深刻化する可能性がおそらく高い。

次ページ ▶︎ | 心理的瑕疵物件の告知期間 地方では「半永久的に告知」が約20% 

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