【最も予測が当たる経済アナリストが予言!】住宅はさらに供給過多へ! 不動産投資のブルーオーシャンはどこにあるのか
ウチコミ!タイムズ編集部
2017/03/02
住宅の需給バランスは悪化する一方
不動産に限らず、モノの価格を考えるときは「需要」と「供給」について考えなければいけません。
今後、高齢化が進む日本では、人口が減ることは確実ですから、住宅需要が減るのは明白です。現在は地方の人口減少が深刻になっていますが、現時点では人が増えている東京でも、2020年以降は加速度的に人口が減少するといわれています。
しかも、総務省が発表した「平成25年住宅・土地統計調査」によると、すでに2013年時点で日本全国に約820万戸の空き家があります。2008年の前回調査より空き家は305万戸も増えており、空き家率も0.4%増の13.5%と過去最高になっています。
このように空き家が増える趨勢は1963年以降ずっと続いていますので、今後も空き家が増え続ける可能性は濃厚です。しかも、この空き家のうち半分は貸家だといわれています。
また、野村総合研究所は、2033年までに2013年の約2.6倍となる2176万戸まで空き家が増えると試算していますから、将来的には住宅の需給のバランスはさらに崩れ、供給過多がより鮮明になっていくでしょう。
マンション価格の高騰は国が生み出した側面も
一方、特に新築マンションの価格が上がっています。その背景には、円安による建築資材の高騰や職人不足による人件費の高騰がありますが、この原因は国の政策による部分が大きいと考えています。
日本銀行は異次元の金融緩和によって、円安に誘導しました。それによって、輸入建材の価格が上がりました。その上昇分はマンション価格に転嫁されています。
もうひとつは公共投資を増やしたことによる職人不足です。東日本大震災の復興や景気対策の公共投資が増えたことで、そこに職人を持っていかれていることもあり、新築マンションの建設に携わる職人が不足しています。なかでも鉄筋工は高齢化が顕著で、特に不足しているといいます。
建築業界ではそれまでの不景気もあって、熟練工の技術が若い世代にうまく伝承されなかったことから、技術を持った職人が不足しているのです。しかし、職人不足から技術的に未熟な職人でも工事現場に投入しないといけない状態ですから、最近のマンションは価格が高いからといって、必ずしも質が高いとは言い切れないと思います。
増加するアパートローンは、将来の不良債権の温床に!?
一方で金融緩和によって大量のお金が行き場を失っているなか、マイナス金利が導入されたため、銀行は貸せるところに、できるだけ貸そうとしています。
たとえば、貸家ローン(アパートローン)では、従来よりもローンの審査基準を緩和してまで貸そうとするわけです。極端なケースだと、年収300万円~400万円の人が購入する投資用物件のために、1億円の融資をするケースもあります。
投資用物件がこの先ずっと満室であれば、ローンの返済はできるかもしれませんが、将来的に物件が古くなり、周囲の物件と比べて魅力がなくなってくると、空室が増えてきます。そうなれば、すぐに返済が立ちゆかなくなる可能性大です。
現時点ではまだ顕在化していなくても、こうした金融機関による貸し込みは、将来の不良債権の温床になっているといっても過言ではありません。
(参考記事)
不動産投資で総資産10億円超! メガ大家さんが破綻する日
デフレ脱却どころか、将来のデフレ要因を増やした黒田日銀
日本銀行の黒田総裁は自らが推し進めた金融緩和、マイナス金利導入による貸家需要が増えたという実績を強調しています。しかし、私には短期的な政策で問題を先送りにし、将来のデフレ要因をつくっているようにしか見えません。
消費者物価指数のなかで、「家賃」の占める割合は約2割と最も大きい構成要素ですが、すでにこれだけ空き家があるなかで、貸家建設が必要以上に増えているわけですから、入居者の取り合いが激化することは必至です。
そうなれば入居者獲得のために、不動産オーナーは家賃を下げることで入居者を集めようとするはずです。将来的にこういう動きが消費者物価指数を大きく下げる要因になるでしょう。
これまでは相続税対策の需要もあって、マンション販売は好調に推移してきましたが、相続税対策としてのタワーマンション購入に関して国税庁は対策を打ち、これまでのような節税効果が得られなくなったことで、その潮目は変わりつつあります。
(参考記事)
相続税が上がると、なぜ空室率が上がるのか?
サブリースを使ったアパート経営ビジネスは立ち行かなくなる
また、相続税対策として、30年一括借り上げを謳うサブリースによるアパート建設がここ数年で急増しましたが、すでに空き家が大量になるなか、供給過多に拍車をかけています。
こうしたサブリース契約によるアパート経営は「30年一括借り上げ」といいながら、実際には10年間など一定期間を経過すると、サブリース会社が契約を変更できるようになっていることも問題視されています。物件が新しいうちは入居者は見つけやすいでしょうが、問題は物件が古くなってから出てくるからです。
物件が古くなれば、よほど好立地でなければ、家賃を下げないかぎり、入居者を見つけるのは大変です。いずれにしろ、供給過多になっているわけですから、近い将来に、こうしたサブリースを使ったアパート経営ビジネスは立ちゆかなくなるでしょう。
現に、2017年1月に日本銀行が発表した地域経済報告「さくらレポート」でも、国内の住宅供給のバランスがよくない状態であることに対する懸念を暗に示唆しています。昨年まで実績として強調していた貸家建設が、いまになって将来のリスクとして意識され始めているのです。
不動産投資でもブルーオーシャンを探せ!
不動産投資をするなら、結局は、長い時間軸で需要と供給を考えなければいけません。その点では、都心の好立地エリアや競争相手が少ないひと握りのエリア以外の不動産投資は現状厳しいと言わざるを得ません。
このような状況のなかでも失敗を避けるには、事前のリサーチがとても重要になってくると思います。現地の不動産屋さんから情報を聞いたり、近隣をよく見ながら、競合相手がいない立地を探す。たとえば、住みたい人の数の割に貸家の数が極端に少ないエリアを探すわけです。
こうした情報は、机の上で表面利回りを見ただけでは絶対にわかりません。自らの足で情報収集するぐらいのことをしなければ、不動産投資で儲けることはむずかしいでしょう。
あらゆる商売に通じますが、わざわざレッドオーシャンに飛び込むのではなく、ブルーオーシャンで勝負するということです。弁護士や歯医者なども数が増えすぎたことで、いまや高収入の職業ではなりつつあります。むしろ稼げない弁護士や歯医者が多くなっているのです。現在の不動産投資もそれと同じことです。
不動産価格は東京オリンピックを前に下落傾向へ!?
一方、実需として住宅購入を考えている人は、将来、高く売ることを考えるのではなく、「住むところを手に入れる」と考えたほうがいいかもしれません。私は東京ではなく、茨城県に住んでいますが、人込みが嫌いな私にとっては、とても住みやすいところで満足しています。
戦後、住宅を買った人は、将来高く売ろうという発想はなかったと思います。その当時の人のように、自分が幸せを感じる尺度をもう一度見つめ直し、その幸せの尺度に合わせて家を買うということを考えてもいいのではないでしょうか。
東京オリンピックまで不動産価格は上がるという人もいますが、私はそこまでもたないと考えています。むしろ、東京オリンピックのころは不況になっている可能性が高く、オリンピック前に地価が下がる傾向になる可能性もあると思っています。
不動産投資をするなら、そうした可能性も踏まえて慎重に行なってほしいと思います。
今回のこの人は…
中原圭介(なかはら・けいすけ)
経営コンサルタント・経済アナリスト
経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。
企業・金融機関への助言・提案を行なう傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「最も予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『2025年の世界予測』『シェール革命後の世界勢力図』『経済予測脳で人生が変わる!』(いずれもダイヤモンド社)、『これから日本で起こること』『これから世界で起こること』『アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!』(いずれも東洋経済新報社)、『トップリーダーが学んでいる「5年後の世界経済」入門』(日本実業出版社)、『未来予測の超プロが教える 本質を見極める勉強法』(サンマーク出版)など多数。
この記事を書いた人
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